【ネタバレ感想】『小さな勇者ヒコ』犬が活躍するメキシコのアニメーション

こんにちは、つけものなすです。

今回は、犬が大活躍するメキシコのアニメーション映画『小さな勇者ヒコ』について書きたいと思います。

小さな勇者ヒコ

フラッキング

『小さな勇者ヒコ』(21年)は、2020年にメキシコで劇場公開され、その後にNetflixが権利を獲得して2021年2月12日に配信開始されました。原題は「El Camino de Xico」。監督はEric D. Cabello Diaz。

町中を走り回る少女コピと親友の少年グス。コピは凧揚げに夢中になって町中を走り回り、町の住民に迷惑をかけてしまい、ペトラおばさんに叱られます。親がいないコピは、ペトラおばさんと犬のヒコと暮らしています。

そんな平和の町に悪巧みをする連中がいます。ある大企業は、コピの住む町にある山に鉱物や天然ガス、ダイヤモンドなど大量のお宝が眠っていることを知り、ダイナマイトを使って山を吹き飛ばし、フラッキングという採掘方法を用いて天然ガスを取り出そうと企てます。

フラッキングは水圧破砕法と呼ばれ、地下2500〜3000mに到達するまでドリルで掘り進め、そこから水平方向に掘削します。そこに大量の水と化学製品を流し込んで、地中に眠るガスや石油を取り出します。

アメリカではフラッキングを用いて国内の原油の生産量が増えましたが、大量の水を使うため水不足の恐れがあり、化学製品は生物に悪影響を及ぼし、フラッキングを行った後に地震が発生するなど、様々な問題を抱えています。ガス・ヴァン・サント監督の『プロミスト・ランド』(12年)でもフラッキングが取り上げられていました。

プロミスト・ランド

2012年に公開されたアメリカ映画です。監督はガス・ヴァン・サント。出演はマット・デイモン、フランシス・マクドーマンドなど。

エネルギー会社に勤めるスティーヴ(マット・デイモン)とスー(フランシス・マクドーマンド)が田舎町にやって来ます。フラッキングを使って天然ガスを採掘するため、住民を説得しますが、フラッキングによって農場が荒廃したという情報が流れ住民は反発します。

フラッキングを題材にした社会派の映画ですが、物語後半では組織や個人の話になり、フラッキングはどうでもよくなってしまいます。

 

山の秘密

利益を優先する企業は自然を破壊することを隠して、山にお宝を採掘すると町民を説得します。山の採掘に関してペトラおばさんは強く反対します。その山にはコピの母親も関係する秘密がありました。

コピは山には何か秘密があると知り、グスと共に隠し事をしているペトラおばさんの後を追います。見つからないように後をつけると、ペトラおばさんはおじいさんに会いに行き、「3つの石を合わせて道を開き、使者を探さなければ」と謎めいたことを話しています。

ペトラおばさんが山に使者を探しに行こうとしますが、おじいさんは「娘のルピータ(コピの母)は山に留められた。ルピータと同じ目に合う。」と山に行こうとするのを止めます。

母親が山にいることを知ったコピは、ヒコと共に山へ向かいます。山には工事の機械が迫っています。母親を探し神聖な山を守るべく、子供と犬の大冒険が始まります。

本作の主人公は母親を探すコピだと思うのですが、タイトルにもなっているように少女のコピではなく犬のヒコが主人公です。山に入るとヒコは言葉を話せるようになり、喋るウサギやオポッサムに出会います。ディズニーのようなファンタジー要素が詰め込まれています。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

アウエウエテ

コピたちが山道を進むと、言葉を話す大木に出会います。大木を見ると『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のデクの樹サマを思い出します。

大木はメキシコのサンタ・マリア・デル・トゥーレに実際にある木で、「アウエウエテ」と呼ばれています。16世紀のメキシコ征服の際に起こった事件「悲しき夜」で、大量の仲間が殺された将軍エルナン・コルテスがアウエウエテの木の下で大泣きしたそうです。本作ではアウエウエテの木の涙を使って、サソリに刺されたコピを助けます。

 

ヒコ

トラクアチェはヒコのことを古代の種族に属していたと説明します。ヒコの犬種ショロイツクインツレは、アステカ神話の神「ショロトル」と、犬を意味するアステカ語「イツクイントリ」を合わせた名前です。メキシカン・ヘアレス・ドッグとも呼ばれています。

ヒコはサソリを撃退し、サソリに刺されたコピを助けます。本作は普通の犬だと思っていたヒコが使者だったことに気付く物語になっています。ただ、ヒコがスーパーマンのように何でも解決してしまうので、もう少し少年少女の活躍する場面が見たかったです。

 

罪の代償

ルピータの夫フアンは、自然を破壊する企業と戦い亡くなりました。鹿のような姿をした山の守り神は、人間の犯した罪の代償として、ルピータを生贄(山に閉じ込める)にすることになりました。人間が自然を破壊したのは今回だけではなく、過去にも同じようなことをしていました。

ヒコの力を使って悪党を倒しますが、山の守り神は生贄を差し出せと言い、ルピータの代わりに町長が生贄となります。町長が自ら生贄になるその背中は何だか寂しかったです。

「悪党を倒して平和になりましたとさ」で終わる訳ではなく、人間の犯した罪の代償までを描いているのが面白いです。子供向けだからと侮れない内容です。

近年だと『劇場版ポケットモンスター ココ』(20年)で、人間が自然を破壊する物語を描いていましたが、最後は伝説のポケモンの力で自然を復活させる訳ではなく、壊した人間が自然を元に戻そうとして終わります。

昔の子供向け映画は、スーパーマンが出てきて解決するようなものが多かったですが、近年では自分たちで解決する内容が多くなってきたと思います。誰かがやってくれる、何とかなると思っていた時代は終わりました。

 

まとめ

犬が活躍する面白い映画でした。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

フラッキングのしくみ — ミア・ナカムリ

https://www.youtube.com/watch?v=Tudal_4x4F0 

 

El Camino de Xico (2020) – IMDb

https://www.imdb.com/title/tt12481806/

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