【ネタバレ感想】『ヒヤシンスの血』自分のセクシュアリティに気付く

今回は、殺人事件の捜査結果に納得できない一人の警察官が、独自で捜査を進めていくポーランド映画『ヒヤシンスの血』について書きたいと思います。

主人公がカッコいいです。

 

ヒヤシンスの血

ヒヤシンス

『ヒヤシンスの血』(原題:Hiacynt)は、2021年10月13日からNetflixで配信開始されたオリジナル映画です。上映時間は1時間52分。

監督は、ピオトル・ドマレフスキ。出演は、トマシュ・ジェンテク、フベルト・ミウコフスキ、マレク・カリタ、アドリアンナ・フレビツカなど。

ヒヤシンスは花のことですが、タイトルの意味で使われるヒヤシンスは花ではありません。1980年代のポーランドでは、警察が同性愛者をリスト化して、そのリストをヒヤシンスと呼んでいました。ヒヤシンスは、ギリシャ神話に登場する美少年で同性愛者のヒュアキントスに由来しています。

同性愛者であったヒュアキントスは、アポロンと一緒に円盤投げを楽しんでいました。それに嫉妬した西風の神ゼピュロスは、風を吹き付け、飛んでいた円盤はヒュアキントスに当たり、亡くなってしまいます。ヒュアキントスの血からヒヤシンスが咲いたと言われています。

本作の最後に説明がありますが、1985年から1987年の間にヒヤシンス作戦というものが行われ、LGBTの人々が監視や拘束を受けました。1万1000人以上のファイルが作成され、脅迫や圧力に使用されました。

ポーランドはカトリック教徒が多いため、欧州の中でもLGBTGにとって最悪の国と言われているそうです。

 

ロベルト

舞台は1980年代の共産主義下のポーランド。

警察官のロベルトは、相棒のノガスと共に殺人事件の捜査を行います。裕福な家に住むグレゴルチクが殺害され、被害者の自宅を調べると、ゲイ向けのアダルトビデオが見つかります。被害者のグレゴルチクは、ゲイであることが分かります。

警察はゲイの溜まり場である公衆トイレをガサ入れします。ロベルトは情報提供者を作るため、その場にいた大学生のアレクと一緒に逃げて、警察であることを隠して仲良くなっていきます

ロベルトの父親は、反体制分子を取り締まる秘密警察です。ロベルトはシュチトノ高等民兵学校に合格して喜びますが、父親の口利きだと知りショックを受けます。父親との関係は良くありません。同じ職場で資料を管理しているハリンカは婚約者です。

 

独自で捜査

公衆トイレで捕まえた男たちに事情聴取を行い、グレゴルチクは自身の別荘で男娼を雇っていたことが分かります。ロベルトはアレクからタクシーの運転手のユリアンが何か知っていると聞きます。ユリアンに話を聞くと、先日捕まえたバルチクに見覚えがあると話します。

バルチクを捕まえて事情聴取を行うと、バルチクは「エイドリアン・ソボレフが刺されても無視していた。奴らが殺した」と話します。グレゴルチクはエイドリアンに金を渡し、写真を持っていたと話します。バルチクは口を割らないため、ノガスは過剰なほどの暴力を振るい、無理矢理に自白をさせます。

ロベルトはソボレフの事件を調べ、留置場にいるバルチクに話を聞きに行きますが、バルチクは首を吊って亡くなっていました。ロベルトは留置所に向かう途中に、怪しい男とすれ違っていました。

ロベルトの上司は、グレゴルチクが殺害された事件の犯人はバルチクと断定し、捜査を打ち切ることにします。ロベルトは事件解決に至っていないと訴えますが、上官は話を聞いてくれません。納得できないロベルトは、独自に捜査を進めます。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

バルチクとグレゴルチク

事件の解決に納得できないロベルトは、バルチクの自宅を調べます。部屋の中を調べていると、ある写真を見つけます。その写真には、男娼と楽しんでいるグレゴルチクが写っていました。バルチクとグレゴルチクは、何かの事件に巻き込まれたのではないかと疑います。

父親のもとを訪れると、父親は上官と話をしていて、上官はバルチクの捜査資料を持っています。父親に首を吊ったバルチクについて聞きますが、「もう解決済みだ」と話を聞いてくれません。秘密警察は、何かを隠しています。

 

隠し撮り

ロベルトはアレクから誘われたパーティに参加します。アレクは、大学の教授であるイェジー・メトラーは自分たちの仲間であると話します。翌日、イェジーに話を聞きますが「もう話した」と言い、話を聞いてくれません。

ロベルトはハリンカと寝ていると、眠りにつくことができず、グレゴルチクの自宅から押収したアダルトビデオを見ます。ロベルトは、何かに惹かれていきます。

ロベルトとエデクは、結婚式の打ち合わせのため教会へ行きます。ロベルトは、男に隠し撮りされていることに気付きます。隠し撮りする男を追いかけますが、頭を殴られ見失います。

 

ピースマーク

アレクと一緒に酒を飲み、アレクは路上の壁にピースマーク(反戦運動のシンボル)を落書きします。ピースマークは破壊行為とみなされるため、ロベルトは「こんなことしてどうなるか分かるか」と怒りますが、ロベルトは「恐れは捨てるんだ」と言い、ロベルトにキスをしてその場を立ち去ります。

翌日、ロベルトは、自分は女性が好きだということを確かめるため、職場にいるハリンカに激しくキスを迫り、昨日のことを謝ります。自分のセクシュアリティに気付き、それを否定するためにキスを迫るというのが、切ないです。

タクシーの運転手であるユリアンに聞き込みを行い、グレゴルチクの別荘まで案内してもらいます。別荘では、留置場ですれ違った男がいます。タクシーに戻り、男の後をつけると、男の車は突然止まり、銃で撃ってきます。ユリアンは銃で撃たれ、男に逃げられてしまいます。

別荘のことについてタッジオに話を聞こうとしますが、タッジオは何者かに襲われ重傷を負い、病院に入院しています。ロベルトとアレクは酒を飲み、ロベルトの自宅で一夜を過ごします。

 

俺が見つける

イェジー教授の自宅を訪ねると、イェジーは大学をクビになり、酒に浸っています。イェジーは男娼の学生の手配を行っていました。イェジーは部屋を出ると、ベランダから身を投げ出し、自殺します。

捜査部屋に戻ると、そこには父親の姿が。ロベルトを盗撮していた男は、父親が雇い尾行させていました。父親は取調室にいるアレクに事情聴取を行えと命令します。ロベルトは取調室に入り、初めて素性を明かすことになります。

ロベルトは父親の金庫からビデオテープを見つけ出します。ビデオテープを再生すると、そこには別荘で娼婦と交わる父親の上官とアレクの姿がありました。

ロベルトは警察官の授賞式で、父親と上官、別荘にいた男が話をしているのを目撃します。父親はアレクの資料を渡し、男はそれを受け取ってどこかへ行きます。

ロベルトは授賞式を抜け出し、アレクのいる場所へ行きます。アレクと逃げようとしますが、男に見つかり、銃撃戦となります。ロベルトは男の頭を殴って殺します。ロベルトは「俺が見つける。行け」と言い、アレクを逃がし、物語は幕を閉じます。

 

感想

ロベルトが殺人事件の捜査を進めるうちに、自分のセクシュアリティに気付かされ、様々な葛藤が描かれていて面白かったです。

初めてアレクにキスをされた後に、それを否定するかのように恋人と抱き合う場面は、とても切なかったです。ロベルトの心情が丁寧に描かれていたと思います。

 

まとめ

主人公の心情の描き方が良かったです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

ヒヤシンスの血 – 映画情報・レビュー・評価・あらすじ・動画配信 | Filmarks映画

https://filmarks.com/movies/99395

 

ヒヤシンスの血 (2021) – IMDb

https://m.imdb.com/title/tt14315584/

 

CNN.co.jp : ショパンは同性愛者だった? LGBTQに風当たりの強いポーランドで物議

https://www.cnn.co.jp/world/35163130.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です