1991年3月3日、黒人男性であるロドニー・キングがロサンゼルス市内を運転中に警察官にスピード違反で停止を命じられたが逃亡し、現行犯逮捕された。停止の指示に従わなかったので、ロサンゼルス市内の警察官4人が暴行を加えた。暴行を加えた警察官4人は過剰捜査の疑いで起訴されるが無罪の判決を受ける。この事件をきっかけに抗議運動が広がり、一部は暴動へと発展。警察署や裁判所が襲撃される事態にまでなった。
2020年5月25日、黒人男性であるジョージ・フロイドはミネソタ州ミネアポリスで、警察官に容疑者として拘束中に膝で首を押さえつけられ殺害された。
もし、ロドニー・キングやジョージ・フロイドが白人だったらこの事件は起きていたのだろうか。これらの事件を予言した映画がある。1989年に公開された『ドゥ・ザ・ライト・シング』だ(日本公開は1990年)。
ドゥ・ザ・ライト・シング
今回紹介するのは1989年に公開された『ドゥ・ザ・ライト・シング』です。監督、主演は『ブラック・クランズマン』のスパイク・リー。ネタバレせずに紹介するので安心してください。
ブルックリン、その年一番の猛暑の日。黒人街にあるピザ屋でいさかいが起こった。ある者が店内に黒人スターの写真が一枚も貼られていないことで憤慨。経営者のイタリア人はそれを相手にしなかったが、この一件がきっかけとなり、やがて事件が。その日暮らしのアルバイター、飲んだくれの哲人、ピザ屋の主人の息子たち、韓国人のカップル、といった面々を巻き込んで、ついには暴動へと発展していく
3つのおすすめポイントと共に紹介したいと思います。
- この映画には元になった事件がある
- 黒人殺害事件を予言した
- 誰が「善」で、誰が「悪」か
1.この映画には元になった事件がある
この映画には元になった事件があります。
1986年12月のとある夜、黒人男性4人がハワードビーチを車で通りかかっている時に車が故障してしまった。1人が車内に戻り、3人が近くのピザ屋に電話をかけに向かうところ、白人10人前後に襲われ、1人は逃げるために車道を飛び出し車に轢かれ死亡した。
ハワードビーチで起こった事件から今回の暴動の舞台となるピザ屋にしているのかと思います。襲撃した白人10人はイタリア系という情報もあり、サルはイタリア系にしたのかと思います。
2.黒人殺害事件を予言した
スパイク・リー監督は、映画のような事が起こると思い警鐘を鳴らすためこの映画を作ったと思われます。恐ろしいことに、冒頭でも述べたようにこの予言は的中しました。
公開から2年後、1991年に黒人男性であるロドニー・キングが警察官に拘束中に暴行されました。暴行した白人警察官は起訴されるも無罪の判決を受けました。暴行事件をきっかけに抗議運動が広がり一部は暴動へと発展しました。
2020年に起こった黒人殺害事件は黒人男性が警察官に拘束中に膝で首を押さえつけられ殺害されました。まさに、映画と同じ事が現実でも起こってしまったのです。
3.誰が「善」で、誰が「悪」か
誰が「善」なのか、誰が「悪」なのか、映画を見ていくと分からなくなってきます。なぜなら、登場人物全員に良い所があり、悪い所があるように作られているからです。
これ以上はネタバレになってしまうので詳しくは書けないのですが、タイトルの「do the right thing」(正しいことをしろ)している人は誰なのか、そういった目線で見ると面白いです。
感想
スパイク・リーが予言したこともすごいですが、人間が想像したディストピアが現実になっていく様子が恐ろしいです。