こんにちは、つけものなすです。
今回は、当て逃げした夫婦が雪山でキャンプしている時に何者かに襲われるスウェーデン映画『赤い光点』について書きたいと思います。
赤い光点
黄色
『赤い光点』(21年)は、Netflixオリジナルのスウェーデン映画です。監督は『マスター・プラン』(14年)のアラン・ダルボルグ。
大学を卒業したダビッドは、グダグダな公開プロポーズを行い、彼女のナジャと結婚します。1年半後、洗濯機のフタが閉まらなくて怒鳴るナジャ、家事の手伝いもせずにゲーム(バトルフィールド)に夢中のダビッド。幸せな生活はいつまでも続きませんでした。
ナジャは共用エリアで洗濯機を動かし、結婚指輪を眺めて楽しかった過去を思い出すと涙を流します。そこに、隣人のトーマスがやって来ます。トーマスとは自宅に招待して一緒に食事をするほど仲のよい間柄です。
ナジャはトーマスと話していると、突然吐き気を催します。彼女は妊娠していました。だらしないダビッドが父親になれるのか不安に思い、妊娠したことを話せずにいます。
そんなナジャを気にかけたのか、ダビッドは雪山でオーロラを見ようと旅行を提案し、飼っている犬のボリスを連れて旅行へ行きます。
車で移動中にガソリンスタンドに立ち寄り給油をしていると、後ろの車に乗っている男が話しかけて来ます。その男は「彼女可愛いな」と嫌味な感じで話し、荷台にはシカの頭が置いてありました。如何にも怪しげな男です。
気味が悪いので急いで車に乗って出ようとしますが、誤って男の車にぶつかり、そのまま逃げてしまいます。男の車には傷がつき、当て逃げしてしまいます。
仕事はするけど私生活がダメ男のダビッドを演じるのは、アナスタシオス・ソウリスです。当て逃げしたり、テントの設置ができなかったりと頼りになりません。嫌なことや自分に不都合なことがあるとすぐに逃げる癖があります。
ダメ男を支える黒人女性のナジャを演じるのは、ナンナ・ブロンデルです。『ブラック・ウィドウ』(21年)のクレジットを見るとスタントで出演しているそうです。ナジャは家事をしながら医学部の勉強をして医師を目指しています。
ダビッドがご馳走にスイカを出すのですが、これは黒人に対しての人種差別となります。「黒人とスイカのステレオタイプ」と呼ばれ、奴隷制度があった頃に黒人にはスイカと少しの休息を与えれば幸せを感じられると差別を受けていました。
冒頭で画面が黄色一色になったり、ナジャが誰かに電話しようとするも躊躇う場面があります。意味深な場面ですが、物語の後半に繋がる大事な伏線となっています。
当て逃げ
旅行先のホテルには、ガソリンスタンドで会った怪しい男二人組がいました。次の日に車に乗ろうとすると、車には傷がつけられ「黒人が乗っています」と書かれたシールが貼られ、嫌がらせを受けます。
雪山に向かう途中、怪しい男の車を見かけたナジャは仕返しに傷をつけます。男に見つかるも急いで逃げます。
雪山でテントを設置して夜を過ごし、ナジャは妊娠したことを話します。そのことを知ったダビッドは大いに喜びますが、テントに赤いレーザーポインターが映し出されます。ボリスはテントの中から勢いよく飛び出し、暗闇の中へ走って行きます。しばらくすると銃声が聞こえ、ボリスは帰って来ませんでした。
当て逃げしたのをきっかけに恐ろしい事態になりますが、物語はそう単純ではありません。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
幻覚
テントから逃げ出し、夜が明けるのを待ちます。明るくなってきた頃にテントに戻ると、ボリスの切断された頭が置いてありました。ダビッドはトラバサミに腕を挟まれ負傷します。
雪山を歩いていると銃声が聞こえ再び襲われます。急いで逃げて避難小屋へ向かい救助を呼びます。傷を治療するためダビッドは服を脱ぐのですが、ダメな男という設定なのに筋肉はムキムキです。バトルフィールドの効果なのでしょうか。
翌朝目が覚めると救助隊の人が来てくれるのですが、来てくれた人は怪しい男二人組の一人でした。ダビッドとナジャは急いで避難小屋を出て隠れますが、見つかりそうになったのでシグナルピストルのようなものを撃ちます。男は火を浴びてその場に倒れます。
その隙に逃げますが、ダビッドは「ずっとあの子が離れない。あの時に通報すべきだった」と幻覚を見ます。二人は何か罪を犯したように見えます。
ナジャはスキーバイクを見つけると、銃を持った男に話しかけられます。その男は怪しい男二人組の一人でした。ダビッドは男の後ろから石で頭を殴り、殺してしまいます。
真実
近くの別荘にたどり着いて助けを求めると、そこにいたのはホテルの受付をしている男でした。男は助けふりをして、ある男を呼びます。別荘には子供の写真が飾られています。
ダビッドとナジャが新婚ほやほやの時に、ダビッドが運転している車でナジャがダビッドの股間を触り、よそ見をしているときに子供を跳ね、ひき逃げしていました。その子供の写真が別荘に飾られています。ホテルの受付の男が呼んだのは、隣人のトーマスでした。トーマスの子供は、ダビッドが運転する車にひき逃げされました。
トーマスは子供が殺された復讐に、ダビッドとナジャが住む家の隣に引っ越し、旅行券をプレゼントして今回の犯行に及びました。トーマスは犯人を知っていましたが、自らの手で裁くため警察に知らせないでいました。事故当時の子供は黄色いジャケットを羽織っていました。冒頭の黄色一色の画面はこのことを現しています。
当て逃げが原因で襲われたと思っていましたが、当て逃げよりも恐ろしいひき逃げをしていました。ダビッドとナジャは赤い光点を向けられていましたが、本当自ら向けていました。
当て逃げや人種差別はミスリードであることが分かります。
死にたい
トーマスは子供を失った哀しみを味合わせるため、ダビッドに電動ドリルでナジャのお腹を突き刺せと拷問します。トーマスは躊躇うダビッドの右足を撃ちます。それでもダビッドは、ナジャのお腹を突き刺すことはできません。
トーマスはナジャに銃を向けますが、そこに火傷を負った救助隊の男がやって来ます。トーマスは救助隊の男と揉みあいになり、その隙にダビッドとナジャは逃げます。
ダビッドは負傷したためこれ以上走ることはできません。ナジャは一人で逃げますが、途中でダビッドが殺した男の銃を見つけて戻ってきます。
ナジャはトーマスに銃口を向けますが、何者かに撃たれます。撃ったのは、ホテルの受付にいたトーマスの妻でした。ダビッドは「殺してくれ」と言いますが、トーマスは生きて罪を償えと殺さずに生かします。死にたくなくて逃げ回っていましたが、最後は死にたくてしょうがなくなります。ひっくり返すのが秀逸です。
まとめ
当て逃げの仕返しかと思いましたが、まさかの展開で驚きました。ダメ男が父親になり強くなっていく物語になるかと思って見ていましたたが、見事に予想を裏切られる映画でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。