【ネタバレ感想】令和の『ジョゼと虎と魚たち』は、純愛アニメーション

アニメ映画が流行る昨今、隕石も降らない、鬼も退治しない、日常を描いたアニメ映画「ジョゼと虎と魚たち」について書きたいと思います。超絶オススメです。

ネタバレなし

ジョゼと虎と魚たち

『ジョゼと虎と魚たち』は、2020年に公開された日本のアニメーション映画です。大学生の恒夫と足の不自由なジョセのボーイミーツガールを描く物語です。原作は、1984年に田辺聖子先生が発表した『ジョゼと虎と魚たち』です。2003年には、妻夫木聡主演で実写化されました。原作は昭和に発表、実写映画は平成に公開、アニメは令和に公開です。

 

あらすじ

留学するためバイト三昧の大学生である恒夫(中川大志)は、坂道から車椅子が勢いよく転げ落ちてくるのを見つけ助けます。車椅子には足の不自由なジョゼ(清原果耶)が乗っていました。

恒夫は車椅子を押していたジョゼの祖母に連れられ家でご飯をご馳走になります。ジョゼの祖母からいいバイトがあると紹介され、お金のない恒夫は二つ返事で引き受けることに。そのバイト内容は、ジョゼの要望を聞くことでした。

恒夫とジョゼのボーイミーツガールの始まりです。

 

夢を追いかける恒夫

恒夫は大阪の大学に通う4年生で、海洋生物学を専攻しています。留学するのを夢見ていて、留学費を稼ぐためダイビングショップでアルバイトをしています。

 

外の世界を知らないジョゼ

ジョゼは、幼い頃から足が不自由で車椅子でしか移動することができません。祖母からは勝手に外出するなと言われています。家では絵を描いたり本を読んでいます。

ジョゼの本名はくみ子ですが、彼女は自分の名前をジョゼと言います。ジョゼは、くみ子の愛読書であるフランソワーズ・サガン著『一年ののち』の登場人物からとってきています。

大金持ちのジョゼ、女優を目指すベアトリス、作家のベルナール、田舎から出てきたエドワールなど様々な人物が登場し、恋愛模様を描いている小説です。大金持ちのジョゼは自由気ままに生活を送っていますが、どこか満たされない部分がありモヤモヤしています。くみ子とは正反対のジョゼですが、自由に生きる憧れとどこか満たされない寂しさに共感してジョゼと呼んでいるのでしょう。

ジョゼの要望は、「畳の網目を数えろ」、「四葉のクローバーを探してこい」など無茶苦茶です。恒夫は、無茶苦茶な要望にも応えるものの我慢の限界がきて、バイトを辞めようとしますが、海を見たいと言うジョゼに惹かれ海へ連れていくことにします。海だけでなく水族館や恒夫のバイト先など、ジョゼは知らない世界に飛び込んでいきます。

 

バイト仲間と図書館の司書

恒夫のバイト仲間やジョゼが通う図書館の司書など登場人物が良い人で愛おしいです。恒夫のバイト仲間の松浦隼人(興津和幸)は、お調子者の明るい人物です。恒夫との友情シーンは泣かせます。ただのモブではありません。

同じくバイト仲間の二ノ宮舞(宮本侑芽)は、恒夫のことが好きだけど告白することができず、ジョゼとは恋敵となります。外見や置かれた状況など『ダーリン・イン・ザ・フランキス』のイチゴに似ています。僕はショートカットが好きなのでドンピシャのタイプです。

図書館の司書である岸本花菜(Lynn)は、フランソワーズ・サガンが好きでジョゼと意気投合します。ジョゼがサガン好きの人にジョゼと呼ばれていることをバレてしまう場面は笑えます。

 

強い音楽

劇伴を担当するのは、国民を泣かせた『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のエバン・コールです。公式パンフレットによると、『ジョゼ』のコンセプトは自身が手かげたNHKで放送されたドラマ『デイジー・ラック』のサントラだそうです。監督がお気に入りのサントラだとか。

主題歌、挿入歌を担当するのは『鬼滅の刃』の次に来る漫画はこれと太鼓判されている『呪術廻戦』の主題歌を歌ったEve(イヴ)です。主人公が壁にぶつかって乗り越えようとする時に流れる挿入歌の「心海」は鳥肌が立ちます。

 

ネタバレあり

ここからは結末にも触れているのでネタバレ注意です。

物語

突然

ジョゼと喧嘩してしまい、「健常者には分からん」と言われる恒夫(グッときた)。雨の中、ジョゼが横断歩道を渡る途中で車椅子が動かなくなり信号が赤になります。視界も悪く自動車やバイクが走ってくる中、恒夫が助けに行きますが自動車に跳ねられてしまいます。

突然起こる交通事故は驚きました。自動車に跳ねられる恒夫の姿が映し出されるので、とてもリアルで怖かったです。病院の診察の場面でも具体的な病状やレントゲンの写真などリアリティを感じました。

 

友情

ジョゼの祖母が亡くなり、これから先のことを考えている恒夫は、ダイビングしている時にいつもより早くエア切れになってしまいます。その後、恒夫が交通事故に遭いリハビリしても完全に回復するか分からず落ち込んでいると、「エアが切れた時に支えるのが相棒だろ」(こんなようなセリフだった。)と言う場面は胸熱でした。隼人はただのモブだと思っていたのですが、まさか泣かせてくるとは。

 

心海

肉体的にも精神的もダメージを負っている恒夫のことを励ます、背中を押すジョゼの姿に感動しました。恒夫に助けてもらったから今度はウチが。ジョゼは絵を描き、恒夫の前で読み聞かせを行います。感動する恒夫、何もかも無駄だと思っていましたが諦めず、リハビリをすることにします。ここで流れるのがEveの「心海」です。ジョゼが読み終えた後のイントロでもう鳥肌マックスです。

 

リハビリを終え退院することになると、恒夫は退院日に迎えに来てほしいとジョゼにいいます。退院日、病院でジョゼのことを待ちますが来ません。ジョゼの家に行ってみると、既に荷造りをした後でした。急いでジョゼを探す恒夫は、車椅子の轍を見つけます。轍を辿っていきますが、ジョゼはいませんでした。このシーンの切なさが好きです。

ひとり車椅子のジョゼは坂道から勢いよく転げ落ちそうになりますが、恒夫に助けてもらいます。ここは半ば強引な気がしましたが、最後の二人のキスは最高と同時に照れくさくなりました。アニメ映画は恋愛物語が多いのですが、キスシーンは少なかった(ある?)ので「ウォー」と叫びたくなりました。よかった、ホントに良かった。その流れでEveの「蒼のワルツ」です。悶絶です。

 

新型コロナウィルスで延期

2020年の夏に公開予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大で公開延期となり、2020年12月25日に変更になりました。「コロナ許すまじ」と思ったのですが、最後はクリスマスで終わるので、延期してより味が出た気がします。

 

実写版との違い

実写版は、アニメよりアダルトで結末も決してハッピーエンドではありません。ここからは、実写の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

 

キャラクターの違い

恒夫は妻夫木聡が演じています。大学生で女たらしの楽観主義者で髪の毛ツンツン頭です。だらしない性格ですがどこか憎めません。ジョゼと出会い二人の距離は縮んでいきます。落ち着いたサラサラヘアの髪型で夢に向かって懸命に生きているアニメ恒夫とは正反対です。恒夫のバイト仲間の隼人に似ています。 

ジョゼは池脇千鶴が演じています。祖母は、足の不自由なジョゼを恥に思い人前に出さないようにしています。実写の祖母は嫌味があります。アニメでは車椅子で生活をしていますが、実写では乳母車で祖母が押してくれないと外に出ることができません。唯一外に出られる時は散歩するときで、それでも毛布に包まれ完全に外の世界とシャットダウンしています。アニメよりも閉ざされた世界にいます。料理が得意で恒夫の胃袋を掴みます。

 

ベットシーンが話題に

大学の同級生であるノリコ(江口のりこ)やジョゼとのベッドシーンがあるのですが、女性の乳首が見えたり深いキスをしたり濃厚なベッドシーンとなり当時話題になりました。

 

結末

ジョゼの元から恒夫がいなくなる結末になっています。なぜ、恒夫はいなくなったのか様々な理由がありますが僕の解釈だと、恒夫はジョゼと一緒にいるうちに足の不自由な人と暮らす生活は大変だと気づきジョゼの元から離れました。ジョゼのことは好きなのに付き合っていく自信がない。好きだけではどうしようもできないと知った恒夫が泣き崩れる場面は、痛いほど共感します。

実写版「ジョゼと虎と魚たち」共感したくないけど痛いほど共感してしまう

2020年12月23日

 

まとめ

昨今のアニメ映画は、隕石が落ちてきたり鬼と戦ったりファンタジー要素が多いなか、『ジョゼ』は側にいるようなリアルな日常を描いています。アニメ映画は恋愛物語が多いのですが、なぜキスシーンが少ないのか疑問に思っていた矢先に『ジョゼ』を見たので、「やったー」て叫びそうになりました。なぜキスシーンが少ないのか分かりませんが。昨今の恋愛アニメ映画のアンチテーゼにも感じました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です