感情や状況を説明する台詞は不要ではないか「劇場」

映画「劇場」について紹介したいと思います。本作は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、劇場公開と同時にAmazonプライムで配信となりました。物語の結末には触れていませんが、中盤くらいまでのことは書いているのでネタバレ注意です。

 

作品情報

  • 監督 行定勲
  • 脚本 蓬莱竜太
  • 原作 又吉直樹「劇場」
  • 製作 谷垣和歌子、新野安行
  • 製作総指揮 坂本直彦、古賀俊輔
    出演者 山﨑賢人、松岡茉優、寛一郎、伊藤沙莉、上川周作、大友律、井口理 (King Gnu)、三浦誠己、浅香航大
  • 音楽 曽我部恵一
  • 撮影 槇憲治
  • 編集 今井剛
  • 上映時間 136分

 

あらすじ

売れない劇作家の永田は、渋谷にある画廊の前で沙希と知り合い二人は恋人関係になる。金がない永田は沙希に家に転がり込む。

 

不器用な男・永田

永田は学生時代に友人の野原に触発され演劇に興味をもち台本を書くようになりました。高校卒業後は野原と劇団「おろか」を立ち上げます。

永田は不器用な男です。沙希と初めてカフェに行った時、沙希の意見も聞かずに「アイスコーヒー二つ」と勝手に注文します。その後、沙希と別れる時も急に走り出します。デートの誘い方も分からず友人に誘い方を相談します。それまでは恋愛などせず演劇に没頭していたのでしょう。

ただ、演劇のことになると人格が変わります。永田が作る劇は他の劇とは違って尖っています。一般的には受け入れがたいものでした。レビューもボロクソ書かれています。劇団のメンバーは居酒屋で、意見も聞いてくれない永田に「このままではまずい」と現在の状況を説明しますが聞いてくれません。酒に酔っているせいか、メンバーの暴言を吐こうとします(このシーンは結構怖かった)。後でメンバーに傘で叩かれボコボコにされますが…。

沙希と話している時は人見知りというか童貞臭が半端ないのですが、劇の話になると人が変わり自分以外の意見を聞こうとしません。プライドがめちゃくちゃ高いです。

自分には才能があると信じていますが周りの評判はめちゃくちゃ悪いです。自分の作品は他の人には理解できないと自分以外の人をバカにしています。クリント・イーストウッドにさえ嫉妬します。それくらいの気持ちがないと、演劇などの創作はできないのかもしれませんが。そんなプライドにより、色々な人たちを傷つけてしまいます。

 

やたら話しかけられる沙希

沙希は女優になるため上京し、服飾の学校に通っている学生です。美人です。永田と待ち合わせしているときにカットモデルやナンパやらでやたら話しかけられます。ナンパされている時、永田が遠くの隅っこに隠れているのがが面白いです(ちょっと分かるかも)。それにしても、話しかけられます。まぁ、松岡茉優だったらしょうがないですが。

永田は沙希を劇団に誘います。中学生の頃から演劇に携わっていたので演技は上手いです。沙希の出演した公演は評判となり少し客足が伸びましたが、永田はその後、沙希のことを役者として起用することはありませんでした。自分の才能の無さがバレてしまうのを恐れたため起用しなかったのでしょう。

沙希は永田に対して優しい、優しすぎます。金のない永田を家に住ませ、家賃や生活費などは全て沙希が払っています。お金が厳しくなると学校行くのを辞めて昼も夜も働きます。永田に光熱費を払ってくれとお願いしますが、払ってくれません。それでも沙希は元気一杯明るく振舞っていますが、次第に二人の関係は崩れていきます。

 

感情や状況を説明する台詞

永田の感情や状況を説明する語り(ナレーションみたいなやつ)が頻繁にあります。

例えば、喫茶店で脚本を書いているときに語りで「脚本を書く時はいつも書き出すまでに時間がかかった」と説明します。その後、説明台詞のままの映像が流れます。同い年の劇団を見にいき感動した時は「同じ年齢だと知り純粋な嫉妬というものを感じた」と語りが続きます。見れば分かります。

永田がどう感じているか、どう思っているかを語りであらわしています。映像を見れば分かるものを語りで説明しているのです。永田の言動や感情を全て説明してしまうので、何かちょっと冷めた気持ちになります。見る側がこういう気持ちなんだなと考えたいのに先に答えを出してしまうのです。この語りがだんだんノイズになってきます。小説には必要ですが、映画には不要です。

 

感想

語りの説明描写が気になりものの、それ以外は面白いです。永田がバイクに乗り同じところをぐるぐる回るシーンは、付き合い始めの楽しい時期から、嫌になってくる倦怠期の恋愛をあらわしていて面白い描写でした。ジーンっとくるようなシーンがたくさんあります。山﨑賢人と松岡茉優の演技は圧巻です。

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