【ネタバレ感想】『ロンドン釘爆弾事件』世の中には悪人より善人が多い。憎悪は勝てない

こんにちは、つけものなすです。

今回は、1999年にロンドンで起こった連続釘爆弾事件のドキュメンタリー『ロンドン釘爆弾事件: 犯人捜査録』(21年)について書きたいと思います。

想像を絶する事件です。

ロンドン釘爆弾事件: 犯人捜査録

釘爆弾

『ロンドン釘爆弾事件: 犯人捜査録』(原題:The Nailbomber)は、2021年5月26日から配信開始されたNetflixオリジナル・ドキュメンタリーです。上映時間は1時間12分。

1999年4月17日、ロンドン南部のブリクストン・エレクトリック通りでは、土曜日ということもあり多くの人で賑わっています。ブリクストンは、黒人人口が多い地として知られています。

そんな中、通行人が道端に置いてあるバッグを見つけます。バッグからは「チクタクチクタク」と音がして、中には釘爆弾が入っていました。周りがパニックになる中、別の通行人は爆弾を取り出し、バッグだけを持ち去って行きます。

住民は警察に通報しますが、爆弾は爆発してしまいます。幸い死者は出ませんでしたが、48人が負傷しました。負傷した人の中には聴覚や視力、脚を失った者や、約10センチの釘が頭蓋骨に刺さった子供もいました。

釘爆弾は一人でも多くの人を殺すよう設計されています。爆弾が爆発すると、中の破片が時速約500キロで飛び散り、複数の人体を貫通していきます。

警察は、あらゆる動機を視野に捜査を開始します。

 

アーサー

警察は市民に情報提供を求めますが、有力な情報は得られず、事件の目撃者もいませんでした。

その頃、民間の情報収集機関であるサーチライトは、ファシスト団体を潜入捜査していました。当時20代の反人種差別主義でアーサーと呼ばれる男は、極右団体の潜入調査を開始します。本作では、アーサーはインタビューに応じるのですが、顔や素性は明かしていません。

アーサーは、1999年にBNP(英国国民党)に潜入捜査をしていました。BNPは移民の受け入れを反対し、集会では爆弾の製造方法を教えるなど、過激な政党です。集会の後は暴動が起きていました。

BNPのジョン・ティンダルは演説で、「白人の裏切り者が国を滅ぼそうとしている。奴らは敵だ」と訴えます。

アーサーは当時を振り返り、潜入捜査をしていく内に洗脳され、ホロコーストを疑うようになったと話します。「教科書を信じてきた自分は世間知らずなのかも」と、自分自身を疑うようになります。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

ブリック・レーン

爆弾事件から7日後の1999年4月24日、ロンドンのブリック・レーン。ブリック・レーンは、ベンガルのコミュニティーがあります。多くの人が行き交う中、駐車してある一台の車が爆発します。この爆発で13人が負傷しました。

地元の新聞社には脅迫状が届き、事前に黒人やアジア系のマイノリティの読者に向けて注意喚起をしていました。新聞社は脅迫状について国や警察に連絡していましたが、差別的な犯行とは認められず、国や警察は動きませんでした。

警察は監視カメラの映像を洗い出し、野球帽をかぶりスポーツバッグを背負っている怪しい男を発見します。しかし、当時のカメラの性能では解像度が粗いため、人物を特定することはできませんでした。

警察は、マイノリティを狙った組織犯罪だと疑い、捜査を進めます。

 

ソーホー

警察は膨大な時間を費やし、監視カメラの映像を洗い出すと、鮮明に映し出された犯人を見つけます。犯人の顔をロンドン中に指名手配し、市民に情報提供を呼びかけます。

アーサーは警察が公開した犯人の顔を見て、デイヴィッド・コープランドの可能性があるとサーチライトに伝えます。

コープランドはBNPの集会では幹事を担い、腕章をしてジョン・ティンダルの隣に立っていました。アーサーはコープランドと面識があり、年齢が近いため話が弾み、音楽の話や有色人種が嫌いだという話をしていました。その後、コープランドは行方をくらませました。

1999年4月30日、ロンドンのゲイ・コミュニティで有名なソーホー。オールド・コンプトン通りにあるアドミラル・ダンカン(パブ)で爆弾が爆発します。この爆発で3人が死亡し、79人が負傷しました。

警察はアーサーの有力な情報のもと、コープランドの居場所を突き止めていましたが、3度目の爆発を許してしまいました。もう少し対応が早ければ、3度目の爆発は防げたかもしれません。

 

デイヴィッド・コープランド

1999年5月1日、警察は容疑者であるデイヴィッド・コープランド(当時22歳)を逮捕します。彼は極右団体には所属しておらず(逮捕当時)、単独の犯行でした。

取調べでは、「目的はこの国に争いをもたらすこと。人種間戦争を起こすこと。人種の対立を煽って暴動を起こしたかった。この考えが頭の中で膨らみ、自分の宿命と思うようになった」「被害者のことは何も考えていない」「この国は白人をおとしめている。“みんな平等”とか、ふざけた文句でね」と犯行について話しています。

新聞社に届いた脅迫状については、「知らない」と答えています。

ゲイをターゲットにした理由について聞かれると、「同性愛者がとにかく嫌だ。個人的な話さ」と話すのですが、この話をしている時だけ、コープランドは落ち着かない様子でした。「自分はストレートだ」と主張します。

逮捕から13ヶ月後、コープランドの初公判が始まります。コープランドは限定責任能力を理由に容疑を否認しています。

コープランドの犯行当時の精神状態を正常と証明するため、被害者の男性は女性を装いコープランドに手紙を書きます。ネット上で女性になりすまして男性を誘惑するように、コープランドを魅了していきます。

手紙をやり取りするうちに魅了されたコープランドは、手紙に医者たちを欺いた旨を書いてしまいます。ネカマにトドメを刺されました。

被害者の男性は、精神科医や陪審員に手紙のやりとりを見せ、コープランドは医者を欺いていたことを伝え、犯行当時の精神状態は正常であったことを証明します。そして、コープランドに6つの終身刑が言い渡されます。

警察はアーサーに情報提供の謝礼として7万ポンド(日本円にして1000万円)を提示しますが、アーサーは謝礼には無関心で、金や名声のためでなく自らの正義感で動いています。

アーサーは10年間、毎週BNPの集会に通い、反ファシズム派に攻撃されながらも、潜入捜査を続けました。今回の爆弾事件だけでなく、BNPの勢力拡大も阻止しました。

差別的な攻撃は現代でも行われています。自分たちはどうすればいいのか考える時があります。「世の中には悪人より善人が多い。憎悪は勝てない」この言葉を信じるしかありません。

 

まとめ

酷い事件でした。

アーサーの活躍によって事件が解決して良かったです。去り際がとてもカッコ良かったです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

The Nailbomber (2021) – IMDb

https://www.imdb.com/title/tt12939812/?ref_=rvi_tt

 

1999年ロンドン釘爆弾 – 1999 London nail bombings – Wikipedia

https://ja.janghan.net/wiki/1999_London_nail_bombings

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