今回紹介するのは2019年に公開された「WAVES/ウェイブス」です。
作品情報
- 監督 トレイ・エドワード・シュルツ
- 脚本 トレイ・エドワード・シュルツ
- 製作 ケヴィン・チューレン、ジェームズ・ウィルソン
- 製作総指揮 ジェイコブ・ジャフケ
- 出演者 ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
- 音楽 トレント・レズナー、アッティカス・ロス
- 撮影 ドリュー・ダニエルズ
- 編集 トレイ・エドワード・シュルツ、アイザック・ヘギー
- 製作会社 ガイ・グランド・プロダクションズ、JWフィルムズ
- 上映時間 135分
あらすじ
主人公である高校生のタイラーは、レスリング部の選手でスポーツ万能。勉強もできてピアノも弾けて、お金持ちの家に住んで美人の彼女がいます。まさにスクールカーストの頂点に君臨しています。
そんなムカつくタイラーですが、肩の負傷が発覚して医師にレスリングを続けるのは無理だと告げられます。タイラーの父親は厳しく、負傷したことを言えず黙っています。タイラーの人生は少しずつ波にのまれ、破滅へと沈んでいくのです…。
制作会社はあの「A24」
A24といえば、「ヘレディタリー/継承」や「アンダー・ザ・シルバーレ
イク」、「ミッドサマー」など一筋縄ではいかない映画を作っています。
二部構成
この物語は大きく分けて二部構成となっています。
第一部では、主人公のタイラーが高校生活の頂点からドン底に沈んでいく話。第二部は兄のある事件をきっかけに、心を閉ざしてしまう妹の話となっています。
実体験から生まれた物語
この物語は、トレイ・エドワード・シュルツ監督とタイラー役のケルヴィン自身の高校生活の実体験がもとになっています。
シュルツ監督は継父からレスリングを、ケルヴィンは父から音楽を叩き込まれていました。
監督はインタビューで父親について「支配的で精神的虐待に近い育て方だった」と語っています。
ピアノを弾くシーンがあるのですが、父親から叩き込まれていたってことですね。ケルヴィンの特技ですね。
監督自身もレスリングで肩を痛めていて主人公のタイラーと一致します。役なのか本人なのか分からなくなってきます(笑)
オピオイド
タイラーは負傷した肩の痛みを和らげるため父親が持っていたオピオイド(鎮痛剤)を服用します。次第に中毒になっていき、薬が切れてくるとイライラしてきて禁断症状が現れ、最後は恋人を殺してしまいます。
オピオイドは一般的に鎮痛薬として使われてきましたが、アメリカ中に蔓延し、その濫用によって死者数が交通事故死を上回り1日平均130人以上が亡くなっています。ドナルド・トランプ大統領は、2017年に公衆衛生上の非常事態宣言を行っています。
鮮やかな画面が映し出す登場人物の心情
タイラーが「波に乗っている」ときは、明るい鮮やかな画面となっていますが、肩を負傷しオピオイドを飲み、だんだん薬物中毒になっていくと、鮮やかな画面から一転して暗い画面になっていきます。同時に、画面比も縮小されスクリーンが小さくなっていきます。
海で恋人と愛していると交わしている時、カメラは海の中を映し沈んでいきます。その後からタイラーの人生は一変し、波に乗っていたはずが、いつの間にか溺れそうになっていくのです。
登場人物の感情によって、画面の広さや色が変わるのは斬新で面白いです。このような映画は初めて見ました。実験的でとても斬新でした。