こんにちは、つけものなすです。
今回は、コーエン兄弟の「ファーゴ」みたいなブラック・コメディ映画「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」を紹介します。
ネタバレなし
あらすじ
売れないバンド仲間の3人(ジーク、アール、ディック・ロング)はいつものように酒やら打ち上げ花火やらでバカ騒ぎをしている。帰り道、車を運転している後部座席にはディックが横たわり血を流している。
慌てているジークとアールは病院の前にディックを置き去りにし逃げてしまう。警察は殺人事件として捜査を進めるが、ジークとアールはひた隠しにしている。ディックはなぜ死んだのか?ジークとアールは何を隠しているのか?
作品概要
製作会社は新進気鋭の…
「ムーンライト」や「ミッドサマー」を世に放ち、新進気鋭という言葉が最も似合うA24(エー・トゥエンティーフォー)が製作しています。今最も信頼できる製作会社の一つです。
監督には、 前作「スイス・アーミー・マン」を撮ったダニエル・シャイナート。「スイス・アーミー・マン」はダニエル・クワンとコンビを組んで結成したダニエルズ名義なので、単独では映画監督デビュー作です。ディック・ロング役として出演もしています。
死体がキーアイテム?
「スイス・アーミー・マン」は、無人島に遭難した男が海岸に打ち上げられた死体を使って脱出する映画です。
ダニエルズはミュージックビデオのPV撮影も手がけています。2011年に発表されたFoster the PeopleのHoudiniでは、ミュージシャンが撮影中に機材の落下で倒れてしまい、撮影を続行するためミュージシャンを操り人形のように操作します。「スイス・アーミー・マン」の死体を動かす動作に似ています。
本作でもディックの死体によってジークやアーク、その家族が翻弄します。なぜか、死体が重要なキーアイテムになります。
ジークはある秘密を守るため嘘をつき家族までを巻き込んでしまいます。小さな嘘が徐々に大きくなっていき、ブラック・ドタバタ・コメディになっていきます。
影響を受けた映画
影響を受けた映画について監督はコーエン兄弟の「ファーゴ」を挙げています。多額の借金のため偽装誘拐をして身代金を手に入れるつもりが殺人事件にまで発展していくブラック・コメディです。
「ファーゴ」の舞台はコーエン兄弟の故郷でもあるミネソタ州で、本作の舞台はダニエル・シャイナートの故郷であるアラバマ州です。物語の雰囲気と故郷を舞台にしているところが非常に似ています。
他にも「ブレイキング・バッド」や「素晴らしき映画野郎たち」、「レポマン」など多くの映画を挙げています。
下ネタは健在
「スイス・アーミー・マン」ではオナラの連発や死体の〇〇したあそこを頼りに脱出するなど下ネタ全開の映画でした。少女の目の前でズボン越しではありますが、〇〇したあそこを見せてしまうシーンがあります。
本作では、まずタイトルの「ディック・ロング」(あそこが大きい)から下ネタです。
他にも様々な下ネタが散りばめられていますが、特にひどいなと思ったのはジークが娘から「〇〇〇ってどういう意味?」と聞かれるシーンです。寒気と同時に笑ってしまいました。
監督のインタビューによると、撮影するときは別の言葉を使い後で音声を変更したそうです。本当に言ったのかと思い心配しました。
ネタバレあり
ここからは本編の内容に触れています。ネタバレに注意してください。
パルプフィクション
死体を置いといた後部座席についている血を掃除するときに、ジークとアールはクエンティン・タランティーノ監督の「パルプフィクション」の話をします。
ヴィンセントが車内で銃を暴発し、後部座席に乗っていた男を殺してしまいます。血で汚れてしまった車を掃除屋のウルフに頼んで掃除をします。この場面について2人は話していました。
基になった事件
終盤、ディックの衝撃的な死因が判明しますが、これは実際にあった事件を基にしているそうです。その事件は2005年に起きたイーナムクロー〇〇事件です。あえて伏字にしています。
ここに書こうかと思ったのですが、内容も内容なのでやめることにしました。興味がある方は調べてみてください。警察官がテレビに映っている馬を見て嫌そうな顔をするのにも納得します。
ちなみに、2007年にはこの事件を基にドキュメンタリー映画が撮られたそうです。
感想
「ディック・ロングはなぜ死んだのか?」という目線で見ていましたが、後半は何で死んだかどうでもよくなり、ジークの家族を巻き込むドタバタ劇に見入ってしまいました。ジークはダメな男ですが、嫌いになれない、むしろ応援したくなります。
ディックの妻にバレないように家族総出で誤魔化すところは笑いました。見た後は、久しぶりにコーエン兄弟の映画を見た気分になりました。これは、じわる映画です。
参考資料
【インタビュー】『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』監督が語る「打ち明けられない秘密」の悲喜劇 ─「ポルノ映画ではありません」