【ネタバレ感想】『Swallow/スワロウ』耳の中から米粒が出てきたのを思い出した

今回は、ビー玉や画鋲を飲み込んでしまう女性を描いた映画『Swallow/スワロウ』について感想を書きたいと思います。Swallowは飲み込むという意味です。

後半は物語の結末にも触れているので、ネタバレ注意です。

 

Swallow/スワロウ

異物を飲み込む女性

大企業の御曹司であるリッチーを夫にもつ主人公のハンターは、誰もが羨む生活をしていますが、リッチーは仕事や自分の美容のことしか考えておらず、義父母には意地悪をされ、抑圧された環境で孤独に暮らしていました。

そんなハンターが第一子を授かるのですが、夫や義父母のように喜べずにいました。

窮屈でいるハンターは、ビー玉を手に取り興味本位で口に入れ飲み込みます。ハンターは痛いながらも満足そうに笑みを浮かべます。

飲み込むことが快感となり、次第に飲み込む異物は大きくなっていきます…

つけものなす

リッチーは仕事や美容のことしか考えておらず、ハンターに関心をもっていません。ハンターよりも自分の歯の方が大事です。

ハンターが話し始めると義父が話を遮り、義母は「息子と結婚できてラッキーだったわね」と嫌味を言います。姑は怖いですね。

羊の群れのおもちゃを見ているハンターは印象的でした。ハンターは羊でリッキーは狼です。

大金持ちなのにコード付きの大きい掃除機でハンターが掃除している場面を見ると、リッチーは自分のことにしか金を使わないんだとよく分かります。今はコードレスで軽い掃除機があるのに。

ヘイリー・ベネット

ハンター役のヘイリー・ベネットは、『ラブソングができるまで』(07年)で長編映画デビューしました。最近だと『悪魔はいつもそこに』(20年)や『ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌』(20年)に出演しています。どっちもNetflixで見られます。

 

異食症

異物を飲み込むのが快感となったハンターは、ビー玉以外にも画鋲や小さいアクセサリー、電池までも飲み込むようになります。

異物を飲み込んでいることが判明し緊急手術を受ける事になるハンターは、医者から異食症と診断されます。

つけものなす

飲み込んだ異物は消化されず排便として出てくるのですが、排便から異物を取り出して我が子のように大切に飾ります。ハンターの机には飲み込んだ異物が綺麗に並んでいます。

ハンターが異物を飲み込む場面では、「飲んじゃダメだ!」と心の中で応援実況しながら見てました。画鋲を飲み込んだ時は「いてぇー」と心の中で叫びました。『クワイエット・プレイス』(18年)の生足で釘を踏んだ時以来です。

異食症とは

異食症は実際にある病気のことで、食べ物ではない物を食べてしまう一種の摂食障害です。異食症の中には、氷を大量に食べてしまう氷食症や土を食べる土食症 、自分の体毛を食べる食毛症などがあります。

強い精神的ストレスが原因で症状が起こるそうです。

 

透明人間とRAW

抑圧された環境に暮らす主人公の女性で思い出すのが、リー・ワネル監督の『透明人間』(20年)です。夫に束縛されている主人公のセシリアが夫から逃げ出す物語で、豪邸に孤独に暮らす様子や結末がすごい似ています。

食べちゃいけないものを食べてしまうで思い出すのが、『RAW〜少女のめざめ〜』(17年)です。ベジタリアンの少女が獣医科大学に入学して、うさぎの生の腎臓を食べたり、全身に血を浴びせられる内に自分の本性に気づいていくという物語で、映画館で失神者が出たほどの強烈なシーンがあるのですが、飲み込む場面はそのシーンに似ています。

 

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

 

監視

仕事が忙しいリッキーは、ハンターが異物を飲み込まないように監視するためヘルパーであるルアイを雇い昼間の行動を監視します。それでもハンターは監視の目を盗み異物を飲み込みます。

つけものなす

ハンターがトイレに行くたびに身体検査する場面は笑いました。どんだけ監視するんだよ…。

 

ハンターの過去

ハンターは母親がレイプされた時に生まれた子供であることをカウンセラーに明かします。実の父親とは会ったことがありません。

誰にも言わないという約束でしたが、カウンセラーは命の危険に関わることだと判断しリッキーに伝えます。

事実を知ったリッキーは動揺し、逃げるようにスポーツジムへ向かいます。

つけものなす

衝撃の事実を知ったリッキーは、ハンターを心配するかと思いきや「何が欲しい?ネックレス?ブレスレット」と物で解決しようとします。

 

抑圧

逃げ場のないハンターは監視の目を盗み小さいドライバーを飲み込み倒れてしまいます。それに気づいたルアイは急いで救急車を呼び緊急手術を受けます。

リッキーはハンターを精神病院に入れようとしますが、無理矢理に病院に入れられそうになったハンターは、ルアイの助けを借りてリッキーの元から逃げ出します。

居場所のないハンターは、母親に助けを求めるも断られ実の父親であるウィリアムに会いに行きます。

つけものなす

承諾書にサインする場面で義父が「サインしなかったら離婚だ」とハッキリひどいことを言うのは思わず笑いました。今までは遠回しに言ってたのにこんなにはっきり言うとは。リッキーや義父母はハンターのことなど何も考えず、お腹にいる赤ちゃんのことだけ考えている最低野郎です。

ハンターの母親はキリスト教徒だっため中絶をせず出産をしました。助けを母親に求めるも断られる様子から、レイプの時に生まれたハンターのことを拒否しているように感じました。

 

Anthem

ハンターは出所した実の父親のウィリアムと話し「お前は俺とは違う、お前はお前だ」と言われ、ハンターの心は吹っ切れます。

中絶することを決めたハンターは病院に行って薬を処方してもらいます。

ショッピングモールの公衆トイレに向かうハンター。用を済ませた便器の中は真っ赤な血で染まっていました。

つけものなす

ショッキングな終わり方ですが、色んな抑圧にがんじがらめにされているハンターが解放される場面はスカッとします。

最後に流れるAlana Yorkeの「Anthem」は、文字通りハンターの応援歌になっていて歌詞やPVを見ると色々重なる部分があります。

 

スワロウの着想

監督したカーロ・ミラベラ=デイヴィスは、祖母が脅迫障害を患い手洗いを繰り返すようになりました。祖母は1日に4個の石鹸、一週間に12本の消毒用のアルコールを使っていたそうです。

当時は1950年代で精神病の症状を抑える治療法がなかったため、精神病と診断された人は精神病院に入れられロボトミー手術を受けました。前頭葉白質を切除したので意思がなくなりました。

監督の祖母の実体験をもとに本作が作られたことが分かります。

つけものなす

リッキーや義父母がやっていることは1950年代にやってきたことと変わらないので恐ろしいです。誰一人としてハンターの話を聞こうとせず真摯に向き合おうとしませんでした。

 

まとめ

強烈な描写が多かったですが、とても面白かったです。

僕が幼い頃に耳の中に水とか入れて頭を振るとゴロゴロいうのにハマっていた時期があり、ある日ゴロゴロが鳴り止まない時があって耳鼻科に行って取ってもらうと、乾燥したカピカピの米粒が出てきたのを思い出しました。なぜ入れたのかは分かりませんが笑

あと、小学生の頃に学校の給食で牛乳を飲むストローの紙の袋を食べている人が何人かいたのを思い出しました。あれは一体何だったのか。

ちょっと懐かしい気持ちになりました。

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