こんにちは、つけものなすです。
今回は、母と娘の確執に迫るインド映画『トリバンガ ~踊れ艶やかに~』を紹介したいと思います。
トリバンガ ~踊れ艶やかに~
母と娘
Netflixで配信中の『トリバンガ ~踊れ艶やかに~』(21年)は、危篤状態になった母親をきっかけに家族が向き合い始めるインド映画です。
ボリウッドで活躍している女優アヌの元に、母親が脳卒中で倒れて救急搬送されたという知らせが入ります。アヌは急いで病院に行きますが、ベッドで寝ているアヌに向かって「この人のせいでひどい目に遭った。私は地獄の落とされた」と言います。彼女に何があったのでしょうか。
母親のナヤンを演じるのは、『Thappad』(20年)などに出演しているインドの女優タンヴィ・アズミです。ナヤンは小説家で数々の賞を受賞しましたが、今は関節炎で字を書くのが困難になり、門弟のミランに手伝ってもらっています。ナヤンはミランに手伝ってもらい自叙伝を執筆中に脳卒中で倒れてしまいます。
娘のアヌを演じるのは、『勇者は再び巡り会う』(15年)などに出演しているインドの女優カジョールです。ナヤンのことを母と呼ばずにナヤンと呼び、しばらく疎遠になっていました。ナヤンの身の回りのことはアヌよりも門弟のミランの方が詳しく知っています。
過去
ナヤンとアヌに一体何があったのでしょうか。
アヌの子供の頃、ナヤンは執筆に忙しく家事や子育ては義理の母に頼んでいました。子供をほったらかしのナヤンを良く思わない義理の母は、ナヤンに対して強く当たっていました。
窮屈なナヤンは夫とも喧嘩するようになり、我慢の限界に達したナヤンは、娘のアヌと息子のロビンドロを連れて家を出て行くことになります。
名字が変わったアヌは、学校でいじめられます。インドでは女性は離婚するものではないと考えられ、不名誉だと捉えられています。同級生だけでなく、先生にも意地悪をされます。
ナヤンは写真家のヴィクラムと再婚しますが、ヴィクラムはアヌにひどいことをします。それが原因でアヌは自傷行為をするようになり、ナヤンのことを母親と呼ばなくなります。
ナヤンとアヌには様々な確執があり疎遠になっていました。ナヤンが倒れたのを機に再び向き合い始めます。アヌは結婚していませんが、娘のマーシャがいます。物語後半では、母アヌと娘マーシャの物語にもなっています。
アヌの娘マーシャを演じるのは、『ベビーシッターのモンスターハンティング・ガイド』(20年)などに出演しているミティラ・パルカルです。アヌのことをしっかり支えている良い娘を好演しています。
トリバンガ
東インド・オリッサ州の伝統舞踏オリッシーの踊りのポーズの一つがトリバンガです。トリバンガは、首、胴、腿の3箇所を曲げた立ち姿のことをいいます。トリバンガの姿勢をとっている仏像もいます。
アヌが自身の家族について、マーシャは「サマバンガ」、ナヤンは「アバンガ」、自身は「トリバンガ」と話す場面があります。サマバンガは両足を揃えて真っ直ぐに立ち両手を腰に当てる姿勢、アバンガはサマバンガの姿勢から片方の足に体重をかけ、かけていない足の膝を少し曲げた姿勢のことをいいます。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
アヌは子供の頃に、ナヤンの再婚相手ヴィクラムに性的暴行を受けていたことを明かします。ナヤンはそのことを知っていたにも関わらず、アヌのことを守ってあげられませんでした。
妊娠したアヌは恋人のディミトリから暴力を受けていましたが、ナヤンはお腹にいる赤ちゃんとディミトリの心配をしていました。誰もアヌのことを心配していません。
アヌは娘のマーシャには自分のようになってほしくないと育ててきましたが、父親がいないナーシャは学校でいじめられ、保護者会に色んな男を連れてくるアヌを見て同級生は軽蔑していました。アヌはナヤンと同じことを娘に繰り返していました。負の連鎖です。
今まではナヤンとアヌの話でしたが、ここでアヌとナーシャの話になります。ここの展開は面白いなと思いました。
当時言えなかったことをカメラで撮影した自叙伝を通して知るという何とも切ない映画です。
まとめ
家族に何かあってから向き合い始めるのは、すごい共感できます。
僕も高校生の時に父親を亡くしてから母親や姉と話すようになりました。何にもなければ、最低限の会話で終わり、悩み事とか相談できなかったと思います。皮肉なことに、家族に何かあってから気付くことが多いです。
身に沁みる、いい映画でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
参考文献
Tribhanga (2021) – IMDb
https://www.imdb.com/title/tt11102314/
インドのある女三代記(村山 真弓) – アジア経済研究所
https://www.ide.go.jp/Japanese/IDEsquare/Overseas/2010/ROR201014_001.html