実写版「ジョゼと虎と魚たち」共感したくないけど痛いほど共感してしまう

昔嫌いだった食べ物も年齢を重ねるにつれ食べられるようになることがある。映画も同じで、昔見た時はイマイチだったけど今見ると共感できる。そんな映画、実写版「ジョゼと虎と魚たち」の感想を書きたいと思います。後半は物語の結末に触れているのでネタバレ注意です。

 

ジョゼと虎と魚たち

「ジョゼと虎と魚たち」は、2003年に公開された日本映画です。原作は芥川賞作家の田辺聖子。監督は、「ゼロの焦点」(2009)や「のぼうの城」(2012)の犬童一心。「いぬどう」と読みます。(僕は読めませんでした)。当時のキネマ旬報の日本映画ベストテン第4位に選ばれています。ちなみに1位は「美しい夏キリシマ」、2位は「赤目四十八瀧心中未遂」、3位は「ヴァイブレータ」です。脚本は、朝ドラ「カーネーション」(2011)の渡辺あや。音楽は主題歌と共にくるりが担当しています。2020年にはアニメ映画化されています。

 

あらすじ

雀荘でバイトする大学生の恒夫(妻夫木聡)は、代打ちで国士無双を出し今年の運を使い果たしていました。バイト先で飼っている犬の散歩をしていると、お婆さんが押している乳母車が坂道から勢いよく下ってきます。心配した恒夫が乳母車に近づくと、その中には、ジョゼ(池脇千鶴)と名乗る足の不自由な女性がいました。恒夫とジョゼのボーイミーツガールが始まります。

 

女たらし

妻夫木聡が演じる恒夫は、頭髪がツンツンの楽観的な性格で、多くの女性と肉体関係を持ちキャンパスライフを謳歌しています。肉体関係をもつノリコ(江口のりこ)とのベッドシーンは当時話題になったそうです。ディープなキスや乳房が映り、体を張って演技している様に見入ります。そんな昔の映画でもないのに、今の日本映画を見るとだいぶ丸くなったなと思いました。

 

ジョゼ

ジョゼは料理が得意で恒夫の胃袋を掴みます。映画を見た後は卵焼きが食べたくなるでしょう笑。本を読むのが好きで、祖母がゴミ捨て場から拾ってきた本を読んでいます。拾ってきた本の中には、高校生が使っていた教科書や、隠したくなるようなエロ本も。その高校生が大学生になり恒夫と新歓コンパでばったり会う場面は笑います。

幼い頃は施設に預けられそこで過ごした後、引き取り手のなかったジョゼを祖母が引き取り一緒に暮らしています。祖母は、ジョゼの足の不自由なことを恥に思い周りの人に知られたくないためジョゼを外に出さないようにしています。唯一外に出るのは散歩に行く時だけで、乳母車にのせ布で包み込んでいます。ジョゼは、ほとんど外の世界を知りません。

ジョゼが施設で一緒に過ごした幸治と会う場面があるのですが、幸治を演じているのはモヒカンヘアの色々あった新井浩文です。頭ツンツンな恒夫とモヒカンヘアの幸治が話す場面は、話よりも髪の毛が気になります。

ジョゼの本当の名前はくみ子といいます。なぜ、彼女は自身のことをジョゼと呼ぶのでしょうか。ジョゼは、くみ子の愛読書であるフランソワーズ・サガン著「一年ののち」の登場人物からとってきています。大金持ちのジョゼ、女優を目指すベアトリス、作家のベルナール、田舎から出てきたエドワールなど様々な人物が登場し、恋愛模様を描いている小説です。大金持ちのジョゼは自由気ままに生活を送っていますが、どこか満たされない部分がありモヤモヤしています。くみ子とは正反対のジョゼですが、自由に生きる憧れとどこか満たされない寂しさに共感してジョゼと呼んでいるのでしょう。

 

虎と魚たち

ジョゼは、この世で一番恐れている虎の前に最愛の人と一緒に立つことと、美しい魚たちを見ることを夢見ています。タイトルの「ジョゼと虎と魚たち」は、ジョゼの憧れを示しています。それを叶えてくれるのは恒夫の存在です。恒夫が外へ連れ出して行ってくれるのです。恒夫はジョゼのことを好きになるのと同時に足の不自由な障害をもつ人と付き合っていけるのかと不安になります。好きなのに、好きなはずなのに…。

 

ネタバレ感想

ここからは、物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

ジョゼの祖母が亡くなり、少し時間が経ってからそのことを知ることになる恒夫。急いでジョゼの元へ行きます。一番側にいてあげなければいけない時にいてやれなかった。この場面にはグッときました。

恒夫はジョゼと旅に出かけデートを楽しみますが、次第に想像する普通のデートとは違うことに気づきます。

最後、足の不自由な子と付き合っていける自信がなくなった恒夫はジョゼと別れます。楽観的な恒夫でしたが今回ばかりは泣き崩れます。

初めて見た時は、多分高校生だと思うのですが、妻夫木聡が女たらしで最低なやろうだという感想を抱いていましたが、今改めて見ると恒夫に共感したくないのに共感してしまう自分がいてそれが嫌になり感情が爆発してしまいそうです。

昔見た時と今見た時では、こうも感想が違うのかと驚いています。

今だったら、RADWIMPSの「愛にできることはまだあるかい」の問いに答えられそうな気がします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です