【ネタバレ感想】『悪夢は苛む』母親としての役目を全うできるか不安になっていく

今回は、母親としての役目を全うできるか不安になっていく映画『悪夢は苛む』(21年)について書きたいと思います。

雰囲気が独特です。

 

悪夢は苛む

概要

『悪夢は苛む』(原題:Distancia de rescate)は、2021年10月13日からNetflixで配信開始されたオリジナル映画です。チリ、スペイン、アメリカの共同製作。上映時間は1時間33分。

監督は、『悲しみのミルク』のクラウディア・リョサ。出演は、マリア・バルベルデ、ドロレス・フォンシ、ギジェルモ・フェニン、ヘルマン・パラシオスなど。

原作は、アルゼンチンの作家サマンタ・ジュウェブリンが2014年に発表した小説「Distancia de rescate」。タイトルの「Distancia de rescate」は、「救える距離」という意味です。物語中にも度々出てきます。

 

思い出す

森の中で倒れている主人公のアマンダ。意識はありますが、体を動かすことができず、何者かに引きずられています。アマンダは、ある男の子(ダヴィド)と会話をしながら、自身に何が起こったのか、思い出していきます。

アマンダは娘のニナと一緒に、夏の期間だけアルゼンチンの田舎町に引っ越してきます。夫は仕事のため、後から来る予定です。

自宅で身支度をしていると、隣人のカローラがやって来ます。水道水が飲めなくなる恐れがあるため、バケツ一杯の水を持ってきてくれます。アマンダとカローラは意気投合し、一緒にドライブをするなど仲良くなります。

カローラは、夫のオマールと息子のダヴィドと一緒に暮らしています。幸せそうに暮らしているかと思いますが、話を聞いてみると、カローラの過去は悲惨でした。

アマンダを演じるのは、『忘れられない愛の歌』(21年)などに出演しているマリア・バルベルデです。

María Valverde(@soylavalverde) • Instagram写真と動画

 

カローラを演じるのは、ドロレス・フォンシです。

Dolores Fonzi(@lolafonca) • Instagram写真と動画

 

数年前の出来事

馬のブリーダーであるオマールは、多額の資金を使って、知り合いから一流の種馬を借りていました。ある日、夫は仕事に出かけ、アマンダとダヴィドは自宅で過ごしていると、種馬がいないことに気付きます。アマンダはダヴィドを連れて森へ探しに行くと、川辺の近くにいる種馬を見つけます。

アマンダは種馬を保護して自宅へ連れて帰ります。しかし、その夜に再び種馬がいなくなります。自宅の周辺を探すと、倒れて苦しんでいる種馬を見つけます。

夫は獣医師を連れてくるため病院へ行き、アマンダはダヴィドの様子を見るため自宅へ戻ると、ダヴィドは馬と同じように苦しんでいます。昼間、馬を探しに行った時に種馬とダヴィドは川辺の水に触れていました。その時に、毒が体内に入ったと考えます。

医師が来るまでは時間がかかるため、地元で有名な超能力者がいる緑色の家を訪ねます。アマンダは息子よりも馬の心配をしていたことに罪悪感を覚えます。

 

移し

緑色の家に住む女性は、毒に侵されているダヴィドを診て、「移し」を試そうと提案します。「移し」を行うと、魂は別の体に移り、毒の一部も魂についていくため、二つの体に分かれて生きていく事ができると説明します。元の体には未知の魂をもたらすので、全くの別人になってしまう恐れもあります。

「移し」を実行して4時間ほど待つと、ダヴィドの体から毒が消え去ります。しかし、アマンダは魂が分裂したダヴィドは全くの別人だと感じて受け入れることができず、息子のことを怪物と言い、抱きしめる事ができません。

成長したダヴィドは、川で浮いている鳥の死骸を庭に埋めたりするなど、不可解な行動が多く、アマンダはどうしていいか分からない日々が続きます。

 

救える距離

アマンダはカローラの過去の話を聞くと、自分の娘に危険が迫った時に、母親としての役目を全うできるか不安不安に思います。母親としていつも側にいてあげられるか、「救える距離」について考えます。カローラは「目に見えているものが全てではない」と教えます。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

アマンダは夫のマルコに連絡しますが、仕事が忙しいので来る事ができません。

アマンダとニナは農場で遊んだ帰りに、スケートボードを抱えて一人で歩いているダヴィドを見つけます。アマンダはダヴィドを車に乗せて自宅へ戻り、ニナとダヴィドは仲良く遊びます。カローラはダヴィドを怪物と言っていますが、アマンダはそうは思いませんでした。

アマンダはカローラの自宅を訪れ、スケボーの部品を渡します。外で話をしていると、カローラから「夫を待たずに湖に行けば」と提案されます。

アマンダは知り合いにニナを預け、カローラと一緒に湖へ行きます。カローラがニナの寝顔を見て「可愛いニナ。寝ている間に連れ去りたい」と話しかけているのを目撃します。アマンダは少し怖くなります。

アマンダは一人で湖へ行きます。黒い馬を見かけると、不吉な予感を感じます。急いで自宅に戻ると、ダヴィドが家の鍵を閉めて、家の中に閉じこもっています。アマンダは玄関の窓ガラスを破り、部屋に入ると、ニナとダヴィドはかくれんぼをしていました。アマンダはカローラに、ダヴィドのせいで危険な目に遭ったと責め立て、二人の間に不穏な空気が流れます。

 

農場

ある夜、寝ているアマンダは隣にダヴィドがいることに気付き驚きます。ダヴィドは「お前が出て行け」と窓ガラスを破ります。アマンダはニナを連れて、町から出ようとします。

アマンダは元の町に戻ることをカローラに伝えるため、カローラの職場である農場へ向かいます。カローラの仕事が終わるまで、近くでニナと一緒に過ごします。仕事終わりのカローラに町を出る事を告げ、昨日に責め立てたことを謝ります。

場面は変わり、外で遊んでいるアマンダは熱中症で倒れ、カローラの自宅で休養を取ります。目が覚めると、馬小屋で物音がするという話を聞き、アマンダは窓越しに様子を見ると、ダヴィドが「逃げて」と叫びます。アマンダはニナを連れて、車で逃げ出します。町の外に出ようとしますが、体調が悪くなり倒れてしまいます。

アマンダは目を覚ますと、病院で治療を受けています。カローラは病気のニナを救うには緑の家に行く必要があり、治療をするにはアマンダの同意が必要だと話します。

 

環境汚染

アマンダは何で倒れてしまったのか、真実を思い出します。カローラの仕事が終わるまで農場の近くで待っていた時に、従業員が誤って農薬をこぼし、その後に農薬をこぼした場所でアマンダとニナは飴を舐めていました。その時に毒が体に侵入しました。ダヴィドは農場で倒れているアマンダを発見して、緑の家へ連れていくため、木の舟に乗せました。

農薬による環境汚染について言及している場面は、いくつかありました。町を案内してくれたゲセルの飼っている犬の一匹は、脚が一つありませんでした。ダヴィドは大量の鳥の死骸を埋めていました。これらは農薬による環境汚染によって引き起こされた事だと推測できます。

小さい子供は農薬の影響を受けやすく、発達障害や精神機能に悪影響が警告されています。農薬の脅威を「移し」を使って表現していました。

本作は、環境汚染が最大のテーマとなっています。それにしても、分かりにくいです。

 

その後

マルコはオマールの自宅を訪ね、「娘は病気で回復に向かっている。ここで何が起きたか知らないか?」と質問しますが、オマールは「知らない」と答えます。ダヴィドはマルコの車の後部座席に乗って、ニナのモグラのぬいぐるみを抱きしめます。オマールはダヴィドを車内から無理矢理下ろし、マルコは車で走り去っていきます。

マルコが「アマンダは妻でした」と話していたので、アマンダは毒に侵されて亡くなったのでしょう。ダヴィッドがニナのモグラのぬいぐるみを抱きしめていたのは、ダヴィッドにニナの魂の半分が宿っているからなのでしょうか。

 

感想

あまりにも視聴者に与えられた情報が少ないので、様々な解釈があると思います。観賞後に誰かと話したくなる映画でした。

馬の交尾する場面がいちばんの衝撃的でした。それ以上の衝撃がなかったのが、ある意味問題かもしれません。

 

まとめ

難しい映画でした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

悪夢は苛む – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

https://filmarks.com/movies/99283

 

Distancia de rescate (2021) – IMDb

https://www.imdb.com/title/tt9471660/

 

Netflix’s Fever Dream Ending, Explained: Is Amanda Dead or Alive? Is David Evil?

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