【ネタバレ感想】『事件現場から: セシルホテル失踪事件』思わず陰謀論を信じそうになる

こんにちは、つけものなすです。

今回は、女子大生の失踪事件に迫るドキュメンタリー『事件現場から: セシルホテル失踪事件』(21年)について書きたいと思います。Netflixオリジナルのドキュメンタリーです。

 

事件現場から: セシルホテル失踪事件

エリサ・ラム

2013年1月26日、バンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学に通う21歳のエリサ・ラムは、一人旅でロサンゼルスを訪れていました。

観光や公開テレビの収録に参加したり、交流アプリで知り合った人と会ったり、旅行を満喫していました。

エリサはカナダ人で、彼女の両親はバーナビーで飲食店を経営しています。日常生活や旅行のことをTumblrに投稿しています。『ハリー・ポッター』が好きで、『グレート・ギャツビー』に夢中の極普通の女子大生です。

彼女の両親は、旅行中は毎日電話をするように伝えていましたが、1月31日を最後に、彼女から電話はかかってきませんでした。心配した両親は警察に相談します。

警察は自分の意思で行方をくらませたのか、何か犯罪に巻き込まれたのか二つの観点で捜査を進めます。彼女の両親に詳しく事情を聞くと、旅行中はロサンゼルスにあるセシル・ホテルに宿泊していることが分かります。

 

セシル・ホテル

ロサンゼルスの中心街にあるセシル・ホテルは、1924年に開業しました。客室は700部屋、資金は当時にしては大金の700万ドルが注ぎ込まれていました。しかし、バブルが崩壊して大恐慌となり、宿泊する客は格安で長期滞在する高齢者のみとなりました。

セシル・ホテルの近くにはスキッド・ロウと呼ばれる世界でも有数の貧民街があります。そこは犯罪が多発し、路上生活者や薬物中毒者が多く集まっています。現在では7,000人以上の路上生活者が暮らしていると言われています。

1970年代初め、路上生活者を外に出さないようにするため、路上生活者をスキッドロウに封じ込めました。これにより、スキッドロウは無法地帯となり犯罪の巣窟となりました。

セシル・ホテルの元総支配人曰く、勤めた10年間で何千件もの通報を行い、80人以上もの死者が見つかったそうです。警察官も1日に1〜3回はセシル・ホテルから通報があったと述べています。廊下に火を放つものやDV被害、薬物依存や傷害事件、紫色の遺体が発見されることもあったそうです。

過去には、連続殺人鬼のナイト・ストーカーやジャック・ウンターベガーがホテルを利用していました。

そんな危険なホテルになぜ宿泊するのかと思うのですが、外観やロビーは高級ホテルさながらで、宿泊料金は格安なので外国人観光客は騙されたようにやって来ます。

セシル・ホテルは同じ建物内に既存の居住型ホテルと外国人客が宿泊する「ステイ・オン・メイン」と二つのホテルを作りました。部屋は汚く埃まみれで、古びたエレベーターは共通で使うため、犯罪者と遭遇する可能性があります。

ホテルの改修工事をする案もありましたが、当時は80人ほどの居住者がいて彼らを追い出そうとしますが、居住型ホテルに指定されているため規制があり、工事中止命令が出て改修することができませんでした。

警察は彼女が宿泊していた部屋を手がかりに捜査を始めますが、彼女の荷物はホテル側が預かっていました。宿泊客が荷物を残した場合、所持品をまとめて30日間預かるのが一般的なルールのようです。荷物の中身を確認すると、ノートパソコンや処方薬などの貴重品が入っていました。部屋に荒らされた痕跡はありませんでした。

ホテル内の監視カメラは、ロビーやエレベーター、フロントなどの共有スペースのみに設置しているだけで、カメラが設置されていない階もありました。捜査員が何百時間もかけて映像と睨めっこをしていると、彼女がエレベーターに乗る姿を見つけます。他の映像も確認しますが、彼女がホテルの外に出る姿は映っていませんでした。

失踪から一週間後、警察はホテル内の捜索を開始します。全部屋のクローゼットの中まで隅々に確認し、屋上も捜索します。警察犬も導入して彼女の匂いを頼りに探しますが、非常階段に繋がる窓の前で匂いは途切れていました。捜査員を総動員して捜索しますが、手がかりを見つけることはできませんでした。

捜索した翌日、ロサンゼルス市警の元警官クリストファー・ドーナーがカップルの男女を殺害し、指名手配される事件が発生します。この事件に捜査員を割くため、彼女の捜査員は18人から4人に減り、捜査の規模が縮小されました。

 

監視カメラの映像

捜査に行き詰まった警察は市民に協力を求めるため、彼女が映るエレベーターの映像を一般公開します。しかし、映像を公開することによりインターネット上では様々な憶測が飛び交い、収拾がつかない事態にまで発展します。監視カメラに映る彼女の行動はとても奇妙でした。

エレベーターに映る彼女の行動は奇妙で、誰かに追われているようにも見えます。ボタンを押しても扉は開いたままでエレベーターは動きません。映像は速度が遅く、左下にあるタイムスタンプは読み取れず、ドアが閉まるところで映像が切って繋げられているように見えます。まるで編集されているかのように。

公開した映像は予想以上に拡散され、世界から注目を集めます。YouTuberや推理好きの人は、彼女がTumblrに投稿した内容をもとに推理合戦を繰り広げ、実際にホテルを訪れて推察する人も現れます。

彼女に一体、何があったのかでしょうか

 

ネタバレ感想

 

貯水槽

2013年2月19日、ホテルに異変が起こります。水道の蛇口から変色した水が出てくるという苦情が相次いで報告されます。従業員は屋上にある貯水槽を調べるため、ハシゴを登って中を確かめると、そこには水に浮いた裸のエリサの遺体がありました。服は貯水槽の底に沈んでいました。

貯水槽は高さ3メートル、直径2メートルの大きさで、近くには上に登るためのハシゴが付いて、上部にはハッチが付いています。警察は遺体発見時にハッチは閉まっていたと発表します。ホテル内を捜索した時になぜ見つけることができなかったのか。市民は不審に思います。

警察は事件と事故の両方の観点から捜査を進めます。遺体を調べてみますが、外傷や内傷は見つかりませんでした。監視カメラの映像を洗うと、彼女が男二人から箱を受け取っている映像を見つけます。彼女は「THE LAST BOOKSTORE」を訪れ、何冊か本を買っていました。「THE LAST BOOKSTORE」の従業員は、購入した本は一人で持ち帰るのが難しいため、彼女の泊まるホテルに配達しに行ったと説明します。

 

憶測

薬物検査の結果が出るまで時間がかかり、その間に様々な憶測が飛び交います。

遺体発見から数日後、スキッドロウで結核が流行しました。結核の検査名は「LAM-ELISA」。エリサ・ラムをひっくり返した名称です。何か関係がありそうな鳥肌が立つ話ですが、「LAM-ELISA」はLipoarabinomannan(リポアラビノマンナン)Enzyme-Linked Immunosorbent Assay(酵素結合免疫吸着測定法)の略です。

エリサが訪れた「THE LAST BOOKSTORE」のドメイン登録者の住所をGoogleマップで検索すると、エリサの眠る墓地にピンを差します。

この事件は映画『ダーク・ウォーター』(05年)に似ています。『ダーク・ウォーター』は鈴木光司原作の日本映画『仄暗い水の底から』(02年)のリメイク作品です。登場する処女の服装や水道の蛇口から変色した水が出てくる場面、そして貯水槽に浮いている少女など類似している点があまりのも多いです。

インターネット上では、デスメタル系ミュージシャンのモービッド(パブロ・バーガラ)が犯人ではないかと疑い始めます。モービッドのYouTubeを見ると、女性が何者かに追われ最後は殺されるプロモーションビデオが投稿されていました。その動画はエリサの遺体が見つかった翌日に投稿されています。

ある動画ではモービッドが血のりで登場し、壁には連続殺人鬼デッド・バンディやブラックダリアの写真が貼られています。一年前にセシル・ホテルに泊まっている動画もありました。「China」の曲の動画には「I`M THINKING CHINA」とメッセージが現れ、歌詞は水の中で死ぬ女性に関係するものでした。

あまりにも共通点が多いため、彼の投稿する動画には「お前が犯人だろ」と脅迫じみたコメントが殺到します。彼は否定して潔白を主張する動画を投稿しますが、誹謗中傷は鳴り止みません。SNSのアカウントは通報され、GoogleやFacebookのアカウントは停止になります。誹謗中傷に耐えきれなくなり、ついに自殺を図ります。気が付くと彼は精神病院で目が覚めました。

 

結末

エレベーターの映像に映っているエリサは薬物を摂取しているように見えますが、薬物検査の結果は陰性でした。ですが、服薬している抗うつ剤の検出量が少なく、所持している薬の残量が多いことが分かり、警察は抗うつ剤を飲まない日が多かったと判断します。抗うつ剤の服薬を途中で止めると、急に躁状態(躁転)になるリスクが高まります。彼女の姉の証言では、過去に服薬を中止したことで暴走することがあり、入院もしたそうです。

彼女は公開テレビの収録に参加しましたが、撮影現場で奇妙な行動をとったので、警備員が外に連れ出しました。相部屋の女性はエリサの異常な行動に苦情を入れ、ホテル側はエリサを別室に移動させました。他の宿泊客のベッドに「出て行け、帰れ」と書かれた手紙を残すなど不安定な精神状態だったことが分かります。

警察は彼女の精神状態や現場の状況などから、死因は不慮の溺死としました。彼女が非常階段を登り、自ら貯水槽に入ったという見解です。警察は貯水槽のハッチは閉められていたと発表していましたが、それは誤った情報だと訂正します。

それでも多くの人は未だに信じることができません。ホテル側の仕業、警察による隠蔽、政府の陰謀など噂が絶えません。

 

まとめ

思わず陰謀論を信じそうになるドキュメンタリーでした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です