【ネタバレ感想】一時停止しながら見られるこの時代に『ソウルフル・ワールド』

ディズニー&ピクサー新作『ソウルフル・ワールド』本予告編
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今回は、Disney+で配信されている『ソウルフル・ワールド』について書きたいと思います。ピクサー恒例の隠しミッキー要素があるので、ネット配信ならではの一時停止をしながら見ると面白いです。

 

ソウルフル・ワールド

ジャズピアニスト

シンデレラ城を背景に下手くそな演奏で始まる「ソウルフル・ワールド」。主人公のアフリカ系アメリカ人・ジョー・ガードナーは、中学校の非常勤勤務の音楽教師です(下手くそな演奏は生徒たちの)。

先生としての才が認められ正規採用されることになりますが、ジョーは喜ばず複雑な気持ちになります。ジョーにはジャズ・ピアニストになる夢がありました。

 

カタカナが気になる

ジョーは子供の頃に父親に連れて行かれジャズクラブへ行きました。そこで聞いたジャズに衝撃を受けて音楽の世界にのめり込みます。

仕立屋で働くジョーの母親は、夢を追うことについては否定的で定職に就く事を望みます。何も逆らえないジョーのもとに一本の電話が。

仕立屋の看板は「オーダーメイド&寸法見直し」とカタカナ表記されているのが気になります。他の店は英語表記ですが、仕立屋だけなぜかカタカナです。ディズニーや海外のアニメでありがちなのですが、分かりやすくするため英語を日本語にする習慣があります。

そこに労力を注ぎ込む必要があるのかといささか疑問に思いますが。字幕で出せば解決する話なのに。日本人にとって一番のコンプレックスは日本語です。

 

突然

電話の相手は、元教え子のカーリー。カーリーは超有名なドロシア・ウィリアムズのバンドメンバーで、ジョーにピアノをやってほしいとお願いします。二つ返事で引き受けるジョーは、ドロシアのバンドメンバーとして加わることになります。

人生最大の転機が訪れたジョーでしたが、喜びのあまり不注意でマンホールに落ちてしまいます。気が付くとそこは、宇宙の遥か彼方の死後の世界でした。

 

遥か彼方

突然の事態にジョーは現状を受け止め切れず、迫りくるあの世から逃げるため必死にもがき、さらに下へと落下します。落ちた先は、生まれる前の世界でした。ジョーは死んでおらず肉体は保留状態となり彷徨っています。

生まれる前の世界では、ジェリーと呼ばれるカウンセラーが魂に個性を与え、胸につけているバッチの枠が埋まるとバッチが通行書に変わり地上へと降りることができます。

その事を知ったジョーは地上へ降りようと試みますが、通行者がないジョーは何度やっても地上へは行けず、スタート地点に戻されます。ここは、スーパーマリオのゲームみたいで面白いです。

 

きらめき

バッジの枠には「きらめき」(spark)というものがあり、「きらめき」を与えるには「万物の殿堂」でキッザニアのように職業体験させるか、「自分の殿堂」でメンターの人生を見せる方法があります。

あの世に行かない魂はメンター(指導者)として、きらめきを与える手伝いをします。

ジョーは「きらめき」を生きる目的だと思い、自身の生きる目的であるピアノを魂に聞かせてバッチの枠を埋め通行書に変わったらバッチを奪い地上へ降りようと企みます。

 

マッチング

セミナーと呼ばれる場所では、魂とメンターをマッチングさせ、きらめきを与えています。ジョーのマッチング相手は魂番号22番(以下、22)です。魂は1000億以上存在し番号は連番に振られているので22は長い時間きらめきが見つかっていないことを表しています。

22は手のかかる魂で、エイブラハム・リンカーンやマザー・テレサと組んでも「きらめき」を見つけることができませんでした。ジョーは22のバッチを通行書に変えるためピアノを聞かせたり絵を描いたりしますが、一行にきらめきません。

「万物の殿堂」に看板が見えるのですが、そこにはピクサー恒例のA113の文字が見えます(再生時間:26:47)。

A113はカリフォルニア芸術大学の教室番号のことで、多くの生徒がA113の教室でアニメーションについて学びました。A113はクリエイター同士のジョークやエールといったものです。粋な計らいです。

同じく「万物の殿堂」では、『トイ・ストーリー』でお馴染みのピザプラネットが映っています。他にもピクサーのロゴを毎度踏み倒すランプが登場します(26:55)。

 

Catch-22

「きらめき」が手に入らない22の部屋の壁には多くのメンターの名前が貼られています。その中にはパブロ・ピカソやレオナルド・ダ・ヴィンチ、キング牧師の名前も。

22という数字は「キャッチ=22」のどうしようもできない状況というスラングです。

キャッチ=22は、1961年にジョセフ・ヘラーが発表したアメリカの小説『Catch-22』からきています。

第二次世界大戦下、アメリカ空軍爆撃隊に所属するヨッサリアンは、戦争に疲弊し除隊を願うが精神障害でなければ認められません。自分が精神障害だと言えるのは、まだ精神障害ではないとみなされてしまいます。つまり、永遠に除隊することができないのです。

 

ニューヨーク・ニックス

22は肉体と精神の間の世界「ゾーン」に入った魂に悪戯をしています。まさに全集中の世界です。舞台俳優や彫り師、何十年もバスケットボールチームに悪戯しています。

22が悪戯しているバスケットボールチームは、実際にあるNBAのニューヨーク・ニックスのことです。

ニックスは、90年代は常に優勝を争い強豪チームでしたが、最近では低迷しています。YouTubeに「ニューヨークニックス ~崩壊の道~」が挙がっているくらいです。

ニックスは22の悪戯で低迷していたというジョークになっています。粋なジョークです。

 

迷える魂

ジョーと22は地上へ戻る手段を知っているある人を探しますが、道中で「運用、運用」と呟く迷子の魂に襲われます。

そこへ、ボブ・ディランの「Subterranean Homesick Blues」を大音量で流しながら向かってくる船が助けてくれます。助けてくれたのは、探していたムーンウィンドでした。

迷子の魂は不安や強迫観念に取り憑かれ人生を見失った魂のことを指します。ジョーとビリーを襲った迷子の魂は、ヘッドファンドマネージャーの魂で、精神的に追い詰められてました。

ムーンウィンド率いる国境なき神秘主義団は、謎の音楽と踊りで魂を解放します。ムーンウィンドもテトリスが原因で迷える魂になったことがあるそうで。何事も没頭しすぎてはいけません。ちなみに僕はモンハンです。

 

君の名は。

ムーンウィンドの協力のもとジョーは地上へ帰ることができましたが、アクシデントで22も一緒に降りてしまい、ジョーの体は22の魂、セラピー猫の体はジョーの魂が宿ることになります。ある意味入れ替わり劇の始まりです。

ジョーと22は病院を抜け出し、地上のムーンウィンドを探します。地上の世界に怯えている22にピザを運ぶシーンがあるのですが、運ぶ道中にネズミと遭遇し壁にはA113の落書きがあります(41:08)。

 

2319

ジョーはライブに出るためスーツをビシッとキメはしゃいでいるとズボンのお尻が破れてしまいます。

母親の仕立屋で直してもらうため地下鉄へ行き、2319の番号が記された電車に乗ります(59:41)。

2319は、『モンスターズ・インク』で緊急事態の時に発令する暗号コードで、人間の靴下を発見した時に発令しています。『モンスターズ・インク』は、ピート・ドクターの監督デビュー作です。

地下鉄のホームでストリートミュージシャンがいますが、日本語吹き替えだとドルチェ&ガッバーナの香水のせいにした瑛人が歌っています。

 

生きる目的

ジョーとセラピー猫は、連れ戻しに来たジェリーに捕まり、魂の世界に引き戻されます。22のきらめきを見つけることができなかったと思っていましたが、バッチは通行書に変わっていました。22の生きる目的とは何だったのかジェリーに聞くと、「きらめきは生きる目的ではない」と告げられます。

ジョーは、「生きる目的は音楽」だと思い、22の通行書を使って地上へ戻ります。ドロシアと演奏できることになったジョーは、「俺の人生はこれからだ」と意気込みます。

ドロシアのバンドメンバー、そしてジャズピアニストとして会場を沸かせ大成功します。ところが、ジョーは夢を叶えたものの手応えを感じることができませんでした。

 

生きるのに生きる意味なんて必要なかった

ピアノを弾いてゾーンに入り魂となったジョーは、迷える魂になってしまった22にこう言います。「生きる準備ができた時、きらめきは埋まる」。闇に包まれていた22は元の姿に戻り、ジョーは通行書を生きる準備ができた22に渡し地上へと送り届けます。

これはやる必要があるのか、やる意味があるのかと色々考えてしまう昨今。色々な意味を求めると最終的に行き着くのが生きる意味です。生きる意味を考えると答えが見つからず、無限ループに陥って22と同じ状況になります。

ジョーが最後に「一瞬、一瞬を大切に生きる」と言いますが、これをやるのは並大抵なことではありません。人は貪欲だから、ふと生きる意味や目的を追求してしまいます。「Catch-22」のジレンマに陥ってしまいます。

そしたらまた『ソウルフル・ワールド』を見てジョーや22を思い出せばいいのです。『ソウルフル・ワールド』は、心が病んでしまった時に寄り添える柱になってくれます。

人生にも一時停止が必要です(キマッた)。

 

参考文献

ピクサー映画に「A113」というコードが埋め込まれているのはなぜ?

https://www.huffingtonpost.jp/2014/05/04/pixar-movies-code_n_5264704.html

 

Soul: All Easter Eggs & Secret Pixar References Explained

https://screenrant.com/pixar-soul-movie-easter-eggs-references-explained/

 

ニューヨークニックス ~崩壊の道~

https://www.youtube.com/watch?v=qdLoqpjF6UA

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