【ネタバレ感想】『花束みたいな恋をした』サブカルに浸る男女の恋愛模様の行く末

こんにちは、つけものなすです。

今回は、サブカルに浸る男女の恋愛模様を描いた映画『花束みたいな恋をした』を紹介したいと思います。

 

花束みたいな恋をした

押井守

『花束みたいな恋をした』(21年)は、サブカルに浸る男女の恋愛を描いた日本の映画です。監督を努めたのは、『カルテット』(17年)や『罪の声』(20年)などの土井裕泰。脚本を努めたのは、『東京ラブストーリー』(91年)など多くの話題作を生み出している坂元裕二です。『カルテット』の脚本も担当しているので、土井監督とは二度目のタッグです。

終電を逃した大学生の山音麦と八谷絹は、同じく終電を逃したサラリーマンとその女性と一緒に近くの店で時間をつぶすことにします。4人は店に入り席に着くと、麦は『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(95年)の監督をした押井守が客として来店していることに気付きます。押井守を発見したことを3人に伝えますが、ピンときていません。

その帰り道に麦がひとりで歩いていると後ろから絹がやって来て、実は押井守を見つけて興奮していたことを麦に伝えます。そこから2人は意気投合し、居酒屋で好きな本や音楽、映画などサブカルを語り合い、何度か会う内に2人は恋人同士の関係になり同棲を始めます。

大学生の山音麦を演じるのは、『糸』(20年)や『浅田家!』(20年)などに出演している菅田将暉です。

大学生の八谷絹を演じるのは、『映画 ビリギャル』(15年)や『フォルトゥナの瞳』(19年)などに出演している有村架純です。土井監督とは『ビリギャル』以来のタッグです。絹は押井守を見つけても表に出さなかったので、普段はサブカルを語ることがほとんどないのかと思います。

押井守をきっかけに付き合い始めるという羨ましい展開の本作は、2015年から2020年までの5年間を描く物語になっています。特に何かが起こる訳でもなく物語は淡々と進み、時代と共に移り変わる恋愛模様や周りのカルチャーが描かれています。山﨑賢人と松岡茉優が出演している『劇場』(20年)に少し似ています。押井守は本人が主演しているので驚きました。何で出演したのだろうか(笑)。

 

固有名詞のシャワー

サブカル好きな麦と絹の会話は聞いていて面白いです。

お笑い芸人の天竺鼠、今村夏子の小説「ピクニック」、TBSラジオ「菊地成孔の粋な夜電波」、野田サトルの漫画「ゴールデンカムイ」、きのこ帝国の「クロノスタシス」、「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」など数え切れないほどの固有名詞が出てきます。

固有名詞に関しては、物語に影響しないので知らなくても問題ないです。知っていたら「あれのことね」くらいの感じで、見た後に「これのことか!」という具合で大丈夫です。

2019年に発売された映画秘宝(11月号)で、Netflix『愛なき森で叫べ』(19年)の園子温監督がインタビューで「日本映画ってさ、生々しい本物の固有名詞を出さないものがあまりに多いじゃない。僕はそれが嫌で。」と答えて以来、何で日本映画には固有名詞が少ないのか疑問に思いながら見ていたので、本作を見た後はフラストレーションから解放されたような気持ちになりました。

ただ、登場する固有名詞に特に意味はなく、固有名詞のシャワーを浴びるだけなので、少しは意味を持たせても良かったかなと思います。

坂元裕二は若者の流行を見知らぬ人のインスタや、友達の友達に関する又聞きするなどして本作の物語を作り上げていったそうです。まるでストーカーのような情報収集の仕方ですが、現代的で面白いです。好きな固有名詞を出している訳でもないそうです。大根仁監督とはまた違うアプローチですね。

麦はGoogleのストリートビューに自分が映っていることを見つけて喜ぶ場面があります。映画やドラマにGoogleを出すには許可を得るのは難しいらしいですが、日本のGoogleの担当者が坂元裕二の大ファンということで許可が降りたそうです。他の映画とかドラマを見ると、Googleをもじった変な名前が多いですが、本作ではGoogleです。すごい…。

僕も昔、Googleのストリートビューで住んでいる家を探したら、自分の下着が干してあるのが映っていただけで、周りの人に教えるほど喜んでいました(笑)。

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

出会った頃は大学生で楽しいラブラブな生活をしていますが、時が流れるにつれて社会と接していかなければならなくなりません。

麦は絵を描く仕事に就くために安月給ながらも絵を描くバイトをしていましたが、親からの仕送りが途絶え、生活するために就職することになります。麦と絹はそれぞれ就職活動を始めます。

麦は仕事に追われる日々になり、絵を描くこともサブカルに浸ることもしなくなります。絹が一人でゲームやNetflixを見ていると嫌気がさして、些細なことで喧嘩をします。

絹は面白かった本を薦めますが、仕事に追われている麦は「読む気になれないんだ。パズドラやっているだけで精一杯だ」と言います。仕事が忙しくなると、長時間費やす本や映画を見るのが嫌になり、頭を使わないスマホのゲームしかやらなくなります。あるあるすぎて痛いほど共感しました。

麦の読む本にも変化が。社会人になると前田裕二の「人生の勝算」などビジネス書を読み始めます。僕自身も学生の頃は映画に没頭していましたが、社会人になり人に薦められて堀江貴文の「多動力」や西野亮廣の「革命のファンファーレ現代のお金と広告」を読み始めました。昔の自分を見ているようで怖いくらい共感しました。

普段仲の良い友達がつまらなくなった時は、彼女ができたかビジネス書を読み始めた時です。

最後、二人は別れてしまいますが悲しい終わり方には見えませんでした。感動して涙を流すよりも、前に進もうという励まされた気持ちになりました。

正直、日本の恋愛映画は苦手でしたが、脚本によってはこんなに面白くできるのかと驚きました。見た後は、一冊の本を読み終えたような達成感と満足感に包まれました。

サブカルを摂取しなくなってから、2人の会話はつまらなくなるので、サブカルは大事ですね(笑)。

 

参考文献

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