Netflix「泣きたい私は猫をかぶる」恋愛話はもう終わりにしようじゃないか

Netflixで配信中の映画「泣きたい私は猫をかぶる」（以下、泣き猫）を見ました。

「泣き猫」は、「ペンギンハイウェイ」でおなじみのスタジオコロリドが制作したアニメーション映画です。監督は佐藤順一、甚目 喜一。脚本は岡田麿里。主題歌や挿入歌はヨルシカが担当しています。

「泣き猫」は劇場公開される予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大により、Netflixで配信することになりました。

あらすじ

主人公である笹木美代は中学二年生の明るい陽気な女の子で、周りの人からは何を考えているのか分からないため「無限大謎人間」（ムゲ）と呼ばれています。ムゲは好きな男の子（日之出賢人）に猛アタックするのですが、振り向いてもらえません。

そんなある日、お面屋から不思議なお面を貰います。そのお面を被ると猫の姿に変身することができます。ムゲは猫の姿で日之出の家へ行き、じゃれ合うのが日課になっています。猫の姿になり賢人との距離を縮めようとしますが、人間の姿の時は空回してしまいます。日之出に好きという気持ちを伝えようとしますが、ある出来事をきっかけにムゲはひどく落ち込み、人間をやめてもいいんじゃないかと思い、体だけでなく心も猫に近づいていきます。ムゲは人間に戻ることができるのでしょうか。

ムゲの演技がすごい

無限大謎人間

ムゲは明るい陽気な女の子の度を超えてスーパーハイテンションです。好きな男の子である日之出を見かけると靴を脱ぎ、日之出サンライズアタックとヒップアタックをしたり、日之出の悪口を言われると二階から飛び降りて悪口を言った同級生に注意しに行ったり、とにかくぶっとんでいます。

始めはムゲのハイテンションについていけなかったのですが、物語が進むにつれて無理に明るく振舞っていることを知り、愛らしくなっていきます。

日之出に首ったけ

ムゲは他の人間がカカシに見えていますが、唯一カカシでないのが日之出です。自分の悪口を言われても何とも思いませんが、日之出の悪口を言われると許せません。ムゲにとって日之出は太陽であり希望なのです。

日之出の声は花江夏樹が演じています。公式サイトによると日之出は小さいころから姉にいじられることが多く目立つことを避ける性格になったそうです。

大人に振り回される少女

ムゲは親が離婚して父親に引き取られ、再婚相手である薫と一緒に暮らしています。薫はムゲとの距離を縮めようと努力しますが中々上手くいきません。大人に振り回されているムゲはこの家（世界）から脱出するため日之出と結婚することを夢みてます。

ムゲの声は志田未来が演じています。クレジットを見るまでは志田未来だと分かりませんでした。ムゲは光と闇の部分ががあり、感情の起伏が激しい難しいキャラクターですが、見事に「無限大謎人間」を演じています。志田未来の演技は圧巻です。もはやムゲです。

人間をやめる

酢豚が美味しい

日之出の祖父が経営する工房は、経営するための維持費や祖父の目が弱くなってきたのを理由に閉めることになりました。賢人は反対しますが、自分が工房を継ぐと言う勇気がなく言うことができません。猫の姿になったムゲは様子を見ていましたが、ひどく落ち込んだ賢人に声をかけることができません。

ムゲは家に帰り、夕食で酢豚を食べると美味しいと言って涙を流します。日之出があんなに落ち込んでいるのに、自分は「美味しい」と幸せを感じていいのだろうかと涙を流します。日之出の為に何もしてやれない無力さにムゲも落ち込みます。このシーンが一番グッときました。

大嫌い

お面屋に人間のままでも、猫のままでも本当のことが言えないのなら、日之出の近くに居られる猫になってしまえばと言われます。それではまずいと思い、ムゲは決心して日之出へのラブレターを書き始めます。

ムゲは日之出にラブレターを渡そうとしますが、同級生の男子（坂内と新堀）に邪魔をされラブレターを教室で読み上げられてしまいます。巻き込まれた日之出は嫌気がし「大嫌い」だとムゲに言います。ひどく落ち込んだムゲは感情を爆発させ人間でいることが嫌になり、人間を止めようとします。

日之出が言った「大嫌い」はムゲに言ったのではなく、自分自身に言ったようにみえます。何でも言いたいことが言えるムゲのことを羨ましく思っていて日之出は、恥ずかしがり屋で自分の言いたいことを上手く言えません。そんな自分に嫌気がさし、「大嫌い」とムゲに感情をぶつけてしまったのです。

本当の自分

人間のお面

人間のことを捨てたいと思ったことにより、お面屋に人間のお面を渡してしまいます。人間のお面がないと人間に戻ることができません。完全に猫になってしまう前なら人間のお面をつければ人間に戻ることができます。

「おぎやはぎ」の小木

担任である楠木先生は日之出と頼子に家出したムゲのことについて聞きます。

楠木先生の声優はおぎやはぎの小木博明です。エンドクレジット見るまで気付きませんでした。

人間に戻ることを決意

日之出は家出したムゲのことを探します。猫の姿になったムゲは自分のことを探していると知ります。ムゲは次第に人間の声が理解できなくなり、猫に近づいていきます。ムゲは人間であるムゲのことを必要とされていることを知り、人間に戻ることを決意します。

人間の声が理解できなくなる様子が怖く描かれていて面白いです。

きなこ

人間のお面をつけたきなこがムゲに変わって日常生活を送っています。きなこは猫のままだと寿命が短く薫と過ごすには限りある為、人間の姿になることを願っていました。薫はきなこがいなくなったので、寂しげな様子で探しにいきます。その姿を見ていたきなこは、人間の姿では代わりはできないことを知り猫に戻ろうとします。きなこは日之出を連れて猫にしか見えない橋を渡り猫の島へと行きます。

後半からはファンタジー感がさらに増して面白くなっていきます。他にも同じように猫が人間になっているのではと考えるとゾッとします。猫に侵略される人間とか想像しました。きなこの薫と一緒にいたい気持ち、切ない感じはよかったです。

猫になりきれない日之出

猫の島にたどり着いたきなこと日之出はお面屋を探します。猫にならないと周りが見えないため、日之出は猫のお面を被りますが、手だけしか猫になれません。ムゲはきなこと日之出がこの島に来ていることを知り、お面屋の店へと向かいます。お面屋は猫になった人間の寿命を奪うため人間に猫のお面を配っていました。ムゲは人間の姿を取り返すため、日之出と一緒にお面屋と戦います。

日之出は猫になりたい意志が弱く、ムゲのことが好きだと本当の事を言えたため、手だけしか猫になれなかったのだと思います。猫を被ることができませんでした。

寿命

日之出はムゲの寿命を吸収しようとするお面屋を必死に止めます。ムゲは次第に人間になりたいと思う力が強くな理、島にいる猫たちに助けられ、お面屋から寿命を取り返します。人間に戻ったムゲは自分が必要とされている、愛されている事を知り、これからは色んな人に応え好きになっていこうと前を向いて歩く事を決めます。

ムゲが人間の元の姿に戻りたいと本心を言うシーンにはグッときました。お面屋はあっさり倒されてしまったので、もう少し何か展開があると良かったです。もう少し気味の悪さを見ていたかったです。お面屋の気味の悪さを演じた山寺宏一はさすがです。

感想 恋愛話はもう終わりにしようじゃないか

応えるべき人はいつも近くに

物語はムゲと日之出の恋愛がメインですが、もう少し違う所にフォーカスがいったら良かったなと思いました。ムゲの近くには親や日之出だけでなく、必要としてくれている人がいます。それは、友達の頼子です。

ムゲが同級生の男子にラブレターを読まれたり、日之出に大嫌いと言われ悲しんでいるときに、ムゲ以上に悲しんでいたのは頼子です。ムゲは早く友人の頼子の存在に気づくべきだったと思いました。いつも近くには必要としている、愛されている人がいることに気づいてあげて欲しかったです。もう少しムゲと頼子の関係が見たかったです。

最近のアニメ映画を見ているとほどんどが「恋愛」を軸にした青春映画となっています。青春に恋愛はつきものなのは理解しますが、全部恋愛に結びつけなくても良いのではと思います。

何はともあれ、青春恋愛アニメーション映画としては文句なしです。