こんにちは、つけものなすです。
今回は、ロボットだけが暮らす世界を描いたアニメーション『エデン』(21年)について書きたいと思います。
人間が現れ、世界は一変します。
エデン
ロボットしかいない世界で
『エデン』は、2021年5月27日から配信開始されたNetflixオリジナル・アニメーションです。全4エピソードと短く見やすいです。監督は、入江泰浩。声の出演は、高野麻里佳、伊藤健太郎、氷上恭子、 山寺宏一など。
人類が地上から姿を消して1000年。エデンでは、ロボットが生活を営み、自然の中で暮らしています。
ある日、ロボットのE92とA37は、謎のポッドを見つけます。ポッドの中には、幼い女の子が入っていました。名前はサラ・グレイス。どこから来たのかは不明です。エデンでは、人間は有害なものとして教えられ、人間が存在することを信じるものは反逆者として処罰(リプログラム)されます。
サラはお腹を空かせて泣き出したため、ロボットの動力源に使っているリンゴを食べさせます。警備隊に報告しようとしますが、人間に興味があり愛着が湧いてきたため、周りのロボットに見つからないようにサラを育てていきます。
しかし、サラを隠しながら生活するのに限界を感じてきます。そこで、人間がロボットを創造したという未確認情報を信じる者が集まる、アンダーグラウンドへ向かいます。
アンダーグラウンドでは、人間の存在を信じるロボットが集会を開いています。そこへ、赤いマントを羽織るエデンのボスであるゼロの部隊がやって来ます。ロボットたちは部隊に囲まれ、拘束されていきます。
その様子を影で見ていたE92とA37のもとに、一体のロボットがやって来て、座標データを渡します。E92とA37は急いでその場を逃げ出し、受け取った座標データの場所に向かいます。
タイムリミット
座標データの場所に辿り着くと、座標データを伝達したロボットであるS566に話しかけられます。S566は、ロボットをハッキングし、遠隔操作でエデンスリーに侵入していました。
座標データの場所は、エデンに適合できないロボットが暮らす避難領域でした。エデンで適合できないロボットは、リプログラムされてしまうため、この場所に逃げ込んでいます。
S566は、土器や土偶など人間が作ったモノを発掘し、人間がいることを信じ、人間がより良い世界を創造すると信じています。
サラはE92をパパ、A37をママと呼び、ロボットに囲まれて暮らしていきます。月日が流れ、サラは成長していきます。ロボットと一緒に暮らしているため、ロボット語も話せるようになります。
一方、数字が映し出され、カウントダウンが始まります。何かのタイムリミットが迫っています。
この世界は誰が作ったのか、カウントダウンが意味するものとは。サラは一体何者なのか。壮大な世界が明かされていきます。
ロボット開発倫理条項
冒頭では、ある博士が「ロボット開発倫理条項」を唱えています。
- 開発者はロボットを人への奉仕者として作らねばならず、人に対し害をなす機能を与えてはならない。
- 開発者はロボットが安全に活動できるよう相互協力・自己修復する機能を与えなくてはならない。
- 開発者はロボットが上記条件を満たすことができない場合、機能を停止させなくてはならない。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
エピソード1
E92は、エデンにサラの存在を知られないようにするため、サラの行動を制限してきました。それに対して、自由がないサラは嫌気がさし、喧嘩をしてしまいます。まるで親子喧嘩です。ロボットは、人間と触れ合うことにより、人間の感情を少しずつ理解していきます。
サラに寄り添う小さなロボットのPJが可愛いです。ロボットが充電するときに人間の「おやすみ」の代わりに「よい充電を」と言う場面は面白いです。
場面は変わり、巨大ロボットから一人の人間が出てきます。彼は土を触り、ため息をつきます。その人は、ある研究をしています。
サラはエネルギー補給のため、バイクでオアシスへ向かいます。バイクで砂漠を滑走するのは気持ちよさそうです。砂埃が凄そうですが…。
オアシスへ向かう途中、一台の巨大ロボットが横たわっているのを見つけます。ジャスティン・ロボティクス社が開発したロボットで、中に入ると、電子モニターが映し出され、「助けて。エデンスリーに来て」と女の子の声が聞こえます。
この世界には、サラ以外にも人間がいました。
エピソード2
サラは再び巨大ロボットが横たわっている場所へ向かうと、エデンの偵察部隊であるドローンに襲われます。サラはドローンを迎撃しますが、エデンにサラの存在を知られてしまいます。サラはここにはいられないと判断し、エデンスリーに行くことを決めます。
サラは発掘場所から見つけた記録媒体をPJ3に取り付け、ある映像を見ます。その映像には、人が踊っている映画のワンシーンが映っていました。
人間が踊っている映像を見てA37が踊り出すと、E92が「ついに壊れたか」と言う場面は笑いました。A37とE92のやり取りが面白いです。
場面は変わり、フィールズ博士はある問題を抱えています。砂漠化が進み、植物は育たなくなり、大気汚染もひどくなり、10年ももたずに人間が住む場所がなくなってしまいます。子供のリズは、小さな犬型ロボットのエミリーと遊んでいます。リズは咳をするなど体調が悪いです。
サラはエデンスリーに向かうため、身支度をします。サラを心配するA37とE92は、子供が巣立っていく様子を見守る親そのものです。
サラはPJと共に、エデンスリー内部に侵入します。穀物を分解する溶解所に落下しそうになりますが、PJの腕力に助けられます。
A37とE92は、サラの暮らしていた痕跡を隠します。サラのことを心配するE92は、そわそわしています。エデンスリー内になるロボットを遠隔操作できる装置を使い、サラの様子を確認しようとしますが、なぜかロボットは勝手に動き出し、何者かにハッキングされます。
エデンスリー内部に侵入したサラは、遠隔操作しようとしていたロボットに出会います。ロボットに着いて行くと、辿り着いた先にはエデンワンを管理しているA Iのチューリッヒがいました。
エデンには、3万5000人のコールドスリープ状態の人間がいるということを知ります。しかし、生命維持装置のタイムリミットが迫り、その前に目覚めさせなければいけません。何度も映し出されたカウントダウンは、生命維持装置のタイムリミットでした。
コールドスリープを解除するには、人間がパスワードを入力する必要があります。そのパスワードは、チューリッヒでさえも分かりません。
3万5000人の内、二つのポッドは既に開いていました。一つはサラ。もう一つは別の人間でした。
エピソード3
もう一人目覚めた人間は、フィールズ博士でした。チューリッヒにどこにいるか尋ねますが、エデンの部隊が追って来たため、急いで逃げます。
サラは逃げ出した先でA37とE92と合流し、犬型ロボットのエミリーを見つけます。サラたちは、リンゴを収穫するエミリーの後を着いていきます。辿り着いた先には、エデンゼロと看板が掲げられた人間が暮らす家がありました。
家の中に入りますが、誰も見当たりません。すると、エミリーはある映像を映します。その映像には、コールドスリープから目覚めたフィールズ博士が映っていました。しかし、その映像は400年前のものでした。フィールズ博士は既に亡くなっています。
映像を見ていると、エデンの偵察部隊が現れ、サラたちを拘束します。拘束されたサラたちは、エデンスリーに連れて行かれ、ゼロから「人間がいた頃の世界は、戦争や紛争が起き、残酷だった」と話を聞かされます。
ゼロは人間を信じるロボットにはリプログラムが必要と判断し、排除します。A37とE92がリプログラムされている場面は痛々しく、本作の一番感動するシーンです。
サラは「お父さーん」と泣き叫ぶと、ゼロは突然うろたえます。サラは武器を手に取り、エデンの部隊を抹殺し、周りのロボットは怯えてしまいます。人間が残酷な存在だと自ら証明してしまいます。
ゼロはサラを拘束し、溶解所で処分しようとします。そこに、ジョンおじさん(S566)が助けに来てくれます。
サラはエデンゼロへ向かい、泣き出します。人間は残酷な存在だ、悪の存在だと思い込み、コールドスリープは解除しない方がいいのでは、と疑い始めます。
泣いているとサラの元にエミリーがやって来て、ある映像を映し出します。フィールズ博士は自らの記憶を暗号化して封印し、神経回路網をロボットに移植しようとしていました。フィールズ博士は、完璧な世界を作るためには人間は不要だと判断し、自らの存在を抹消しました。
サラは、フィールズ博士の声がどこかで聞き覚えがあることに気付きます。エデンのボスであるゼロです。ゼロは、声も思想もフィールズ博士です。
エピソード4
フィールズ博士の妻であるアシュリーは、伝染病を患い病院にいます。フィールズ博士とは、音声通話で話しています。エデンプロジェクトは始まりましたが、ポッドの数が極めて少ないため、暴動が起きています。アシュリーは伝染病を患っているため、ポッドに入ることができません。
リズの病気はコールドスリープで眠っている間に医療AI技術が発達し、未来で治してくれることを信じています。
エデンゼロという名前は、リズが命名しました。ゼロはアシュリーの一番好きな数字でもあり、「ゼロには無限の可能性がある。ゼロは全ての始まり」と話します。
リズはコールドスリープする前に、病のため亡くなってしまいます。フィールズ博士は絶望します。
サラは映像を見終えると、チューリッヒから、24時間以内にコールドスロープを目覚めさせないと生存率が3%未満になると連絡が入ります。
サラは、チューリッヒから自分自身のことについて聞くと、ポッドに入った時の映像を見せてもらいます。その映像には、サラの両親の手と声が映っていました。なぜ、サラがコールドスリープの対象になったのかは不明です。
ゼロは解体粉砕ロボを起動させ、反逆者を排除しようとします。エデンの部隊はサラを拘束しようとしますが、ロボットは人間に危害を加えることができないため、拘束することができません。
サラはオアシス近くにある巨大ロボットを起動させ、中に乗り込みます。サラの巨大ロボットV Sゼロの巨大ロボットが開戦します。PJや他のロボットも駆けつけ、ロボット同士の全面戦争となります。
チューリッヒとジェネーブのAI戦争も勃発し、ジェネーブが「古いシステムは停止すべき」と言い、チューリッヒは「サンプリング音声は私の方が若いです」とA I同士が醜い争いをします。
リサはゼロにチューリッヒの声で「お父さん」と言います。ゼロは、人間であった頃の記憶が蘇っていきます。ゼロは巨大ロボットから落下しそうになるサラを救い出し、人間であったことを思い出します。ゼロからパスワードを聞き出し、コールドスリープを解除します。
パスワードはロボット開発倫理条項でした。冒頭でフィールズ博士が唱えていました。
エンディング
月日が経ち、サラはさらに成長していきます(ギャグではありません)。A37とE92も復活しています。フィールズ博士はゼロの機体が使えなくなったため、エミリーの機体に入っています。
感想
壮大な世界観でしたが、全4エピソードと短く、簡潔に上手くまとめられていました。映像のクオリティは決して高くはありませんが、見ているうちに慣れてきます。
短いが故に、ロボットの生活感やエピソードが極めて少ないので、駆け足感は否めません。
フィールズ博士とゼロの声は山ちゃん(山寺宏一)と同じなので、フィールズ博士は何らかの形でゼロになったと推測しやすかったです。最初は声優の一人多役の使い方なのかと思いましたが、そこには意味がありました。
まとめ
映像のクオリティは気になりますが、簡潔にまとめられた面白いアニメでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。