【ネタバレ感想】『哀愁しんでれら』小説との違い

こんにちは、つけものなすです。

今回は、シンデレラのようなサクセスストーリーのその先を描いた映画『哀愁しんでれら』(21年)を紹介したいと思います。

哀愁しんでれら

シンデレラ

児童相談所で働く福浦小春は、多くの災難に見舞われます。訪問先からはクレームに悩まされ、自宅で祖父が倒れ、父親が運転する車で病院へ向かう途中に事故に遭い、自宅は火事で焼け、父親は職を失い、妹の学費を払うことも困難に。止めに彼氏の浮気現場を目撃。最悪です。

友人は結婚して子供を産み幸せそうに暮らしている姿を見て、何で自分は不幸なのか。子供の頃に母親に捨てられ、それから母親の代行として家事や妹の面倒を見てきました。一生懸命生きてきたのに。そんな人生のどん底に陥った小春の前に、ベンツに乗った白衣の王子様が現れます。

災難続きの福浦小春を演じるのは、Netflix『今際の国のアリス』(20年)などに出演している土屋太鳳です。小春は難役だったこともあり、オファーを3度断ったそうです。

小春の父親を演じるのは、『マスカレード・ホテル』(19年)などに出演している石橋凌です。自営で自転車サイクルショップをやっていましたが、店側が火事で焼けてしまい職を失います。

小春の妹を演じるのは、『樹海村』(21年)などに出演している山田杏奈です。公開当時は、『名も無き世界のエンドロール』(21年)、『哀愁しんでれら』(21年)、『樹海村』(21年)と立て続けに出演しています。

 

白衣の王子様

人生がどうでもよくなった小春は夜道を歩いていると、踏切の線路の上で倒れている酔っ払いの男性を見つけます。電車が迫ってきているので急いで助けると、その男性はお礼がしたいと言い、後日会うことになります。

助けた男性は、男手ひとつで娘を育てている開業医の泉澤大悟。妻は浮気相手と車に乗っている時に事故に遭い亡くなりました。小春は大悟と気が合い、娘のヒカリとも仲良くなります。大悟は「僕に何かできることがあったら教えてください」と小春の父親に仕事を紹介し、妹の家庭教師となり、家族一同お世話になります。そして、小春は大悟のプロポーズを受け入れ、二人は結婚することになります。

「小春と大悟は幸せに暮らしましたとさ」と、おとぎ話のように幕を閉じたいですが、少しずつ家庭の歯車が狂い始めます。

ベンツに乗った白衣の王子様を演じるのは、『mellow』(20年)などに出演している田中圭です。本作では華麗な肉体美を見ることができます。

大悟の娘のヒカリを演じるのは、キッズインスタグラマーで本作がデビュー作のCOCOです。インスタグラムのフォロワー数は60万人を超えています。難役のヒカリですが、見事に怪演しています。

COCO(@coco_pinkprincess) • Instagram写真と動画

 

小説版との違い

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

秋吉理香子が本作を基に書き下ろした小説「哀愁しんでれら もう一人のシンデレラ」は、映画では描かれていなかったことを補完するように書いてあり、映画以上にダークな仕上がりになっています。登場人物のそれぞれの視点から描かれているので、人物の心情がより深く味わえます。ここでは、映画と小説の大きな違いについて書きたいと思います。

 

隠避罪

小説では祖父を車で病院に連れて行くときに、父親は自身が飲酒運転していることに気づき、小春は自分が運転していると警察官に嘘をつきます。そのことが大々的にテレビで報道され、「児童相談員が隠避罪!?」と個人が特定されてしまい、小春は謹慎処分となります。

 

アレルギー

ヒカルはアレルギーであるエビを食べそうになります。アレルギーのことを知らなかった小春は、大悟に気をつけてねと注意されます。

小説では、小春がアレルギーを克服させるためにヒカルにエビを食べさせますが、蕁麻疹が出てしまいます。それに気づいた大悟は、「ヒカルは呼吸困難になる場合もあるから克服とか軽いレベルではない」と声を荒げます。小春はヒカルの本当の母親ではないから、そういうことができると大悟が嫌気をさします。思わず小春は泣いてしまいます。

 

来美

来美はヒカルの良い友達として描かれていますが、小説だと嫌な恋敵として描かれています。

誰もいない教室にいるヒカルは、好きな人である渉のタオルを手に取り、自分のカバンに入れようとします。その様子を見た来美は、授業中に「ヒカルちゃんが渉のタオルを盗もうとしていました」と大きな声で先生に言います。

同級生はヒカルのことを気持ち悪がりますが、来美は「ヒカルちゃんは母親がいないから、しょうがないんだよ」と泣きながら訴えヒカルに近付き、「何があっても私たちは親友だよ」とヒカルを抱きしめ、教室内は拍手に包まれます。良い人を演じる来美は腹黒く、ヒカルの好感度を下げます。

ヒカルに何かあると、「ヒカルちゃんは母親がいないから」と一番嫌がることを言います。最近の小学生は怖いですね(笑)。

 

ヒカル

弁当を食べずに捨てたり、筆箱をトイレに流したりと小春の嫌がらせをしますが、小説では同級生に馬鹿にされ行動に及んだと描かれています。小説だと筆箱は巾着に変わっています。

小春の手作りの巾着や弁当を同級生から「ダサい」と言われ、巾着や弁当をトイレに流す描写があります。ヒカルは小春を母親として受け入れるものの、同級生に馬鹿にされたためトイレに流しました。

ヒカルは来美を突き落とし、後に同級生がヒカルがやったと証言します。ヒカルは来美を突き落とした後に、急いで倒れている来美のもとに向かいます。その時に、同級生は息が上がっているヒカルを見て不信感を抱いていました。

 

アトリエ

大悟が入らないでと言う部屋があります。その部屋はアトリエで、自画像や飼っていたうさぎの剥製があります。家族の絵も描かれていますが、小春の顔は黒く塗りつぶされていました。

小説だと、大悟は小春に似ている人形を作り、ストレスがたまるとその人形をめった刺しにします。狂気に満ちています。

 

まとめ

衝撃の結末は驚きました。まさに怪作です(笑)。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

土屋太鳳、3度断った“難役”に挑戦! 渡部亮平監督作「哀愁しんでれら」2021年早春公開 : 映画ニュース – 映画.com

https://eiga.com/news/20200519/2/