こんにちは、つけものなすです。
今回は、職を失い高級マンションからアパートへ転落した男の勝手な復讐劇を描いた映画『その住人たちは』(20年)について書きたいと思います。
その住人たちは
転落人生
『その住人たちは』(原題:hogar)は、2020年3月25日に配信開始されたNetflixオリジナル映画です。監督はダビ・パストールとアレックス・パストールの共同監督。原題の「hogar」はスペイン語で家、自宅という意味です。
広告会社に勤めるハビエルは職を失い、中途採用で企業に面接を受けに行きますが、ポートフォリオを見せても「古臭い」と言われ、どこの企業も採用してくれません。お祈りメールどころか、その場で不採用の結果を告知されます。セミナーに参加して積極的に面接に挑みますが上手くいかず、いざ採用が決まって契約書を確認すると、3ヶ月無償で働くインターン採用だったり、不運の連続です。
ハビエルは妻と息子の3人で高級マンションに暮らしていますが、高い家賃を払うことができず、家政婦に解雇を告げ、アパートへ引っ越すことになります。妻は車を売ろうと提案しますが、ハビエルは成功者の証である車を手放すことができません。ハビエルにとって、高級マンションと車は成功者のステータスです。
前に住んでいたマンションを眺めていると、自分たちが住んでいた部屋には幸せそうな家族3人が暮らしていました。
高級マンションからアパートへ転落したことを受け入れられないハビエルは、家政婦から受け取った前の家の鍵を返し忘れていたことに気付きます。これが、復讐劇の始まりです。
ハビエルを演じるのは、『薄氷』(21年)などに出演しているハビエル・グティエレスです。見た目は背が低いサイモン・ペッグです。
パラサイト
返し忘れた鍵を使って前の家に入ろうとしますが、向かいの部屋の犬が吠え、不法侵入していることが見つかりそうになり、急いで部屋に入ります。
電話機やパソコンから住んでいる夫婦の名前や電話番号などの個人情報を調べます。部屋には夫のトマスと妻のララ、娘のモニカの3人家族で暮らしていることが分かります。トマスは国内で2番目に大きい運輸会社の副社長で、飲酒運転で事故を起こし、アルコール依存症を治すため断酒会に参加していることを知ります。
パソコンのスケジュールには記載されている断酒会に潜り込み、トマスと同じような体験談を語り親近感を沸かせ、仲良くなっていきます。トマスから夕食に招待され、ララとも仲良くなっていきます。
ハビエルは不法侵入を繰り返します。パソコンのスケジュール帳を改ざんし、子供の送り向かいの時間に遅れたトマスはララと口論となり、夫婦関係を悪化させようとます。トマスと会うときは、わざとお酒の置いてあるバーで待ち合わせ、アルコール依存を再発させようとします。トマスは「バーは控えよう」とか言えばいいのに(笑)。
侵入するたびに向かいの犬が吠えて怪しまれるので、マンションの前に毒入りのドックフードを置き、犬を毒殺します。やることがだんだんエスカレートしてきます。
トマスとララの幸せな家庭を崩壊させようとするハビエルですが、不法侵入していることに気づいたマンションの清掃人に脅され、一筋縄ではいかなくなります。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
ハビエルは地下駐車場の柱に車で突っ込み、トマスに助けを求めます。助けに来たトマスは、ハビエルから酒を取ろうとして、着ているスーツにかかってしまいます。ハビエルは、携帯の充電が切れたと嘘を言い、トマスからスマホを借ります。レッカー車を呼ぶフリをして、自身の携帯にメールを送信します。自ら車を大破させ、これ以上何も失うものがないハビエルの暴走は止まりません。
トマスは仕事が出来なさそうで、ホントに副社長?と見ていましたが、ここで会社の経営者はララの父親だと分かります。コネだと言われて辛い話になりますが、コネがなければ副社長の地位に上がれないと思います。ピーナッツアレルギーのことも話し、弱点をベラベラ言い過ぎます。
自宅に帰ったトマスは、スーツからアルコールの匂いがするとララに指摘され、口論となります。計画順調のハビエルですが、マンションの清掃人であるダミアンに不法侵入していることをバラされたくなければ、娘のモニカの下着を盗んでこいと脅されます。
ハビエルは下着を盗み出しますが、携帯を忘れたララが帰ってきて、見つかりそうになります。本作は、犬が吠えて気付かれそうになり、勘づいたマルガに車で追いかけられるなど、スパイ要素が多々あり、ドキドキする展開が面白いです。
ハビエルは駐車場の件を知ったララに呼び出され、「二度とトマスに会わないで」と忠告を受けます。ハビエルはトマスからのメールを見せ、「飲んでしまったきてくれ、ララには言うな」という内容でした。駐車場でトマスの携帯を借りて、自身の携帯にメールを送信していたのはこの内容でした。
そのことを知ったララはトマスと口論になり、家庭崩壊寸前となります。
ハビエルは「オオカミよけ」を買い、中に謎の液体を入れます。ゴミを処分しようとすると、妻に怪しまれます。夫が普段しないゴミ出しをする時は何かを隠している証拠です。
ダミアンに下着を渡すと、今度はモニカの部屋にカメラを仕掛けてこいと、さらに要求されます。邪魔者になったダミアンを仕留めるべく、作業道具のリーフブロワーに小細工をし、ガソリンが漏れていることに気付かずに使ったダミアンは引火し、体全身炎に包まれます。
ハビエルはトマスの会社を訪れ、嘘をついたことを理由にトマスに殴られます。その顔でララに会いに行き、トマスは凶暴であることを印象付け、襲われたら「オオカミよけ」を使うよう渡します。ハビエルはマルガに別れを告げ、アパートを出ていきます。『パラサイト 半地下の家族』(19年)のように家族で寄生していくのかと思いましたが、まさかの単独行動でした。
バレエに夢中なモニカの心を掴むため、昔一緒に仕事をしていたバレエの選手にお願いをして、ララとモニカに会わせ、その様子をトマスに伝えます。激怒するトマスは、自宅に入り、ララと言い争いになります。危険を察知したララは、「オオカミよけ」を使い、トマスはその場に倒れ込み、息をしません。ハビエルが「オオカミよけ」に注入していた謎の液体は、ピーナッツでした。
ジャストタイミングでララの携帯に電話があり、事情を聞いたハビエルはマンションの前に待機していることを言わずに急いでいるフリをして向かいます。部屋に着くと、トマスは息を吹き返しますが、鼻と口を抑え窒息死させます。ついに、自らの手で人を殺めました。
ハビエルはララと結ばれ、ララの父親のコネのもと、広告会社に勤めます。成功者となったハビエルの前に元妻のマルガが現れ、トマスを殺めた証拠を警察に通報すると言います。しかし、ハビエルは子供の養育費や家を失ってもいいのかと脅し返します。
ハビエルは成功者に返り咲き、幸せな生活を手に入れました(?)。ご都合主義が否めない物語ですが、ここまで振り切って主人公が悪だと面白く見えます。犬や人を殺したりと現実離れというか、邪魔になったら殺すという安易な考えなので、もう少し策略を練った展開だと良かったかもしれません。
トマスは運輸会社に勤めているので、世間に飲酒運転のことがバレたらダメージを受けると思うので、その点をついて脅した方が現実的だと思いました。終始、ハビエルの勝手な復讐劇なので、巻き込まれた人は可哀想でした(特に犬)。
まとめ
身勝手な復讐劇を面白く描いていました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。