【ネタバレ感想】『ブラリ事件: 11人家族集団死の真相』日記が全てを教えてくれる

今回は、インドを震撼させた事件を追うドキュメンタリー『ブラリ事件: 11人家族集団死の真相』(21年)について書きたいと思います。

日記が全てを教えてくれます。

 

ブラリ事件: 11人家族集団死の真相

11人の遺体

『ブラリ事件: 11人家族集団死の真相』(原題:House of Secrets: The Burari Deaths)は、2021年10月8日からNetflixで配信開始されたオリジナル・ドキュメンタリーです。全3エピソード(各エピソードは約45分)構成。

2018年7月1日、インドの首都デリー・ブラリ地区で、自宅に住む家族15~77歳の男女11人の遺体が発見されました。10人の遺体は天井の格子に吊るされ、首を吊っています。腕を縛られて、目隠しされている遺体もあります。1人の遺体は、ベッドで横たわっています。

自宅には、3世代にも渡る合同家族が住んでいました。事件が起こる二週間前には、孫娘の結婚を祝う祝宴が開かれるなど、事件が起こるとは思えないと家族を知るものは話します。事件の唯一の目撃者は、生き残った飼犬のトミーですが、当然話を聞くことはできません。

この事件は瞬く間にインド全土に広がり、デリー準州のアルヴィンド・ケジリワル首相が現場を訪問するなど、世間の注目を浴びます。

 

日記

警察は他殺と自殺の両点で捜査を進めます。宝石類が盗まれた形跡がないことから強盗の線は薄く、事件前日の自宅周辺の監視カメラの映像には、家族以外に自宅に侵入する人物は映っていませんでした。

警察は他殺の線は薄いと考え、自殺を疑いますが、遺族は一家心中を否定し、警察が事件を隠蔽しようとしていると非難します。この事件に対する関心度は高く、様々な憶測が飛び交います。

建物の壁には11個のパイプが設置してあり、7つにパイプは下向きに、4つのパイプは真っ直ぐに設置してあります。この事件の死者は女性が7人、男性が4人とパイプに何か関係があるのではと人々は疑います。調理用グリルの蓋には11個の柵があり、窓が11個あるなど、11の数字で何かに結びつけようとします。

警察は現場を調べていると、儀式に使うまきの燃え殻を見つけます。事件前日の夜に、何かの儀式が行われていたと疑います。現場から11冊の日記を押収し、その日記は2007年から事件の直前まで書かれていました。

目撃者や犯人、生存者がいない謎の事件。日記から事件の全貌が見えてきます。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

儀式

日記には「ガジュマルの木の儀式を7日間行え。目隠しは硬く結び、ハンカチで口を塞ぐ。真っ直ぐの姿勢で枝に包まれた自分を想像せよ」と儀式の手順が書かれています。ガジュマルの木は、枝から根っこがぶら下がっている木のことです。自宅で首を吊っていた遺体は、ガジュマルの木と重なり、事件当日の状況と一致します。

合同家族の家長である父親は、家族の決定権を握り、財産管理も行います。父親のボパル・シンが亡くなり、家族全員の面倒を見ている三男のラリットが家長になり、一家はラリットに従うようになります。

日記は父親のボパルが亡くなった直後から書かれ、内容のほとんどがラリットのことでした。ラリットの夢に父親が登場し、夢の中で父親が話したことを日記に綴り、家族と共有します。家族は日記に記されたことを父親かまとめらの指示だと思い込みます。警察は、一家は日記に書かれた内容に従い、今回の事件に至ったと考えます。

 

ラリット

2004年3月26日、合板店で働いているラリットは、雇い主と給料について話していると、店に閉じ込められて火を放たれます。肺に大量の煙が入り、何年間も声が出せなくなります(本当に声が出せないのか真意は不明です)。未だ犯人は捕まっておらず、殺人未遂となっています。

ラリットは襲撃事件に遭ったことにより、PTSDを発症していた可能性があります。当時、医者は精神科に行くよう勧めていましたが、精神科は精神が病んだ人が行く場所だと考えられ、治療は受けませんでした。

PTSDを抱え、治療せずに放置をしていたため、精神病を発症してしまった可能性があります。精神病の中には、幻聴が聞こえるといった症状があります。Netflixで配信中のイタリア映画『マイブラザー、マイシスター』では、統合失調症を患う息子が、幻覚と話す場面があります。

もしここで適切な治療を受けていれば、今回の事件は起こらなかったかもしれません。精神の病を患ったときに気軽に相談できる社会だったら、治療をすることができたかもしれません。人間は弱い生き物なのに、弱さを隠していかなければならない社会は辛いです。

家長の父親が亡くなり、母親は寝たきりとなり、兄は消極的で、家族はバラバラになりかけていました。このままではいけないと思ったラリットは、何とか家族を一つにしていきます。自身の事業が拡大され、財政が安定してくると、家族の絆が深まります。家族は日記に記された内容を信じていたから報われたと思い、ラリットを盲信するようになります。

2018年6月17日にプリヤンカが婚約をしたことにより、ラリットは家の秘密(日記)が世間に知れ渡ってしまうのではないかと危険を感じ、今回の事件の儀式が行われた可能性があります。家族を知るものは、婚約数日前からラリットの様子が変だったと話します。

目撃者がいないため、状況で推測するしかありませんが、ドキュメンタリーを見る限りだと、父親に取り憑かれたラリットがやったことだと言えるでしょう。精神病を抱え、父親からの声を日記に綴り、家族を支配しました。その結果、今回の事件が起きたと考えられます。

 

まとめ

弱さを曝け出せる社会になって欲しいです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

House of Secrets: The Burari Deaths (TV Series 2021– ) – IMDb

https://www.imdb.com/title/tt14167390/

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