こんにちは、つけものなすです。
今回は、韓国のSF映画『スペース・スウィーパーズ』について書きたいと思います。タイトルのスウィーパーズ(sweepers)は掃除人という意味です。宇宙の掃除人の物語です。
スペース・スウィーパーズ
ゴミ拾い
『スペース・スウィーパーズ』(21年)は、Netflixで配信中の韓国映画です。2020年6月に劇場公開の予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いNetflixで配信となりました。監督は『探偵ホン・ギルドン』(16年)のチョ・ソンヒ。製作費は260億ウォン(日本円でおよそ24億円)とハリウッド映画に比べて少ないですが、映像のクオリティは負けていないです。むしろ、製作費が安すぎて驚きます。本作は様々なS F映画の要素を盛り込んだ楽しい映画となっています。
舞台は2092年。地球は砂漠化と土壌の酸性化で植物が育たなくなります。そこで、宇宙開発業U T Sは、衛生軌道上に移住地を建設しました。移住地では前の地球のように人々が暮らしています。しかし、その移住地に住めるのは選ばれた少数の人間(全人類の5%のみ)でした。この格差は『エリジウム』(13年)や『アンチ・ライフ』(20年)、砂漠化となった地球は、『ブレードランナー 2049』(17年)に似ています。
U T Sの創業者であるジェイムス・サリヴァンは、医学、物理学、宇宙工学、歴史学の研究者で世界一の大富豪とも呼ばれています。年齢はなんと152歳。生命の木(スーパープラント)を使って火星を開拓し、居住地として住めるようにしました。
宇宙には廃棄された人工衛星や宇宙船などの大量のゴミが生じ、弾丸の10倍の速さで飛んでいるゴミを宇宙船に乗った清掃人が追っています。そこへ、勝利号と呼ばれる宇宙船がやって来て、ゴミの争奪戦となります。スペース・カー・チェイスの始まりです。
勝利号の操縦士で主人公のテホを演じるのは、軍艦島(17年)などに出演しているソン・ジュンギです。勝利号と呼ばれる宇宙船の乗組員で、仲間と共に宇宙のゴミ清掃をしています。冒頭では、地球に戻ったテホがUTS落下物保管所を訪れ、ある女の子の遺体を探します。テホが付けている腕時計は、探している遺体を見つけるとアラームが鳴りますが、その遺体と面会してもアラームは鳴りませんでした。女の子の遺体を探し、なぜか大金を必要としています。
勝利号の船長であるチャンを演じるのは、『リトル・フォレスト 春夏秋冬』(18年)などに出演しているキム・テリです。勝利号の船長で、酒を飲みながら宇宙船をかっ飛ばす豪快な女性です。レーザー銃を構えている姿はカッコいいです。
勝利号の機関士で元麻薬組織のボスでもあるパクを演じるのは、『エクストリーム・ジョブ』(19年)などに出演しているチン・ソンギュです。ドレッドヘアーに全身刺青と見た目は怖いですが、物凄く良い人です。子供と戯れる姿は必見です。
勝利号の乗組員でアンドロイドのバブズを演じるのは、『鳳梧洞戦闘』(19年)などに出演しているユ・ヘジンです。昔は宇宙空間で戦い、汚染地域へ侵入、暗殺などもやっていました。皮膚移植をするために大金を必要としています。宇宙船の名前である「勝利号」は、船長に頼まれて名付けました。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
宇宙船でゴミを回収しているときにUTSのアンテナを壊してしまい、ファクトリー(宇宙ゴミ管理衛生)に収集したゴミを納品しますが、アンテナを破壊した罰金でお金を受け取ることができません。ジリ貧です。
チャンの要望で大金を費やし高性能な宇宙船(勝利号)を作ったため、借金を抱えています。ごみ収集をして稼いだお金は修理代や罰金に消え、財産は豚オヤジと呼ばれる人に預けていましたが、財産をもって逃亡してしまいました。借金を抱えている高性能な宇宙船と聞くと、『スター・ウォーズ』シリーズのミレニアム・ファルコンの船長ハン・ソロを思い出します。
テホたちは廃棄された宇宙船を物色していると、ひとりの幼い女の子を見つけます。彼女はU T Sが捜索しているドロシーと呼ばれる見た目は子供の大量破壊兵器とそっくりでした。そのことを知った一同は、爆発すると思い大慌てしますが、彼女は爆発しませんでした。彼女は船内にある枯れ果てた植物に命をふきこみます。一同は、ドロシーを狙う極悪テロリストのブラックフォックスに取引をもちかけて、身代金を要求します。しかし、そのことがU TSに知れ渡ってしまいます。
商業地区のクラブで取引をしますが、UTSの兵士スペースガードに妨害されます。テホたちは爆撃をくらいますが、ドロシーの不思議な力によって守られその隙に退散します。クラブの雰囲気は『レディ・プレイヤー1』(18年)に似ていて、ニュー・オーダー「Blue Monday」の音楽が流れていたら最高でした。
テホたちは喧嘩ばかりで色々上手くいきませんが、次第にコンビネーションが取れて来ます。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年)のような展開になります。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
コンニム
火星地球化ラボの科学者カン・ヒョヌ博士の娘であるコンニムは、脳神経が破壊され先天的な病にかかり治療法がありませんでした。最終手段としてナノボットを注入してみると、ナノボットの効果により奇跡的に回復しました。さらに、コンニムはナノボット同士で交信できるようになります。
サリヴァンはこの力を利用して、植物は火星でのみ育つよう遺伝子を組み替え、火星が唯一住むことのできる惑星にしようと企み、研究者や研究データを抹消しました。
テホ
少年兵として軍に所属し、不法侵入者を処罰していました。その時に、赤ん坊を初めて見て、親を失ったスニを自分の手で育てることを決め、内緒に引き取りました。それ以来、人を殺すことができなくなります。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15年)のフィンと重なります。
命令に従わなかったテホは軍を追い出され、財産を全て奪われ途方に暮れていました。そこへ、飛行物体が墜落しテホは助かるもののスニは帰らぬ人となりました。スニの遺体は見つかっておらず、捜索するために大金を必要としていました。
チャン
UTSで英才教育を受け、学生の時に多くの武器を開発しました。19歳の時にU T S
に反発し、それ以降は海賊としてサリヴァンの暗殺を企てます。スペースガードに自ら開発した武器で攻撃されるのは何とも皮肉なことです。
サリヴァン
サリヴァンは、生まれた年に第二次世界大戦が起き、父親は戦死しました。母は物乞いしながら子供五人を育てあげました。村では大量虐殺が行われ、6歳の頃に目の前で家族が焼き殺されました。「DNAは人間の道徳心をも左右する」と考え、人格を無視して優秀なDNAをもつ者を選んでいました。壮絶な過去を歩んでいます。
スカイウォーカーの夜明け
テホたちはブラックフォックス、カン博士と合流しますが、スペースガードに襲撃されブラックフォックスとカン博士は殺されてしまいます。チャンは自爆を試みるも、サリヴァンに阻止されます。サリヴァンは地球が壊滅するところをテホたちに見せるため、殺さずに生かし、ブラックフォックスの代わりに大金を与えます。テホは目の前の大金を手に取ります。
サリヴァンが居住者に向けて演説するためホログラムで投影するところは、『ブレードランナー 2049』でも同じようなのが登場しました。
大金を手にしたテホはスニを探しに行きますが、遺留品を見ているとコンニムのことを思い出し、勝利号に戻ります。サリヴァンから貰った大金は廃棄し、勝利号の乗組員が全員揃います。この場面で『アベンジャーズ』のような音楽が流れ、レーザー銃を構えるチャンの姿は胸熱です。
コンニムを救い出そうとしますが、爆発後にナノボットを無力化するクリプトン波が放出され、コンニムは再び病にかかってしまいます。コンニムを爆発から遠ざけようとしますが、スペースガードのドローン機が迫って来ます。
窮地に立たされた一同は、緊急無線で助けを求め脱出します。ファクトリーの外を出ると、そこには多くのゴミ清掃人の宇宙船が。ここは『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(19年)を彷彿とさせ鳥肌が立ちました。敵の親玉サリヴァンが自ら戦闘機に乗って戦うのも『スター・ウォーズ』です。敵機を墜落させたときに、はしゃぐ感じも好きです。ピエールのラブソングも無駄ではありませんでした。
コンニムはピエールに託し、勝利号は爆弾を持ち出します。爆発後に放出されるクリプトン波の範囲外に到達したのを確認して、運んだ爆弾で自爆します。サリヴァンは海の藻屑となり、勝利号はコンニムの力によって守られ、テホたちは無事に生還します。
UTSの野望を阻止した清掃人たちは、損害賠償金を貰います。チャンは財産を奪って逃亡した豚オヤジを突き止め、バブズは念願の皮膚移植をして女性の姿になります。テホはコンニムの力を使って銀河を彷徨っているスニと繋がります。遺体を回収することはできませんでしたが、心を通わせることはできました。
まとめ
様々なSF映画を彷彿させる内容で面白かったです。
オリジナリティに欠けるかもしれませんが、ここまで出来るのかと驚きました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。