こんにちは、つけものなすです。
今回は、連続殺人鬼シャルル・ソブラジを題材にした犯罪ドラマ『ザ・サーペント』(21年)について書きたいと思います。
衝撃の実話です。
ザ・サーペント
行方不明者
『ザ・サーペント』(原題:The Serpent)は、2021年1月1日からイギリスのテレビ局で放送され、その後にNetflixで配信開始となりました。全8エピソードのリミテッドシリーズです。1エピソードは約60分。
舞台は1976年のタイ・バンコク。オランダ大使館に務める外交官のヘルマン・クニッペンバーグの元に、行方不明者の捜索依頼が来ます。依頼主は、オランダ人の義理の娘とその恋人と連絡が取れなくなり、捜索して欲しいという依頼でした。
ヘルマンは警察に相談しますが、取り合ってもらえず、自ら捜索することになります。ベルギー大使館に務めるベテラン外交官ポール・シーモンズに捜索のノウハウを教えてもらい、行方不明者の捜索を開始します。
二人の足取りを掴むため、空港で入国カードを確認すると、二人は入国していることが分かります。宿泊先のホテルを調べますが、二人は宿泊している形跡がありませんでした。一体、どこへ行ったのか。
オーストラリア大使館に務めるレーバーから、オーストラリア人の二人の遺体が発見されたことを聞きます。遺体はオーストラリア人と報告されていましたが、後にオランダ人であることが判明します。
アラン
ヘルマンが捜索を開始する2ヶ月前、集合住宅地のカニットハウスでは、主催者のアランが観光客や近隣住民を誘い、パーティーを開いていました。
アランと恋人のモニクが部屋に入ると、そこには男がベッドで横たわり、苦しそうにしています。アランは男に薬を飲ませ、男のカバンから金とパスポートを盗み出します。
アランは盗んだパスポートを偽装して、モニクと共に香港へ向かいます。宝石ディーラーの顔を持つアランは、宝石の取引を終えた後、現地で知り合ったオランダ人の男女カップルをカニットハウスに招待します。
アランとモニクは、オランダ人のカップルが金を持っていることを知り、二人に宝石を買うよう勧めますが、断られてしまいます。翌朝、二人のオランダ人はベッドの上で苦しそうにしています。
連続殺人鬼
観光客をパーティに誘い、薬を盛り、金品を盗みだすアランこそが、連続殺人鬼のシャルル・ソブラジです。昏睡強盗や殺人を繰り返し、パスポートを偽造して名前を変え、世界中を飛び回り、現地で知り合った観光客をターゲットにしていました。
シャルルが飲ませている薬は、睡眠薬を水に溶かして下痢止めのカオペクテイトを混ぜたものです。飲んだ人は嘔吐を繰り返し、意識が朦朧とし、立ち上がることができなくなるほどの効力です。
シャルルは警察に何度も捕まりますが、その度に職員を賄賂で買収し、脱獄を繰り返します。その後は映画の権利やテレビのインタビューに応じて、多額の金を請求していました。
そんな連続殺人鬼を追うのは、外交官のヘルマンと近隣住民です。警察に取り合ってもらえないヘルマンは、妻や周りに人にも協力してもらい、犯人を追いかけます。シャルルの自宅の近隣住民の妻ナディーンと夫レミも捜査に加わり、まさかの近隣住民が大活躍します。
時系列が現在と過去を行き来するので少し分かりにくい箇所もありますが、見ていると点と点が繋がっていくので気持ちが良いです。
バンコクの渋滞やスコール、タバコを吸う場面は緊迫感を煽り、外交官と殺人鬼は最後まで接触せず、攻防戦を繰り返します。伏線などの回収も見事で、ホントによくできているドラマです。それにしても、タバコを吸う量が半端なかったです。
登場人物
シャルル・ソブラジ
窮地に立たされても一切動じず、平気で人を騙せてしまう狂気に満ちた連続殺人鬼です。
シャルル・ソブラジを演じるのは、『ジ・エディ』(20年)などに出演しているタハール・ラヒムです。
マリ=アンドレ・レクレール
シャルルの恋人でモニクと呼ばれていますが、本名はマリ=アンドレ・レクレールです。旅行先でシャルルと出会い、一目惚れをして彼について行きますが、彼が罪を犯していることを知り、戸惑いながらも常に自分と葛藤しています。
レクレールを演じるのは、ジェナ・ルイーズ・コールマンです。
アジェイ
シャルルの協力者ですが、レクレールとの関係が良くありません。アジェイを演じるのは、アメシュ・エディレウィーラです。
ドミニク
旅行先でシャルルと出会い、薬を盛られ服従するかたちでカニットハウスにやって来ました。ドミニクを演じるのは、ファビアン・フランケルです。
ヘルマン・クニッペンバーグ
連続殺人鬼を追う外交官です。頼りなさそうな雰囲気なのですが、捜査が進むに連れて野心が芽生えていき、たくましくなっていきます。捜査に没頭するあまり、私生活を犠牲にし、まるで殺人鬼に取り憑かれたようです。
ヘルマンを演じるのは、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19年)でレイの父親を演じたビリー・ハウルです。
アンジェラ・クニッペンバーグ
ヘルマンの妻で、5カ国語を話すことができます。タイ語も学んでいるため、タイ語を話せない夫のために捜索に協力します
アンジェラを演じるのは、エリー・バンバーです。
ポール・シーモンズ
ヘルマンに捜索に必要なノウハウを教え、捜索に協力します。
ポール・シーモンズを演じるのは、『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』(19年)などに出演しているティム・マッキナリーです。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
時系列を整理して、シャルル・ソブラジについて書きたいと思います。
1994年4月6日、シャルル・ソブラジはインド人の父とベトナム人の母との間に生まれました。その後、父親は家族を捨て、母親は再婚して子供に恵まれます。しかし、再婚相手はシャルルを愛することができず、ネグレクトに近い環境で育ちました。
1969年、シャルルはジュリエットと結婚しますが、母親は喜んでいません。1971年、妻と子供の三人で暮らしているシャルルは、宝石泥棒で警察に捕まります。獄内では、虫垂炎と偽り、摘出手術をして、その隙に看守に薬を盛って脱獄を図りますが、逃走中に捕まってしまいます。そして、ジュリエットに別れを告げられます。
1975年、インド・カシミールにて、シャルルとレクレールが運命の出会いをします。その後二人は、バンコクで一緒に暮らします。ホアヒンの豪邸に住むレイノット夫妻に薬を盛り強盗をします。腹部にある傷跡は戦争によってつけられたと説明する場面がありますが、獄内で摘出手術した際の傷跡です。
シャルルとレクレールはカニットハウスに引っ越し、観光客をパーティに誘い、昏睡強盗や殺人を繰り返します。カトマンズでは、ギャンブルで全財産を失い、ホテルに支払う金が無くなります。シャルルは、現地で知り合った男女のカップルを殺害し、所持していた宝石を盗み、窮地を乗り越えます。
レクレールは何度も嫌気がさして、シャルルのもとを離れようとしますが、服従されているかのようにシャルルの元に帰って行きます。現地で知り合ったコニーに名前を聞かれた時に、本当のことを言うか一瞬悩む場面が印象的でした。
近隣住民のナディーンを怪しみ、警察を警戒したシャルルは、偽造パスポートなどの証拠品をスダに預け、大金を使い宝石を購入するよう命じます。警察はシャルル一行を逮捕しますが、シャルルは職員を買収して脱獄を図ります。脱獄後は、あっさりアジェイを切り捨て、シャルルに人情は無いことを証明しています。
フランス・パリに戻り、宝石の取引を終えると、自分たちが国際指名手配されていることに気付きます。フランスで捕まるとバンコクに送還されて死刑宣告を受けるので、急いでインド・ボンベイに逃げ込みます。ボロボロのシャルルはウィル・フェレルに似ていて、個人的にツボでした。
シャルルはいつもの手口で観光客に薬を盛りますが、量を誤ってしまい食中毒騒ぎとなり、警察官に捕まり刑務所に収監されます。
刑期満了後はタイに身柄を引き渡す予定でしたが、タイでは死刑宣告だったので、シャルルは出所の1ヶ月前に脱獄を行い、22日間逃亡した末にわざと捕まります。新たに10年の刑期を言い渡され、その間にタイでの殺人は時効を迎えます。死刑を免れるために、あらゆる手段を使います。
1997年、自由の身となったシャルルは、テレビのインタビューに答え、映画の権利などを売り、多額の金を稼いでいました。
2003年、ネパール・カトマンズにシャルルが現れ、警察に身柄を拘束されます。そのことを知ったヘルマンは、証拠品からルクレールの供述書を手に取り、現地の警察官に送ります。そして、シャルルはローラン・カリエール殺害で20年の刑期を言い渡されます。最後の字幕の「2020年12月現在、カトマンズの刑務所で服役中です」は衝撃を受けました。まだ生きているということが、恐ろしかったです。
ヘルマンとアンジェラが離婚してしまったのはショックでした。捜査に没頭するあまりに、夫婦関係が悪くなってはいましたが、別れて欲しくなかったです。連続殺人鬼を追う夫婦の末路は、こうなる運命なのでしょうか。
時系列
時系列を簡単にまとめてみました。正確に合っているかは定かではないのでご了承ください。
1994年
- 4月6日、シャルル・ソブラジがインド人の父とベトナム人の母との間に生まれる
1969年
- 11月5日、フランス・パリにて、シャルルとジュリエットが結婚式を挙げる
1971年
- インド・ボンベイにて、妻と子供の三人で暮らすシャルルが、ニューデリーで宝石泥棒をして警察に捕まる
1972年
- シャルルが脱獄をするも逃走中に捕まり、ジュリエットに別れを告げられる
- シャルルがパキスタンでタクシーを盗み、運転手を殺害する
1973年
- 11月20日、フランス・パリに住むドミニクがオーストラリアへ向かう
1975年
- 5月5日、インド・カシミールにて、シャルルとレクレールが出会う
- 7月頃、レクレールがバンコクへ向かい、シャルルと暮らし始める
- 9月頃、シャルルとレクレールは、ホアヒンの豪邸に住むレイノット夫妻に薬を盛り、昏睡強盗をする
- シャルルとレクレールはカニットハウスへ引っ越す
- タイ・チェンマイで、シャルルとドミニクが出会う
- シャルルがドミニクに薬を盛り、カニットハウスに住ませる
- ドミニクが薬を飲み続け苦しんでいる頃、アジェイがカニットハウスに引っ越す
- 旅行中のテレサ・ノートンがアジェイに誘われカニットハウスのパーティーに参加する。その後、彼女はシャルルに誘われてナイトクラブへ行き、そこで薬を盛られ意識が無くなる。犯行を見られてしまったシャルルとアジェイが、彼女を海に流し溺死させる
- 飼っている猿が誤って薬を飲んで死んでしまう。その様子を見たドミニクは、シャルルたちを疑い始める
- ヴィタリ・ハキムがレクレールに家族の写真(ステフィーとクレオ)を見せる
- 11月27日、シャルルはヴィタリに薬を盛り、金とパスポートを盗み、近くの水田で火をつけて殺害する
- ヴィタリの妻ステフィーは、夫を探しにタイへ向かう
- ステフィーはカニットハウスでシャルルに会うが、薬を盛られ殺害される
- シャルルとレクレールは香港へ向かい、宝石の取引を終え、現地で知り合ったオランダ人の男女カップルをカニットハウスに招待する。オランダ人に宝石を買うよう勧めるが断られたため、二人に薬を盛り殺害する
- ロイヤルネパール空港にて、シャルル、レクレール、アジェイがネパールの首都カトマンズへ向かう途中に、オーストラリア人が殺害されたと新聞で知る
- シャルルはギャンブルで全財産を失い、現地で知り合った男女のカップル(ローラン、コニー)を殺害し、所持していた宝石を盗む
- 12月23日、ネパールで子供が焼死体を発見する
1976年
- 2月6日、ヘルマンのもとに行方不明者(ヘレナ・デッカーとヴィレム・ブルーム)の捜索依頼がくる。他の外交官から情報を集め、捜索を開始する
- 3月1日、ヘルマンは行方不明者のヘレナ・デッカーとヴィレム・ブルームの遺体を確認する
- 3月3日、ヘルマンは殺害されたヘレナ・デッカーとヴィレム・ブルームの写真を確認しする。
- 3月8日、ヘルマンがナディーンとレナを保護する
- シャルルとレクレールが香港へ向かう
- ドミニクがナディーンの協力のもと、フランスへ帰国する
- 3月9日、シャルル一行がバンコクへ帰国する
- シャルルは警察を警戒して、偽造したパスポートなどをスダに預け、宝石を購入するよう伝える
- 3月11日、シャルルの自宅に警察の家宅捜査が入るが、シャルルは警察官を買収して脱獄を図る
- パキスタン・カラチにて、シャルルはフランス人のバイヤーと電話で話し、アジェイと合流する
- シャルルがアジェイを切り捨てる
- 5月1日、フランス・パリにて、シャルルとレクレールがシャルルの母親と会う
- ヘルマンがバンコク・ポスト誌に情報を提供し、インターポールのスティマイ中佐に証拠品や情報を提供する
- シャルルとレクレールがフランス人のバイヤーと宝石の取引を行う
- シャルルはジュリエットと再会し、再婚していることを知る
- シャルルとレクレールは国際指名手配されていることを知り、ボンベイに逃げ込む
- 6月28日、シャルルとレクレールは知り合った男女二人に薬を盛り強盗をする
- 6月29日、レクレールはシャルルが雇った男に現金を盗まれる
- ヘルマンが捜査資料をコピーする
- ヘルマンの元からアンジェラが去る
- インド・デリーにて、30人以上のドイツ観光客に薬を盛るが、薬の量を誤ったため食中毒騒ぎとなり、警察に捕まる
- シャルルが雇った男の通報でレクレールが捕まる
1976年
- ドイツでアジェイが目撃される(それ以来、行方不明)
1977年
- ヘルマンとアンジェラがタイを離れる
1984年
- レクレールが癌のため死去
1989年
- ヘルマンとアンジェラが離婚(その後、二人とも再婚する)
1997年
- 7月21日、アメリカの取材陣がパリで暮らしているシャルル・ソブラジにインタビューをする
2003年
- ネパール・カトマンズにシャルルが現れ警察に身柄を拘束される
- ヘルマンが現地の警察官に証拠を渡し逮捕する
2004年
- 11月、ネパール裁判所は、シャルルを殺害の罪で終身刑を宣告する
- ポール・シーモンズ死去
2010年
- 国連人権委員会が裁判は不当だと意見する
2014年
- ネパール裁判所は、ローラン・カリエール殺害で20年の刑期を宣告する
2020年
- 12月、シャルルはカトマンズの刑務所で服役中
まとめ
見応えがあるドラマでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
参考文献
The Serpent: How Herman Knippenberg helped bring French serial murderer Charles Sobhraj, Asia’s ‘Bikini Killer,’ to justice – CNN
https://edition.cnn.com/2021/03/13/asia/serpent-bikini-killer-sobhraj-intl-hnk-dst/index.html