日本の透明人間はいい奴だった

今回紹介したい映画は、日本の「透明人間」です。

1933年に公開されたジェイムズ・ホエール監督の映画「透明人間」は、世界征服を企む透明人間の話でした。

そんな暴力的な透明人間とは違い、日本の透明人間は良い奴でした。

東宝が製作した1954年公開の日本版「透明人間」。監督は、「幽霊男」や「ゴジラの逆襲」などの小田基義(おだもとよし)。撮影、特技指導には円谷英二。出演者には、河津清三郎、三條美紀、土屋嘉男など。

自動車を運転中の男が人を轢いたと思い外を確認するが誰もいない。しばらくすると、車の下から血が垂れているのに気付き、人の姿が現れる。近くには遺書が残されており、その男の正体は透明人間だった。旧日本軍の特殊部隊・透明人間特攻隊の生き残りであることが分かり、もう1人透明人間がいることが判明。その後、透明人間と名乗る集団が銀行や宝石店を襲う事件が起きる…。

ここからは、ネタバレありで書いているので本編を見ていない人は注意してください。

 

透明人間の設定

自殺した透明人間である秋田晴夫の遺書には、こう書かれています。

友よ、私はもうこれ以上生きてはいけない。姿なき部隊として透明人間にされた君と僕。今思えば、透明特攻隊という善名に踊らされていた自分達が何と馬鹿だっただろう。生命のみあって姿なき人間にされた君と僕。もうこの世の中では何も通用しないのだ。君は生き続けようと言った。然し僕はもうだめだ。君は希望がある。どうか君だけは強く生きてくれ。秋田晴夫。

透明人間の苦悩が書かれていました。その中で、透明人間は特攻隊に所属していたことが分かります。その生き残りが秋田晴夫と南條です。

戦争に勝つための目的で作られ、放射光線の作用によるものだと考えられています。透明特攻隊はサイパン島で玉砕されました。

映画の中では詳しい説明はありませんでしたが、Wikipediaに詳しく書いてありました。

戦時中、西崎博士は、サイクロトロンにより「リンの放射性同位体に対する陽子の連続衝撃実験」を行った。その時、偶然発見した粒子「ホストン」を吸収することで、可視光線を完全に透過するようになった人間である(劇中では、詳しい資料は残っていないと語られている)。太平洋戦争末期、透明人間で編成される特攻隊がサイパン島で玉砕したとされていたが、実はそのうちの2人が生き残っていた。ホストンの効果は元に戻すことができないため、透明人間化した者は死なないかぎり目視できない(ただし、出血後の血液は実体化する)。南條が常にフェイスペインティングをしているのは、そのためである。

引用元:透明人間(1954年の映画)

「ホストン」と呼ばれる粒子を吸収して透明人間になりました。元の姿に戻ることができません。透明人間の正体は、軍隊の人体実験で作られた人間でした。

 

1933年版との違い

透明人間の元祖は、1933年に公開されたジェイムズ・ホエール監督の「透明人間」です。ここからは、1933年版のネタバレも含んでいるので注意してください。

主人公のジャックが、モノケインと呼ばれる新薬の実験中に、その薬に透明化する作用があることに気付く。5年前から密かに毎晩夜明けまで研究を行い、何度も実験し失敗を繰り返し、ついに自分自身を透明化させることに成功した。

しかし、モノケインには精神錯乱という副作用があり、ジャックは暴力的になり世界征服を企むようになる。警察官を殺害したり、列車を崖から墜落させたりと多くの命を奪った。

1933年の「透明人間」がいかに残虐だったかが分かります。警察官を殺害したり、列車を崖から墜落させるシーンは今見ても恐怖を感じます。日本版では「透明人間」は善人な心をもち、周りの人たちを助けるため能力を使います。

新薬の実験中に副作用があることを知らずに服用してしまい透明人間になったのと比べると、日本版の方が残酷な気がします。戦争に勝つために人体実験を受け、その後誰も助けてくれないところが切ないです。

死んだ後に透明人間の姿が現れる描写は同じでした。それぞれ包帯男、ピエロの格好をしていましたが、素顔を見せるのは最後の亡くなるシーンです。透明人間の一番の切なさは、主人公なのに最後の最後でしか素顔を出せないところにあると思います。

 

感想

率直な感想としては、1933年版より日本版の方が好きです。主人公の南條に感情移入しやすく、透明人間を追う新聞記者やキャバレーで働く女性、盲目の少女など魅力にあふれるキャラクターが多く人間ドラマに深みを感じます。これを70分という短い時間で表現してるのがすごいです。

最後、盲目の少女にプレゼントするはずの『金髪のジェニー』のオルゴールが流れ、物語は終わります。透明人間の最期は、姿を現し、恋した女性に看取ってもらいます。透明人間は良い奴です。

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