【ネタバレ感想】映画『えんとつ町のプペル』は「革命のファンファーレ」である

2020年に公開された『えんとつ町のプペル』について書きました。物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。ネガティブな感想が多いので大好きな人は見ないでください。

 

ボーイ・ミーツ・ボーイ

ハロウィンパーティで盛り上がる中、ゴミ捨て場のゴミに魂が宿り誕生したゴミ人間のプペル。シャバに出たプペルはハロウィンの仮装をしている子供たちに連れられHYDEの「HALLOWEEN PARTY -プペル Ver.-」に合わせて踊り出します。プペルはどこで踊りを覚えたのか分かりませんが、我々観客は日本人が大好きなミュージカル風な踊りに魅了されます。

仮装していると勘違いされたゴミ人間は危険人物だとみなされ指名手配されます。ピンチのゴミ人間。窮地を救ってくれたのがえんとつ掃除屋で働く少年ルビッチです。

少年ルビッチは、ハロウィンパーティに参加する友達もいなくて、掃除仲間から「友達いないだろ」とハッキリ言われてしまうほど友達がいません。

厚い煙に覆われた「えんとつ町」では、「空を見ること」、「夢を信じること」、「真実を知ること」を禁じています。ルビッチの父親は海の怪物に食べられたと噂され、病気の母親は車椅子で生活しており、ルビッチは家計を支えるため働いています。

ドン底にいるルビッチですが、父親が紙芝居で話してくれた「星」を信じ、「星」を見ることを夢見ています。そんな夢見る少年ルビッチとゴミ人間プペルのボーイミーツボーイの始まりです。

プペルを助けるシーンは、横スクロールアクション風に移動したり大岩から逃げたりトロッコに乗ったりテレビゲームみたいな展開でした。ゲームのリモコンを使ってルビッチを動かしたい欲に駆られました。プレイステーションのゲームとかでありそう。

 

ギャグ…

道中に会う鉱山泥棒のおしゃべりスコップは、ロマンを求め冒険をしています。とにかくおしゃべりで、聞いてもないことを喋り続けてルビッチとプペルは呆れます。ここは観客が笑うところなのでしょうが、全く笑えませんでした。延々と話を続けるだけなので、途中からスコップが藤森慎吾となり、「うるさいチャラ男」と心の中で思った人は少なくないと思います。

冒頭で吉本興業配給のテロップが出ていたので笑いを期待しましたが空回りしていました。たまたまだと思うのですが、僕が見に行った劇場ではそれなりの人数入っていましたが、誰一人笑っていませんでした。

『えんとつ町』に限らず他の日本映画、アニメにも言えることですが、観客は物語に見入っていい感じの雰囲気で笑いたいなと思うのですが、ギャグシーンが無かったりあったとしてもすべっていることが多いです。

えんとつ掃除屋のアイパッチが、指名手配されているプペルを匿うシーンで最後に「実はお化けが嫌いなんだ」と言い足がガクガク震えているシーンがあるのですが笑えませんでした。

唯一笑ったのは、プペルは洗っても臭くなるのでルビッチがたまらず「何でそんな臭いんだ」と言ってしまうシーンはストレートすぎて吹き出しそうになりました。臭い理由も後に分かりますが。

 

ハンドシェイク

ルビッチは初めて友達ができて、海外の映画でよく見るハイタッチみたいな感じで手をパンパンイエーイのハンドシェイクをするシーンがあるのですが、プペルはハンドシェイクをどこで覚えたのでしょうか。プペルは友達という言葉すら知らなかったのでハンドシェイクを知っているとは思えません。友達のいないルビッチがハンドシェイクに憧れていて、プペルに「嬉しい時はハンドシェイクをするんだよ」と言ってやり方を教えるシーンがあったら良かったのに。『ターミネーター2』でジョン・コナーがT-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)にハイタッチを教えるみたいな。

初めてルビッチに友達ができたことを知った母親のローラが、「友達(プペル)の分も夕飯の用意しとくね」(セリフは確かではない)と言います。え?プペルってご飯どうするんだろうと誰もが疑問に思うのですが、夕飯のシーンは存在せず次の展開にいきます。夕飯どうしたんだろ…。

ルビッチとプペルが煙突を登るシーンで、怖がりのルビッチの足はガクガク震えています。それを見たプペルは「怖いのですか?」と聞きます。プペルは「友達」という言葉も知らなかったので、人間は恐怖に怯えると足が震えるということを知らないのでは。「何で足が震えているのですか?」にした方が、プペルは人間という生き物を知りだんだん分かり合っていく展開とかできたのに。

 

テーマ

物語後半に近付くと、『えんとつ町』のテーマでもある「誰に何と言われようとも夢を追うこと」についての展開となっていきます。ルビッチの夢である星を見ることは、町の人みんなから馬鹿にされ、星を探していることを知られると町を統治する中央銀行に追放されてしまいます。

製作総指揮、脚本、原作を担当している西野亮廣(以下、ニシサック)は、『えんとつ町』の絵本を描き始めると「お笑い芸人にできる訳ないだろ」と周囲の人や日本中から叩かれたそうです。星を探しているルビッチは、前例のない未知の挑戦をしているニシサックのことです。前例のないことに挑戦する人は大体叩かれますね。ニシサックを叩いた人は、顔も見せずにぶつぶつ呟いている異端審問官と重なります。

 

個人的な映画

星を探すルビッチはスコップの協力のもと町の煙を爆破しようとします。それを止めようとする中央銀行。このシーンは、無謀な挑戦をするニシサックが日本中から叩かれている状況と怖いくらい一致します。

町の人は夢を追うルビッチのことを馬鹿にしていましたが、一生懸命なルビッチの姿を見て感動し助けます。これは、ニシサックが自ら旗を振り「クラウドファンディング」を使って資金を集めたのと重なります。この物語は、「革命のファンファーレ」です。

少年ジャンプを読んでいるかのような胸熱な展開ですが、メッセージが強すぎて怯んでしまいます。町の人がルビッチを助けるシーンは良かったのですが、ルビッチの父親が「夢を追うことは」みたいな話が始まり、少しずつですがうんざりしてきました。『えんとつ町』全体に言えることなのですが、スクリーンを見れば分かるのにわざわざ説明するシーンが多く苦痛に感じました。せっかくのアニメーションなのに。後半は、ニシサックに説教されている気分でした。

『えんとつ町』は、ニシサックのオンラインサロンの会員の人に向けて作った映画になっていると思います。「俺たちのやってきたことは間違っていなかった」とメッセージを発信しています。壮大な世界観ですが、超個人的な映画です。メッセージをもう少し隠して欲しかったな。

なぜ、僕がオンラインサロンに入らないのか分かった気がします。

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