ポケモン現役世代じゃなくても楽しめる『劇場版ポケットモンスター ココ』(2020年)について感想を書きました。後半は、物語の結末に触れているのでネタバレ注意です。
劇場版ポケットモンスター ココ
『ココ』は、ポケモンという言葉を知っているだけで十分楽しめる映画です。ポケモンをやったことないから話についていけるか不安、という心配は入りません。老若男女、楽しめます。子供に連れられて見る人もノープロブレムです。
ココ
ポケモンの映画は『ミュウツーの逆襲』(98年)や『ディアルガVSパルキアVSダークライ』(07年)など伝説のポケモンの名前がタイトルに入っていることが多いです。なので『ココ』は伝説のポケモン?と思いますが、実はポケモンではなくて人間です。
森の中に群れで暮らす幻のポケモン・ザルード。マントをつけているザルードは、森の奥で赤子を見つけます。
親のいないザルードは赤子を見捨てることができず住処に連れて帰りますが、ザルード以外の種族を入れてはならないという森の掟があります。
それでも赤子を育てることに決めたザルードは、掟に反し森を出て行くことに。
ザルードは赤子の名前をココと名付け、10歳になるまでに育てます。ココは自分のことをザルードだと思っていましたが、成長していくに連れ本当は別の生き物ではないかと疑います。
そこへ、偶然通りかかったマサラタウンのサトシと出会い、森の中しか知らなかったココは外の世界を知ることになります。
ふと思ったのですが、サトシは自己紹介の時に「マサラタウンのサトシ」と言います。何で地元の名前を言うのでしょうか。世田谷区の〇〇みたいな自己紹介はしないのに。昔は気にならなかったけど今見ると気になるのも魅力の一つです。
「ここにしようぜ」みたいなセリフがあると、タイトルの『ココ』だけに?(笑)と思う場面があるので、そういう楽しみもできます。
モンスターズインク
「親と子」のテーマに物語は繰り広げていきますが、このテーマは『ココ』の監督を務めた矢嶋哲生監督自身の体験からきています。
矢嶋監督は息子と娘が生まれ子育てしていくうちに「親子」のテーマに興味をもったそうです。
ある日突然親になるという点で思い出すのが『モンスターズ・インク』(02年)です。
モンスターの世界に子供が迷い込んでしまいサリーとマイクがあたふたします。『モンスターズ・インク』を監督したピート・ドクターは、子供が2歳の時にどう付き合ったらいいのか分からなくなり、子育てに苦労したという実体験をもとに作られました。
『ココ』と『モンスターズ・インク』の原点は一緒だと思います。個人的なことをテーマにした映画は面白いです。
森の秘密を研究
ビオトープ・カンパニーのゼッド博士率いる研究員は、ザルードの森の秘密を研究しています。この秘密がココと絡んでくるのが見所です。
ロケット団も健在で、ゼッド博士の研究成果を盗もうとビオトープ・カンパニーの研究者に変装し潜入するのですが、オールバックのコジロウやおかっぱのニャースが見られるので必見です。
声優
有名人を声優に抜擢し大事故になるアニメが多いですが、『ココ』は問題ないほど素晴らしいです。ザルードの声は歌舞伎役者の中村勘九郎、ポケモンに育てられたココの声は上白石萌歌、森の秘密を研究するゼッド博士の声は山寺宏一、ゼッド博士と共に研究する研究員のカレンの声は中川翔子。
全員違和感なく、見入ってしまいました。
ここからは物語の結末にも触れています。
文明
ゼッド博士が研究のために自然を壊している場面は、「ゼッド博士は何てひどいやつだ!」と思う反面、「我々人間がやっていることと同じだ」と複雑な気持ちになりました。
この場面は、ロケット団の幹部が伝説のポケモン・セレビィを捕まえるため自然を破壊する『劇場版ポケットモンスター セレビィ 時を超えた遭遇』(01年)を思い出しました。
『時を超えた遭遇』と展開は似ているのですが、決定的に違うのはラストです。
時を超えた遭遇
『時を超えた遭遇』は人間が破壊した自然を伝説のポケモン・スイクンやセレビィの力によってもとに戻りますが、『ココ』は人間が破壊した自然を人間が長い時間かけてもとのかたちに再生しようとします。現実の世界でも環境破壊などが問題となっていますが、いつか誰かが解決してくれると思っている人は少なくないと思います。
最近では、「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減」など具体的な対策が案じられました。つまり、破壊した自然を取り戻そうとしている現実と『ココ』のラストは同じだと思いました。伝説なんてない、ヒーローなんていない、自分たちが何とかするしかないと『時を超えた遭遇』のアンチテーゼにも見えました。
行っといで バカ息子
ココは外の世界に飛び込み人間として生きることを決めます。ココのカバンには、外に行くことを察したザルードが入れた木の実が。森全体でココの門出を祝います。この展開は、『ONE PIECE』のドラム島編でDr.くれはが旅に出るチョッパーを見送った場面を思い出しました。
息子のように育てたチョッパーをピンク色の雪を降らせ門出を祝います。チョッパーは逃げるように旅に出たので医療道具を忘れてしまいますが鞄に入っていました。ココのカバンに入っていた木の実と重なります。
ザルードとココの別れるシーンを見て、「行っといで バカ息子」と心の中で言いました。
自分のポケモン歴
ちなみに、僕のポケモン歴は2006年に発売された「ダイヤモンド・パール」のプレイ中に個体値を知ってリタイヤしました。
個体値はポケモンに隠された数値のことで、個体値が高いとより強いポケモンに育てることができます。ポケモンのタマゴの時点で能力が振り分けられるので個体値の高いタマゴを探すことがメインになります。
周りの友達は個体値を求め、僕は作業になってしまうのが嫌になり、リタイヤしました。映画を見てまたやりたくなりました。