【ネタバレ感想】『モルモン教徒殺人事件』宗教関連の文書を巡る爆弾事件

こんにちは、つけものなすです。

今回は、宗教関連の文書を巡る『モルモン教徒殺人事件』(21年)について書きたいと思います。

宗教の闇に迫るかと思いきや、天才詐欺師のドキュメンタリーでした。

モルモン教徒殺人事件

末日聖徒イエス・キリスト教会

『モルモン教徒殺人事件』(原題:Murder Among the Mormons)は、2021年3月3日に配信開始されたNetflixオリジナルドキュメンタリーです。1エピソード約50分の全3エピソードです。

本作は、1985年にアメリカ・ユタ州の首都ソルトレイクシティで起こった爆弾事件のドキュメンタリーです。この事件で二人が死亡しました。亡くなった二人は、モルモン教の起源の定説を否定する「サラマンダーの手紙」に関わる人物で、宗教関連の文書を巡る事件として騒動になりました。

モルモン教の本拠地として知られているユタ州は、人口の6割がモルモン教で占められています。モルモン教は1829年に、ジョセフ・スミス・ジュニアが天使モロナイに導かれて金版を見つけ、モルモン書として翻訳されました。その後、1830年に、末日聖徒イエス・キリスト教会(The Church of Jesus Christ of Latter-day Saints 以下、LDS)を設立しました。

 

サラマンダーの手紙

1970~1980年代は、LDSに関する古文書の需要が高まり、ディーラーは発見した古文書を転売して利益を上げていました。その内の一人が、古文書界のスターと呼ばれるマーク・ホフマンです。

ホフマンは、ジョセフ・スミス直筆の最古の書物を発見しました。ホフマンの妻は、発見した書物を開くと、ガムが付いてめくれないページを見つけます。はがしてみると、そこにはジョセフ・スミスによる金版の写本が入っていました。その金版の箱の中には、「サラマンダーの手紙」がありました。

差出人はマーティン・ハリスで、手紙には金版を渡したのは天使モロナイではなく白いサンショウウオだと書かれていました。教会が教える歴史とは異なり、信者に大きな衝撃を与えました。マーティン・ハリスは、ジョセフ・スミスの翻訳を手伝い、モルモン書の原本の失われた116ページを無くした本人です。

ホフマンは多くの古文書を見つけ、その中には、1831年〜1838年にウィリアム・E・マクレランが書いた日記(マクレラン・コレクション)がありました。コレクションの中には、教会を破滅へと導く手紙があり、差出人はジョセフ・スミスの妻(エマ・ヘイル・スミス)で、金版を見つけたのはジョセフ・スミスではなく、彼の兄だったという内容でした。

マクレラン・コレクションが公になるのを恐れた教会は、利益代表者のスティーブ・クリステンセンに、ホフマンと取引をしてマクレラン・コレクションを入手するよう命じます。ホフマンはクリステンセンと交渉し、30万ドルで取引に応じます。

 

爆弾事件

1985年10月15日、あるビルで爆弾が爆発し、男性が一人死亡しました。死亡した男性は、クリステンセンでした。クリステンセンは、自分宛に届いた荷物を持ち上げた瞬間に、爆弾が起動し、爆発に巻き込まれました。

最初の爆弾事件から1時間後、別の爆弾事件が発生し、女性が一人死亡しました。死亡した女性は、クリステンセンの元共同事業者のゲイリー・シーツの妻でした。自宅にいた妻は、夫宛に届いた荷物を手に取り、爆発に巻き込まれました。

警察は、二つの爆弾事件は教会が所有している「サラマンダーの手紙」が関係していると考えます。教会は、古文書を購入したことはないと言い張りますが、1980年以降、ホフマンから約40枚の古文書を購入していたことが分かります。

事件翌日、一台の車が爆発し、爆発に巻き込まれた男性が重傷を負います。その男性は、ホフマンでした。車内からは、マクレラン・コレクションが見つかりました。

不都合な真実を隠そうとしている教会が怪しいと思いますが、事件の真相は思わぬ方向に展開していきます。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

容疑者シャノン・フリン

警察は、教会や古文書業界の関係者を疑います。その内の一人が、シャノン・フリンです。

フリンは、ホフマンの親友であり仕事仲間で、教会の商談にも同席していました。フリンは、戦争や武器に興味をもち、ホフマンからもらったお金で銃器を買い、郊外で銃を撃っていました。

そのことに目をつけた警察は、未登録の銃器所持の疑いでフリンを起訴します。フリンの自宅を家宅捜索すると、爆弾や薬物の製造方法が書かれている「アナーキスト・クックブック」を見つけます。しかし、フリンが借りている倉庫には、爆弾を製造しているような証拠はなく、ポリグラフ検査(ウソ発見器)のテストの結果は白でした。

 

容疑者ホフマン

捜査は振り出しに戻りますが、事件当日に現場にいた目撃者から有力な情報を得ます。目撃者によると、事件当日の6時45分に、建物内を不審な男がうろついていた、とのことでした。男は緑色のスタジャンを着て、小包を持っていました。そのことを知ったホフマンの友人は、ホフマンは緑色のスタジャンを持っていたことを明かします。

爆発に巻き込まれ重傷を負ったホフマンの容体は回復し、警察は殺人の容疑でホフマンの自宅を家宅捜索します。目撃者の証言で男が着ていた緑色のスタジャンを見つけますが、爆弾関連のものは見つけることができませんでした。ホフマンにポリグラフ検査を受けさせますが、結果は白でした。フリン同様に、証拠は見つかりませんでした。

行き詰まった警察は、押収した証拠品を洗い直していると、ある一枚の領収書を見つけます。領収書は、コックス&クラーク版画工房のもので、顧客はマイク・ハンセンと記されていました。調べてみると、ハンセンは、デゼレット通貨の版を注文していました。警察は、ホフマンは版を使って文書の偽造を行なっていたのではないかと疑います。

 

偽造

教会は、FBIの要請に従い、サラマンダーの手紙の鑑定に協力します。元々、サラマンダーの手紙を鑑定した人物は、文書鑑定士ではなく歴史学者だったため、疑いの余地がありました。しかし、FBIがサラマンダーの手紙を鑑定すると、結果は本物でした。

ホフマンの自宅から古紙やインクなどが見つかり、FBIの鑑定結果に納得がいかない二人の法科学文書鑑定士は、様々な技術を使い、膨大な時間(110時間)をかけ、インクに亀裂が入っていることに気付きます。ホフマンが扱った古文書には、必ず亀裂が入っていました。

偽造用の版を使っていた可能性が高いため、ある印刷所に聞き込むと、マイク・ハンセンから文書の版を頼まれていたことが分かります。ハンセンは、支払い時に現金が足りず、小切手で支払っていました。支払い人の名前は、マーク・ホフマンでした。警察は、ホフマンを殺人と文書偽造の疑いで逮捕します。

 

真の目的

1987年1月23日、ホフマンは文書を偽造し、爆弾で二人を殺害したことを認めます。8年間も鑑定士を欺き、金版の写本を妻が見つけた際も、ホフマンが事前に仕組んでいました。妻や友人、ポリグラフ検査さえも欺きました。ホフマンを知る人々は、驚きを隠せません。

ホフマンは、全ての古文書を偽造していた訳ではなく、偽造するために本物の古文書も扱っていました。偽造した理由については、金の目的だけではなく、モルモン書の原本を偽造しようと企んでいました。

ホフマンは、モルモン教徒の家庭で育ちました。厳格な父親は、恐竜に関する児童書を見つけた際に、その本が進化論を肯定するので、腹を立てていました。この時代の若者は、親と考え方が違っていても、その考えを隠していました。ホフマン曰く、14歳の頃から無神論者だったそうです。

子供の頃、友達と森へ宝探しをした時に、一番初めに宝を見つけたのはホフマンでした。しかし、その宝は事前にホフマンが埋めた宝で、見つけたフリをしていました。物心がついた時から人を欺き、優越感に浸っていました。

12歳の頃から硬貨を収集し始め、硬貨を変造する方法を研究していました。14歳の頃には、偽造する技術を取得し、財務省に本物だと認定されるまでになりました。

ホフマンは、イギリスのマンチェスターの図書館や古書店を訪れ、古文書を探していました。1800年代に宣教師の多くはマンチェスターで活動し、この地域には図書館や古書店が多いため、古文書を見つけるのに最適な場所でした。

アメリカでは入手困難な本が手に入り、中にはLDSを攻撃する内容もありました。ホフマンは、反モルモン教の本を読み、教会の考えとは違うLDSの歴史を創作し始めました。

 

殺害動機

妻のドリーと結婚し、4人の子供をもち、裕福な暮らしをしていましたが、古文書を転売して儲けた金は旅行や買い物で浪費し、商売の浮き沈みも激しく、大量の借金を抱えていました。そのため、マクレラン・コレクションを教会に転売しようとしましたが、膨大な文書の量があり、直ぐに偽造するのは不可能でした。

ホフマンは、クリステンセンにマクレラン・コレクションを売る約束をしていましたが、まだ未完成でした。大量の借金も抱え、家族に偽造者だと知られるのを阻止するため、クリステンセンを殺害しました。

シーツの妻を殺害した際に使った爆弾には欠陥があり、爆発する可能性は50%でした。必ず殺害しようとしていた訳ではなく、死んだら死んだと軽い気持ちで行なっていました。

自殺をした理由については、「二人が死んだ後に決めた」と供述します。罪悪感や反省の色はありません。

 

偽造の方法

ホフマンの自宅には立ち入り禁止の部屋があり、その部屋で偽造を行なっていました。その部屋はホフマンの昔の子供部屋でした。妻が部屋に入るときは、偽造に使う器具を別の場所に移していました。

古文書の偽造の方法は、ドキュメンタリー内で詳しく説明がありましたが、正直、難しくて理解できませんでした(笑)。

ある装置を作り、約20リットルの水槽にガラス片で蓋をし、プラグを110ボルトのコンセントに挿して、ワイヤの片方を水槽に入れ、もう一方は食塩水が入った瓶に入れます。酸素雰囲気内の火花がオゾンを形成し、そのオゾンが紙に接触して環境的な損傷を与えていました。酸化を人工的に早めるため、インクに亀裂が入っていました。

 

まとめ

子供の頃から人を欺き、一貫性があることに驚きました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です