【オススメ】平凡な日常に迫り来る恐怖「エレファント」

Elephant (Trailer)
引用元:Elephant (Trailer)

1999年、アメリカ・コロラド州にあるジェファーソン郡立コロンバイン高等学校で生徒2名による銃乱射事件(コロンバイン高校銃乱射事件)が起こりました。12名の生徒と1名の教師を射殺し、重軽傷者は24名にも上ります。銃を乱射した生徒2人は自殺しました。そんな事件をもとに映画化した作品があります。

2003年に公開された映画「エレファント」。監督は「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 」などのガス・ヴァン・サント。出演者にはジョン・ロビンソンなど。

オレゴン州・ポートランドのある高校を舞台に物語は進みます。そこには、平凡な日常が映し出されています。酔っ払った父親を家に帰すために遅刻した生徒や、ポートフォリオのためカップルの写真を撮る生徒、恋愛話やダイエットの話で盛り上がる生徒など、極普通の日常生活を送っています。ある出来事が起こるまでの話ですが…。

物語はある終着点に向かって進みます。普通の日常に迫る恐怖を描いています。ネタバレなしで書いているので安心してください。

 

タイトルのエレファントとは?

タイトルに「エレファント」とつけた理由について、ガス・ヴァン・サント監督がインタビューで語っています。

この企画を製作会社の偉い人に提案した時に、1989年に公開された映画「エレファント」のような作品だったらいいよと言われたそうです。

89年に公開された「エレファント」は、アラン・クラークが監督した映画で、アイルランドの民族対立を描いています。セリフはほとんどなく、状況説明のないまま民族の対立が描かれます。

撮り方もフォローショットを使うなど、「エレファント」と様々な類似点があります。

 

映し出される平凡な日常

平凡な日常が映し出され、まるで登場人物が本当に現実の世界で生きているのでは?と思わせる映画となっています。

ジョンは、父親の運転する車で学校に向かっていますが、父親が酒に酔っ払っていることが分かり、兄に迎えに来てもらおうと電話します。

写真部に所属しているイーライは、公園で見かけたカップルに写真を撮らせてくれないかとお願いし、自分のポートフォリオのためカップルの写真を撮ります。

スポーツマンでモテモテのネイサンは、アメフトで汗を流し、恋人であるキャリーに会いに生きます。

それぞれの生徒視点の話が絡み合い群像劇になっています。そして、平凡な日常が少しずつ恐怖に変わっていく様子がとても恐ろしいです。

 

フォローショット

この映画はフォローショットが効果的に使われています。

フォローショットとは、カメラが被写体を追いかけていくショットのことです。

ネイサンが歩いて校舎に戻るシーンがあるのですが、アメフトが終わってから校舎に戻るまでを長々と追いかけています。一緒に追いかけることにより、見ている自分がこの学校にいるような気がしてきます。

 

セリフはアドリブ

俳優が話しているセリフですが、全てアドリブです。大まかな流れは決まっていて、それ以外の会話はアドリブになっています。

見るとわかるのですが、とても自然な会話が多く、シナリオとは全く関係ない会話が多いです。タランティーノの作品で見かけるような無駄な会話こそ真のリアルさが描かれています。

 

見た後に聞くと怖い曲

「エレファントマン」を見た後に聞くとゾッとする音楽があります。Foster The Peopleの「Pumped up Kicks」です。

軽快なポップな感じで楽しい曲かと思うのですが、歌詞の内容は、主人公のロバートが同級生たちに銃を乱射しているという内容になっています。

映画を見た後にこの曲を聞くと、映画と歌詞の内容がマッチしていてゾッとします。

YouTubeには、エレファントのシーンにPumped up Kicksが流れる動画が上がっています。興味のある方は、ぜひ見てみてください。

 

感想

この映画は、最後まで特に何も起こりません。ある終着点に向かって物語が進んでいくだけです。それだけなのですが、非常に考えさせてくれる映画となっています。

校舎に向かって延々と歩いているシーンは、普通だったらカットしますが、それを長々と映し出し、平凡な日常を描き出しているところがリアルで面白いです。

何回見ても面白いです。

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