こんにちは、つけものなすです。
今回は、インドの貧しい家庭で暮らす主人公がパラサイトのように富裕層に寄生し、起業家へ上り詰めていく叛逆の映画『ザ・ホワイトタイガー』を紹介したいと思います。
ザ・ホワイトタイガー
光と闇
Netflixで配信中の映画『ザ・ホワイトタイガー』(21年)は、インドの貧しい主人公があらゆる手を使って起業家へ上り詰める物語です。原題は「The White Tiger」。原作はアラヴィンド・アディガが2008年に発表した『グローバリズム出づる処の殺人者より』です。
インドには「光の国」と「闇の国」という側面があります。
インドのラクスマンガール(Laxmangarh)で生まれ育った主人公のバルラム。成績優秀なバルラムは奨学金を貰い、インドの首都デリーの学校へ通うつもりでしたが、父親はコウノトリと呼ばれる地主にお金を払うことができず、貧しいところで育ったバルラムは働かざるを得ない状況でした。父親は結核を患い亡くなってしまい、バルラムはどん底にいました。
この状況から脱したいバルラムは、コウノトリの次男アショクに仕えるため自動車の免許を取り、専属の運転手として雇ってもらいます。
主人公のバルラムを演じるのは、Adarsh Gouravです。コウノトリ一家が暮らしているのは「光の国」で、バルラムが暮らしているのは「闇の国」です。貧富の差を表しています。
インドにはヴァルナ、ジャーティと呼ばれる社会的身分制度(カースト)があります。ヴァルナには4つの階級があり、ジャーティはさらに職業で細分化したものをいいます。昔は1000以上のカーストがありました。カーストによって食事相手や結婚相手などが決まってきます。
インドの主人は使用人の家族を調べ、主人に被害が被る場合は使用人だけでなく、使用人の家族も殺されます。使用人は家族を人質に取られているようなものなので、裏切ることができません。
バルラムの祖母は結婚相手を勝手に探し、無理矢理に結婚させようとします。カーストから脱したくても、八方塞がりです。
パラサイト
バルラムは運転手として雇われますが、既に何十年も前から専属の運転手をしているペルサードがいるため雑用を任されます。バルラムは専属の運転手の地位を奪い取るため、ペルサードの弱みを探します。
昼食を食べずに外へ出かけるペルサードを不審に思ったバルラムは、後を追いかけます。ペルサードが向かった先は、イスラム教の礼拝堂モスクでした。ペルサードが昼食を食べなかった理由は、イスラム教徒が断食をおこなう月(ラムダン)だからでした。そのことを知ったバルラムは、コウノトリがイスラム教徒を嫌っていることを思い出し、ペルサードを追い出します。
汚い手を使って上り詰めようとする場面は、『パラサイト 半地下の家族』(19年)みたいで面白いです。
コウノトリ
コウノトリの長男マングースは、バルラムのことを良く思っていません。バルラムはコウノトリ一家と距離を縮めようとしますが、マングースは平気で暴力を振るい邪魔をしてきます。マングースとは違ってアショクとその妻ピンキーは優しく接していますが、デリカシーのないことを言ったり、バルラムが運転している車の中で抱き合ったりとバルラムを見下しています。
バルラムに強く当たるマングースを演じるのは、ミュージカル映画『ガリーボーイ』(19年)などに出演しているヴィジャイ・マウリヤです。
アショクの妻ピンキーを演じるのは、Netflix『ヒーローキッズ』(20年)などに出演しているプリヤンカー・チョープラーです。インスタのフォロワー数は5000万人以上とインドを代表する人気女優です。『ヒーローキッズ』では、ミス・グラナダを演じています。最後まで気付きませんでした(笑)。
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コウノトリ一家は仕事のないバルラムを雇って良い人そうに見えますが、首都デリーで仕事をするときは、自分たちは高級ホテルに泊まり、運転手のバルラムは地下の駐車場の汚い所で生活しています。しかも超低賃金です。バルラムは片足を失った人が寄付を募っていたので小銭をあげようとすると、マングースに勝手な真似はするなと激怒されます。コウノトリ一家は富裕層なのにドケチです。
コウノトリ一家は、バルラムを奴隷のように扱っています。都合のいい時だけニコニコしているところは見ていて腹が立ちます。
ホワイトタイガー
ホワイトタイガーはインドに生息するベンガルトラの白変種で、全世界で250頭しかいません(日本では30頭くらい)。インドではホワイトタイガーのようにならなければ、貧しいカーストから脱出することができません。成功するのはホワイトタイガーの数と同じで、極一部の限られた人間です。
物語の後半でバルラムは、一世代に一頭しか現れないホワイトタイガーを見てある決断をします。
ネタバレ感想
ここから先は物語の結末にも触れているのでネタバレ注意です。
車中で寝ているバルラムの起こし方や、バルラムを置いていこうとしたり、バルラムの居場所の狭さが伝わります。ピンキーがひき逃げをすると、全責任をバルラムに押し付けます。バルラムには逃げる選択肢もなく、受け入れざるを得ない状況がこの国の残酷さを現しています。
夜逃げするピンキーを空港に送り、謝礼として貰える額は給料の3ヶ月分にも届きません。搾取されるばかりです。
本作は、人を殺さなければ上に這い上がれない「闇の国」を描いた叛逆の物語です。
まとめ
『パラサイト』のインド版といっても過言ではないくらい面白かったです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
参考文献
1ヶ月断食「ラマダン」を徹底解説。ルールや断食後の食事法とは – macaroni
ASEAN-JAPAN CENTRE ムスリム観光客受け入れのために
https://www.asean.or.jp/muslim/index.html