【ネタバレ感想】Netflix『薄氷』鹿が出てくる理由

こんにちは、つけものなすです。

今回は、受刑者を護送中に何者かに襲撃される映画『薄氷』の感想を書きたいと思います。後半は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

 

薄氷

6人の囚人

『薄氷』(原題:Below Zero)は2021年にNetflixで配信が始まったスペイン映画です。規律に厳しい警察官のマーティンは、6人の囚人を護送中に何者かに襲撃されます。囚人の中には国際犯罪組織のボスがいて、襲撃犯は囚人の仲間かと思いきや意外な展開になります。先が読めない展開で面白いです。

極寒の地で警察官のマーティンは、相棒のモンテシノスと囚人を護送する任務に就きます。護送する囚人は全部で6人。その中には国際犯罪組織のボスがいます。血の気が多いモンテシノスは攻撃的な態度で囚人を相手にしますが、規律に厳しいマーティンは注意を促します。マーティンはモンテシノスにタバコをすすめられても勤務中だからと断りルールを守ります。

護送車は大きいトラックのようなもので、運転席と車内は区切られていて、車内には囚人を閉じ込めておく部屋があります。マーティンは運転席に、モンテシノスは車内で囚人を見張り、先頭に車を一台走らせて護送します。

囚人の中には犯罪組織のボスの他に、脱出を図ろうと鍵を開ける器具を持ち込む者がいます。

マーティンは護送車を走らせていると、横暴な運転の車が一台通り過ぎます。すると、霧が発生し先頭を走っている車を見失います。そのまま走り続けていると、路上にまかれているまきびしに引っかかり、タイヤがパンクし急ブレーキをかけます。

モンテシノスが様子を見にいきますが、しばらくしても帰ってきません。心配したマーティンも様子を見に行きますが、何者かに銃で撃たれ倒れているモンテシノスを見つけます。すると、霧の中から銃声が聞こえます。マーティンは負傷するものの、急いで護送車に戻り応援を要請しますが、応答がありません。

本作の監督は『Out of the Dark』(14年)のルイス・キレスです。

警察官のマーティンを演じるのは『その住人たちは』(20年)などに出演しているハビエル・グティエレスです。気の抜けたサイモン・ペッグに似ています。規律に厳しいマーティンが後半どうなるのか見ものです。

 

密閉サスペンススリラー

マーティンは囚人のいる車内に閉じこもり、護送車の車内は鍵がない限り外から開けることはできません。

囚人の一人であるラミスは持ち込んだ器具を使い鍵を開けマーティンを襲いますが、外からガソリンがまかれ、囚人のいる部屋が燃えてしまいます。マーティンは部屋の鍵を開け消化しますが、囚人の一人は焼死してしまいます。犯人は囚人の仲間ではなく、見殺しにしようとしていました。

犯人は護送車の鍵を要求し、囚人たちは外に出るためにマーティンが持っている鍵を奪い取ろうとします。犯人の目的が分からない警察官と囚人。密閉された空間で繰り広げられるサスペンススリラーが始まります。

物語が進むと、犯人と関係性のある囚人が分かるのですが、犯人は殺さずに外へ解放しろと要求します。犯人はその囚人とは仲間ではなく、何かを聞き出そうとします。

犯人の目的とは!?

 

ネタバレ感想

ネタバレ注意
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。

鹿が出てくる理由

本作には、なぜか鹿が印象的に登場します。

鹿が出没する注意を促す標識、ミゲルが見つめる先にいる鹿、護送車を沈めるために着いた先で見る鹿。僕が見た限りだと3場面ありました。なぜ鹿が唐突に登場するのか。これは僕の推測ですが、マーティン・マクドナーが監督した映画『スリー・ビルボード』(17年)に登場する鹿と同じ意味があるのではと思います。

『スリー・ビルボード』は、田舎町に住むミルドレッドの娘が焼死体で発見されます。娘は強姦された上に焼死していました。捜査に進展がないことからミルドレッドは、3つの看板(スリー・ビルボード)を立て、警察に警告をする広告を載せます。

殺伐として物語ですが、本編とは関係ないところで鹿が登場します。ミルドレッドは鹿に向かって「なぜ、いきなり私の前に現れたの?娘の代わりだと言いたい?」と言います。

鹿の角は一年かけて成長し、春頃に生え変わります。このことから、鹿は死と再生を象徴する動物とされています。ギリシャ神話に登場する狩猟・貞潔の女神アルテミスは、鹿の黄金の角を持っています。『もののけ姫』に登場するシシ神は、生と死を司る存在として登場します。つまり、ミルドレッドが見た鹿は、娘の再生を象徴しているのではないかと思います。

本作のミゲルは、強姦の上殺害された娘の居場所を突き止めるため犯行に及びます。『スリー・ビルボード』のミルドレッドと重なります。共に娘の再生を現しています。

 

ダーティ・ハリー

ミゲルは娘の居場所を知っていると思いナノを追い詰めますが、マーティンが止めに入ります。マーティンは如何なる理由でも殺人を犯すことは許しません。

警察のヘリコプターが近づいてくると、ナノはミゲルに唾を吐き「誰が言うか、このクソ野郎」と罵倒します。その様子を見たマーティンは、ミゲルのショットガンをナノに向け、娘の居場所を言わないナノの右手にぶっ放します。法では裁くことができないナノをマーティンの手で裁きます。この姿はまるで『ダーティー・ハリー』(71年)のようでした。

『ダーティー・ハリー』は、クリント・イーストウッド演じるハリー・キャラハン刑事が、連続殺人鬼スコルピオを追う物語です。44マグナムを手にもつ型破りなハリーは、規律など関係なしに捜査を進めます。ハリーは命懸けでスコルピオを逮捕するものの、ミランダ権を無視して自白を強要させたため、直ぐに保釈されてしまいます。

ミランダ権はアメリカの映画やドラマでよく使われる「あなたには黙秘権がある。法廷であなたに不利な証拠として用いられる事がある。(以下省略)」のことです。釈放されたスコルピオは、再び殺人を始めます。ハリーは法で裁くことができなかったスコルピオを撃ち抜きます。自らの手で裁きます。

本作のマーティンは44マグナムの代わりにショットガンを持つハリーに見えました。規律に厳しいマーティンが自らルールを破り、自らの手で裁きます(殺してはいませんが)。

最後の場面は、マーティンは処分を受け警察官を辞職したと思います。何ともやるせない終わり方です。

薄氷

 

まとめ

先が読めないスリリングな展開で面白かったです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

参考文献

Bajocero (2021) – IMDb

https://www.imdb.com/title/tt9845564/

 

鹿の姿をしたアマテラスの使いーアメノカク – 國學院大學

https://www.kokugakuin.ac.jp/article/150973